Ultrabook導入は有効なIT投資となりうるか

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掲載日 2012/09/28

ザ・キーマンインタビュー Ultrabook導入は有効なIT投資となりうるか

現時点では、パーソナルユーザを中心に注目を集めているUltrabookだが、今後は企業での活用も広がっていくことが見込まれる。しかし、果たしてUltrabookは、現在のビジネス向けPC市場の需要に合っているのか、導入企業にどのようなメリットをもたらすのか。IDC Japan株式会社のPC・携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーである片山雅弘氏にお話を伺った。

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片山 雅弘 氏

IDC Japan株式会社
PC、携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャー
片山 雅弘 氏

ビジネス向けPCの買い替え需要は今年から来年がピーク

Question

現在、企業のクライアントPCに対する投資マインドはどのような状態にあると考えられますか?

Answer

IDC Japan株式会社:片山 雅弘 氏

日本のビジネス向けPC市場においては、米国、欧州などと同じく、国全体としてIT環境が成熟しており、既に十分な数のクライアントPCが多くの企業に導入されていますから、その買い替え周期に沿った動きというものが基本となります。買い替え周期はデスクトップPCで4.6年、ポータブルPCで4.1年が平均値となっていますから、2005年に続き、本来は2009年あたりに需要のピークを迎えるはずだったのですが、ご存知のとおり、2008年のリーマンショックにより、2009年にはすべての設備投資が控えられる傾向となり、1年ほど先送りされてしまいました。

 では、次のピークは2014年かというと、そう単純な話でもありません。日本では東日本大震災の影響も考慮する必要があり、既に復興による特需、あるいは、デスクトップPCからバッテリ駆動が可能なポータブルPCへの移行が早まることによる需要増も生じています。そのほかにも、2014年には消費税が8%に引き上げられ、2015年には10%になること、あるいはWindows 8のリリースによる影響なども考慮すべきでしょう。そのため、2012年のビジネス向けPCの出荷台数は前年比9.9%増の823万台に到達すると予測しており、更に来年にかけて需要のピークが到来すると見ています。

図1 国内PCビジネス市場の出荷台数実績と予測(2004年〜2016年)
図1 国内PCビジネス市場の出荷台数実績と予測(2004年〜2016年)
出典:IDC Japan(2012年9月)

Question

数年前くらいから、企業でPCを買い換えたり、新たに導入する際に、省スペース性や社内での可搬性、あるいは省電力といった点を重視して、デスクトップPCの代わりにポータブルPCを選ぶというケースも増えてきていた印象がありますが、実際にはどのような内訳になっているのでしょうか?

Answer

実際の出荷台数を見ると、家庭向けPC市場では既に70%程度がポータブルPCですが、ビジネス向けPC市場ではまだ半々という状態です。2011年のポータブルPCの比率は53.6%で、2012年第2四半期(4〜6月)の出荷台数(速報)でも、やはりデスクトップPCが46%、ポータブルPCが54%となっています。デスクトップPCとポータブルPCの比率が逆転したのが2008年ですから、ペースとしてはゆっくりであるものの、やはりデスクトップPCからポータブルPCへという動きは確実に進んでおり、前述のように、震災の影響もあって、それが若干早まったという印象もあります。


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タブレットの登場がモビリティの重要性を認識させた

Question

そうした中で、最近では新たな選択肢としてタブレット製品などを検討するケースも出てきているかと思いますが、企業がクライアント端末を導入する際の意識や選び方にも変化が生じていると言えるのでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:片山 雅弘 氏

たしかにタブレットへの注目度も高まっていますが、一般的な導入スタイルとしては、クライアントPCを置き換えるのではなく併用する、あるいは情報閲覧が主体となる特殊な用途で導入するというケースがほとんどではないでしょうか。少なくとも現状としては、PCで行っている作業をそのままタブレットへ移行させることは難しいわけですから。ただ、タブレットの登場などもあって、企業の「モビリティ」に対する意識が変わってきたとも言えるでしょう。つまり、“1人ひとりの生産性”を高めるためには、やはりPCのモビリティ向上が非常に有効ではないかということです。

 どこにいても仕事ができる環境を整備しておくことは、BCP対策という点でも注目が高まっていますが、それだけではなく、優秀な人材を確保したり、ビジネススピードの向上による企業競争力の強化ももたらすわけですし、更に、実際に生産性が向上しているという調査結果も出ています。これは「PCによる生産性の向上」に関して実施したアンケートで、PCを持ち歩く方のうち、4割近くが「生産性が50%以上向上」と回答しています。具体的には、「何らかの作業を行うために出先から会社に戻る必要がなければ、時間の節約になる」「いつでもメールに返信できるということは、顧客満足度の向上において非常に効果的」という意見が多かったようです。

図2 PCの生産性向上に関するアンケート結果
図2 PCの生産性向上に関するアンケート結果
出典:IDC Japan(2012年9月)

Question

1人ひとりの生産性を高めるためにはモビリティが有効ということですが、それは単にデスクトップPCをポータブルPCへ置き換えればいいという意味ではありませんよね?

Answer

もちろん、社内システムをモバイルアクセスに対応させたり、クラウドサービスなどを本格的に業務に導入するといった環境も整備も必要ですし、モチベーションを損ねることなく、PCの持ち運びによる生産性向上を実現するには、薄くて軽い、持ち運びやすさを備えたポータブルPCの導入が不可欠でしょう。

 また、移動中に壊れてしまうようなものでは、例えば予定していたプレゼンテーションができずに商機を逃したり、商談で顧客の心証を損ねてしまうなど、逆に大きな機会損失につながりかねません。そこまで行かなくても、起動や復帰に時間がかかってしまうというだけでも、機会損失は生じますし、何よりユーザの大きなストレスになります。本当に生産性を高めようとするなら、そうした見えない部分の使い勝手も含めた“持ち運びやすさ”“使い勝手のよさ”を確保する必要があるでしょう。

Question

そうした1人ひとりの生産性向上といったことは、従来は個々の社員に任せられていたような印象もありますが、やはり経営戦略的な取り組みが求められているということでしょうか?

Answer

経営者の考え方は様々でしょうが、ITを投資と見るのか、コストと見るのかで、まったく違うということはたしかでしょう。ITで発生するコストをいかに圧縮するかという視点ではなく、投資として考えている方々は、“企業をよくしていくためにITで何ができるのか”という強い意識を持っており、それが利益を生み出すということにもつながっていると思います。厳しいビジネス状況の中で、日本の企業が活気を取り戻していくためには、そうした「コスト」から「投資」へのマインドチェンジが不可欠と言えますし、実際に少しずつそうした流れが生じつつあると感じています。

 実は以前、ある条件で絞り込んだ59社の会社役員に対して、「あなたの会社では、企業向けUltrabookが発売された場合、導入を進めることを考えていますか」という質問を実施したことがあります。すると驚いたことに7割近くの方が導入に対して肯定的という結果でした。この時に絞り込んだ条件というのが、まさしくITを投資と考えている企業です。


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企業利用において、Ultrabookは最適な選択肢と言えるか

Question

ビジネス向けPC市場でのUltrabookの販売動向に関しては、どのように見られていますか?

Answer

IDC Japan株式会社:片山 雅弘 氏

まだこれからという段階だということはたしかでしょうね。これまではUltrabookはコンシューマ向けが主体になると考え、そのニーズに沿った製品をリリースしているメーカーが少なくなかったようですし、導入を検討している企業としても、法人向け仕様のUltrabookがある程度出揃うのを待っていたという状態ではないでしょうか。最近になって、法人向けモデルもリリースされ始めましたし、今後は徐々に浸透していくのではないかと見込んでいます。

 少なくとも、先ほどのようなモビリティの実現を考えたときには、Ultrabookは非常に有効な選択肢になるということは間違いないでしょう。グローバル市場では、Ultrabookの普及を広げていくためには、まず薄型軽量のニーズを育てていく必要がありますが、日本ではこれまでも“モバイルノート”というカテゴリが成熟していましたし、活用の土壌が既に整っていると言えます。そうした状況のもとで、Ultrabookというカテゴリはごく自然に受け入れられるでしょうし、特にPCを持ち運ぶことをより推進しようという企業においては、デファクトスタンダードになる可能性が高いと言ってもよいのではないでしょうか。


●ありがとうございました。


取材協力

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IT専門の調査会社として、1975年に設立以来、国内・外の情報技術・通信産業をはじめ、金融機関、政府機関等など、市場データ、市況分析とそれにもとづいたアドバイスを提供。グローバルに展開するビジネスを品質の高いデータで支援することに取り組んでいる。


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