日本再生戦略におけるビッグデータの役割

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掲載日 2012/09/26

ザ・キーマンインタビュー 日本再生戦略におけるビッグデータの役割とは

2012年7月31日に「日本再生戦略」が閣議決定された。これは様々な分野で必要な施策を示したものだが、科学技術イノベーション・情報通信戦略では「ビッグデータの利活用を行うための環境整備」も重要施策に含まれている。どのような経緯でビッグデータ利活用が浮上してきたのか。また、具体的にはどのような取組が行われていくことになるのか。総務省の情報通信国際戦略局 情報通信政策課 主査である鈴木生雄氏にお話を伺った。

総務省 企業サイトへ

鈴木 生雄 氏


情報通信国際戦略局
情報通信政策課 主査 鈴木 生雄 氏

「日本再生戦略」で重点施策の1つに挙げられたビッグデータ

Question

「日本再生戦略」では、ビッグデータの利活用にもスポットが当てられていますが、具体的にはどのような取組が行われていくことになるのでしょうか?

Answer

総務省:鈴木 生雄 氏

企業が新しい産業を創出しやすい環境を作るという観点から、例えば「官民に埋没するデータのオープン化」「M2M通信をはじめとする技術の検討・確立」、更に「データサイエンティストの育成」といった人材面の強化にも取り組んでいく予定です。最初のデータのオープン化に関しては、官民がこれまで蓄積してきた各種データをより扱いやすいかたちで公開し、社会全体で横断的に利用できるようにすべく、APIやデータフォーマットの共通化を図っていこうというものです。

 また、既存のデータだけではなく、今後はセンサなどで生成されるデータの利用も本格化していくと見込まれています。そうしたM2M通信においては大量データの処理が行われることになるでしょうから、現在の数千倍以上のアクセスに達した場合でも支障なく通信を制御可能な技術を確立していくことが必要だと考えています。

 最後の人材育成に関しては、総務省の競争的資金制度である「戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)」の活用を推進するほか、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)の新世代通信網テストベッド「JGN-X」(JGN eXtreme)を用いてビッグデータ解析基盤を構築し、それを若手研究者やベンチャー企業などに開放するといった施策を行うことで、高度な解析技術をベースにデータ活用を実践できる専門家を育てようというものです。

Question

既にこうした方針に合わせて、総務省所管予算の概算要求なども出されているということですよね?

Answer

総務省のWebサイトでも公開していますが、平成25年度の総務省所管予算の概算要求では、「日本再生に向けたICT総合戦略の推進」全体で1312.1億円を計上し、その中で新たに「ビッグデータ・オープンデータによる新たな市場の創出」(89.3億円)という事項を設けしています。その内訳としては、「ビッグデータの利活用の推進」が79.4億円、「オープンデータ流通環境の構築推進」が9.9億円となっており、「ビッグデータの利活用の推進」の大部分を占める「ビッグデータ時代に対応するネットワーク基盤技術の確立等」(60.6億円)に関しては、重点要求のうちの1施策にも含めています。


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ICT総合戦略において、ビッグデータ活用はどのような位置づけにあるのか

Question

情報通信審議会からの答申である「2020年頃に向けたICT総合戦略(Active Japan ICT 戦略)」の概要についてお聞かせ下さい。

Answer

総務省:鈴木 生雄 氏

Active Japan ICT 戦略は、ICTによって個人・社会が活性化され、何層倍もの力を発揮する日本を実現し、日本を元気にする戦略となっています。

 この戦略は5つの個別戦略で成り立っており、具体的には「すべての世代の人々がアクティブに社会参画できるICT利活用環境の整備」を行うアクティブライフ戦略、「数十兆円規模のデータ利活用市場の創出」を行うアクティブデータ戦略、「誰もがリッチコンテンツを製作・利活用できるグローバルプラットフォームの実現」を行うリッチコンテンツ戦略、「堅牢・高性能な重層的ブロードバンドネットワークの展開」を行うアクティブコミュニケーション戦略、「世界最高水準のサイバーセキュリティの実現」を行う安全・安心/高信頼ICT戦略で構成されています。

 そして、ビッグデータに関する施策はその中の「アクティブデータ戦略」に含まれており、ビッグデータを利活用してわが国の社会的課題の解決につなげるとともに、数十兆円のデータ利活用市場が創出される環境の構築を目指すとされております。総務省としては本答申を踏まえて、Active Japan ICT の実現に向けた取組を進めていく予定です。

図1 Active Japan ICT 実現に向けて 〜新たなICT総合戦略の着実な推進〜
図1 Active Japan ICT実現に向けて 〜新たなICT総合戦略の着実な推進〜
出典:「知識情報社会の実現に向けた情報通信政策の在り方」(平成23年2月10日付け諮問第17号)に関する情報通信審議会からの答申」総務省(2012年7月)

Question

情報通信審議会の作業部会でありActive Japan ICT 戦略の検討を行った基本戦略ボードの下には「ビッグデータの活用に関するアドホックグループ」も設置されましたが、その理由はやはり、戦略案を検討する中でボード構成員である識者の方々のビッグデータに対する期待がとりわけ高かったためということでしょうか?

Answer

そうですね。基本戦略ボードの親会である新事業創出戦略委員会と研究開発戦略委員会の両委員会での「ビッグデータが喫緊の最重要課題である」という議論が背景にあり、それらを踏まえつつ、基本戦略ボードの構成員の方から具体的な提案をいただき、アドホックグループを設置する運びとなりました。

 審議会における今回の検討は一昨年から開始されたものですが、ビッグデータという言葉自体はそれ以前から少しずつ取り沙汰されていたかと思います。当然ながら、構成員の方々もそうした話題には詳しい方ばかりですので、最初から念頭には置かれていたと思います。今回の議論の中でビッグデータを明確に取り上げるべきだという意見が浮上し、本格的に議論されるようになったのは1年前くらいのことです。なお、アドホックグループでの検討結果は前述の「アクティブデータ戦略」の内容として、Active Japan ICT 戦略に組み込まれています。

Question

同アドホックグループではどのような検討が行われたのでしょうか?

Answer

2012年2月以降、6回の会合を開催し、ビッグデータを取り巻くICTの進展状況、ビッグデータの活用事例、ビッグデータの活用にあたっての技術的・制度的課題、ビッグデータの活用に関する将来像などについて、有識者の方々にご参集いただき、検討を行ってきました。これらの検討結果は「ビッグデータの活用の在り方について」(平成24年5月17日)として取りまとめられ、総務省のWebサイトでも公開しています。総務省では、その中で示されている「ビッグデータの活用を促進するためのICT政策の基本的な方向性(7項目)」を踏まえつつ、取組を進めていく予定です。


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既に着手している企業では、国に対してどのような要望を持っているのか

Question

同アドホックグループでは国内における取組事例に関するヒアリングも実施されましたが、その概要をお教えいただけますでしょうか?

Answer

総務省:鈴木 生雄 氏

ビッグデータの活用に関する取組について、通信キャリアやITベンダ、ユーザ企業(自動車・保険)などの関係者(計11者)に対してヒアリングを行いました。内容としては、ビッグデータを活用したサービス概要やサービス提供時に課題になったこと、今後の展開が中心でした。様々な業界やレイヤーでのビッグデータ活用の動向を把握できたこと、それから、今後もそうした活動を活発化させていくための課題を導き出せたという意味で非常に有意義だったと考えています。

図2 国内における取組事例に関するヒアリング
図2 国内における取組事例に関するヒアリング
出典:「「知識情報社会の実現に向けた情報通信政策の在り方」(平成23年2月10日付け諮問第17号)に関する情報通信審議会からの答申」総務省(2012年7月)

Question

今回のヒアリングも含めて、ビッグデータに既に取り組んでいる企業、あるいは今後取り組んでいこうという企業から、(法整備や情報公開など)国や関係官庁への要望が寄せられることも少なくないかと思いますが、代表的な要望をいくつかお教えいただけますでしょうか?

Answer

ヒアリングなどを通じて分かったのは、やはり、多くの企業が「インフラ整備」と「産官学の枠を超えた検討の場の組成」を期待しているということですね。インフラ整備については、情報量が継続的に増加することが予想される中、それに対応できるネットワーク・コンピューティング基盤を整備すべきだというものです。こうした通信系のインフラ整備は公共性が高いため、国が主導的に取り組むべき領域だと多くの方がとらえており、総務省では今後、膨大な情報がインターネットなどの通信網に流れ込んだとしても安定的に運用できる基盤技術の開発などを推進していく予定です。

 また、検討の場については、ビッグデータの利活用を進めていくにあたっては、異業種や産官学の連携が必要だという考えにもとづくものかと思います。活用可能なデータや成功事例などの共有、活用を阻みうる規則・制度などの課題の抽出、社会受容性やインセンティブの情勢、関係機関への働きかけなどの活動を、共同で推進する場を構築してほしいということです。こうした動きは既に総務省と経済産業省がオブザーバとして活動を支援しているジャパン・クラウド・コンソーシアムの、M2M・ビッグデータWG(ワーキング・グループ)で始まっています。総務省では同WG等との連携を通じて、産業界や学界と歩調を合わせながら、取組を進めていく予定です。


●ありがとうございました。


取材協力

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