日本独自の評価基準〜DCの信頼性を見極めよ

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掲載日 2012/10/16

ザ・キーマンインタビュー ファシリティ スタンダードで信頼性を見極めよ

クラウドコンピューティングの利用が広まる中、ユーザ企業はデータセンタ事業者に対して、より高い信頼性を求めるようになっている。そして、それに対して事業者側ではどのような対応や環境整備に取り組むべきなのか。データセンタ事業者などが参加する業界団体である「日本データセンター協会」の事務局を務める福田次郎氏にお話を伺った。

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福田 次郎 氏

事務局
(三菱総合研究所 公共ソリューション本部 第4グループ 主任研究員)
福田 次郎 氏

ファシリティの本当の信頼性を見極めるには日本独自の評価基準が必要

Question

日本データセンター協会ではデータセンタ事業者が参加する団体として、データセンタのあるべき姿を追求しているということですが、もともとはどのような背景で設立されたのでしょうか?

Answer

日本データセンター協会:福田 次郎 氏

当協会は2008年12月に、産学官が協力する団体として設立されました。そのきっかけの1つとなったのは、同年7月の東京都の環境確保条例改正で導入された「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」です。ご存知のとおり、この制度導入により、オフィスビルなどに対して8%の削減義務が課せられることになり、データセンタもその対象に含まれていました。しかし、データセンタの場合には、設備の増減などにおいて特殊な事情もありますし、そもそも顧客企業の機器を集約して効率的に稼働させるという意味で、省エネルギーやCO2排出量削減にも貢献するものです。最初は、そういった点を東京都などに理解していただいたり、一般の方々に認識していただくために設立したということです。

 また、もう1つの大きな背景として、当時はデータセンタのファシリティにおける日本独自の基準がなかったということがあります。データセンタ構築の際に一定の信頼性を実現するためのファシリティ内容を定めたグローバルな基準としては、米国Uptime Instituteの「Uptime Tier」が既によく知られていましたが、これをそのまま当てはめようとしても、当然ながら、日本の実情などは考慮されていません。

 例えば、Tierでは冷却のための通風路を確保するために、床下高さなども厳密に定められていましたが、日本では高度な空調・冷却手法を取り入れるケースも多いですし、そもそも床下高さが信頼性に直接結びつくわけではないでしょう。そのほかにも、電源インフラに対する基本的な考え方としては、自家発電設備がメインで、商用電源はそのバックアップだと位置付けていますが、ご存知のとおり、日本では逆のとらえ方が主流です。これは決してイメージ的なものではなく、日本の商用電源は従来はもちろん、震災後の現在においても高い信頼性を有していますから、妥当な認識だと言えるでしょう。もちろん、その一方で、日本においては耐震に対する規定が必要だという認識は当時からありましたから、そうした課題も考慮に加えて、日本独自の評価基準を定めるべきだと考えたわけです。

図1 JDCC ファシリティ スタンダードの構成
図1 JDCC ファシリティ スタンダードの構成
出典:日本データセンター協会、2010年10月

Question

現在の主な活動は、そうしたデータセンタ基準の策定や啓蒙ということになりますでしょうか?

Answer

そうですね。日本データセンター協会では、政策・技術検討の活動テーマごとにワークグループ(WG)を設けていますが、東京都環境確保条例への提言などは「環境政策WG」、国内データセンタ基準の策定は「ファシリティ・スタンダードWG」で活動しています。そのほかには「環境基準(PUE)WG」「セキュリティWG」「人材マネジメントWG」があり、また、最近では海外のデータセンタへの対抗、電力問題、あるいはデータセンタ間のネットワークをどうつなぐかということも課題となっていますから、「国際競争力WG」「電力問題WG」「ネットワークWG」も設けています。


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クラウド導入拡大で、データセンタに求められる要件はどのように変化するのか

Question

クラウドコンピューティングの利用が広まる中、ユーザ企業はデータセンタ事業者に対して、どのような要件を求めるようになっているのでしょうか?

Answer

日本データセンター協会:福田 次郎 氏

「コスト」という要素も大きいでしょうが、それに加えて、やはり「高品質・高性能」が求められていると思います。では、具体的にどういった面での性能が求められているかというと、レスポンスの速さ、扱えるデータの規模の大きさ、計算能力の高さなどでしょう。もちろん、その一方で、従来から基本的な要件として求められていた「信頼性」についても軽視されているわけではありません。東日本大震災の経験もありましたし、様々な形態のクラウド利用が広まることで、データセンタにはこれまで以上に高い信頼性が必要だと考えているユーザ企業も少なくないでしょう。いずれにせよ、クラウドコンピューティングの導入拡大にともない、データセンタに求められる要件も多様化・高度化していると言えるのではないでしょうか。

Question

データセンタ事業者はそうしたユーザニーズに応えるべく、どのような部分への投資や取り組みを行う必要に迫られているのでしょうか?

Answer

先ほど、「高品質・高性能」という要件を挙げましたが、それに応えるためには、データセンタ側ではこれまでにもまして多くのコンピューティングパワーを確保しておく必要があります。そのため、データセンタ事業者では機器の密度を高めるとともに電力設備を増強したり、面積自体を広げるなど、様々なかたちでの規模拡大に取り組んでいる状況です。そして、なおかつ「低コスト」で提供しなければならないとすれば、やはり新しい形態のデータセンタが必要になるというわけです。

 これは特にエネルギーの部分で、データセンタのコスト内訳においては、電力コストがかなり大部分を占めています。コンピューティングパワーが上がって発熱が増えれば、それに対処するための電力消費も高くなっていきますから、コストを抑えるためには、より効率的な空調・冷却というものが不可欠と言えるでしょう。そのため、データセンタを郊外に建設し、高度な外気空調システムを取り入れるといった、新しいかたちでの投資が活発化しつつあります。

 また、「信頼性」に関しては、ユーザ企業の業務継続という観点で、例えば自然災害などが生じたとしても継続して利用できなければならないということは、事業者の側でも以前から認識されており、様々な対策がとられてきました。実際、東日本大震災の際にも、少なくとも日本データセンター協会の会員として参加いただいているデータセンタにおいては、ほとんど被害は生じなかったという報告を得ています。もちろん、今後も様々な周辺状況を鑑みつつ、データセンタのレベルを高めていくことは必要ですし、当協会が制定し、随時見直しを行っている「データセンター ファシリティ スタンダード」もその一助になればと考えています。


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クラウドサービスを利用する際の品質確認にも活用できる

Question

「データセンター ファシリティ スタンダード」の概要をお教えいただけますでしょうか?

Answer

日本データセンター協会:福田 次郎 氏

米国Uptime InstituteのUptime Tierが求める基準の中で、日本では過剰と判断される部分を修正するとともに、日本独自の要素を追加したものです。先ほど紹介した点に加えて、データセンタで使用されるUPS(無停電電源装置)や空調機といった主要機器の信頼性も、データセンタのファシリティに対する信頼性を左右する大きな要素となりますので、「日本製品の高い信頼性」(故障率の低さ)なども考慮に加えています。その上で、Uptime Tierの「Tier I〜IV」に呼応するかたちで、4レベルのティアを定めていますが、日本データセンター協会の会員の中で、顧客に対してデータセンタサービスを提供している企業に関しては、ほとんどが「ティア 4」または「ティア 3」に準拠するかたちになっています。

 制定の際には、Uptime Tierだけではなく、米国電気通信工業会(Telecommunications Industry Association)のデータセンタ用設計規格「TIA-942」、国内の金融情報システムセンター(FISC)が推奨している「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準」、社団法人・電子情報技術産業協会(JEITA)の「情報システムの設備環境基準(IT-1001B)」なども参考にし、実際にデータセンタ事業者が利用しやすいかたちで分類・整理を行いました。また、東日本大震災後には、その経験を踏まえ、「今後データセンタが考慮すべき教訓としては、想定外の事態をいかに排除しておくかが重要」という観点で、商用電源の長時間停電、非常用発電機の燃料調達などといった要素も改めて含めた上で見直しを実施しています。

図2 Uptime Tier(2008)との比較、及び、各ティアレベルが想定しているデータセンタのサービスレベル
図2 Uptime Tier(2008)との比較、及び、各ティアレベルが想定しているデータセンタのサービスレベル
出典:日本データセンター協会、2010年10月

Question

データセンタを利用する側の企業では、この「データセンター ファシリティ スタンダード」をどのようにとらえるべきなのでしょうか?

Answer

そもそも、データセンタのファシリティに関しては、特に認定を受ける必要などがあるわけではないですから、ユーザの立場から見ると、どの事業者を選べば、ファシリティ面でも安心かということは分かりにくいかと思います。当協会でも「データセンター ファシリティ スタンダード」への準拠を審査したり、認定を行っているわけではなく、あくまでも、事業者がデータセンタを新設する際に参考にして、目標とするティアの仕様に沿ったかたちで作り上げていくということになっています。ただ1つの指標として、企業がデータセンタの事業者選定を行う際、あるいは自治体などの調達において、「JDCCのティア4準拠を要望」といったかたちで活用いただくケースも増えているようです。更に、今後はクラウドサービスを利用する際にも、そのサービス事業者が所有、あるいはサービスの基盤として利用しているデータセンタの設備品質を確認しておくといった用途にも活用していただけるのではないかと思っています。


●ありがとうございました。


取材協力

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データセンタ事業者と主要データセンタ関連事業者が参加する組織を形成し、各事業者が水平的垂直的に協力して課題解決に取り組むことによって、IT立国の基盤を支えるデータセンタのあるべき姿を追求し、「日本のデータセンタが、コスト面、性能面、安全面、信頼面で国際競争力を備えたものへと進化する」ことを目指している。


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