ファシリティとの連携による省電力化の方策

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掲載日 2012/08/09

ザ・キーマンインタビュー ファシリティとの連携による省電力化の道

これまでITの省電力化は、主に機器そのものを対象に進められてきた。しかしこのアプローチだけでは限界があり、今後は電源や空調といったファシリティとの連携も含めて、トータルに省電力化を推進していく必要があるという。そのための取り組みの1つとして、高電圧直流給電対応のIT機器を製品化したNECのキーマンに話をお伺いした。

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谷長 薫(左)、鈴木 陸文氏(中央)、中井 康博氏(右)

プラットフォームマーケティング戦略本部 主任 谷長 薫氏(左)
プラットフォームマーケティング戦略本部 マネージャー 鈴木 陸文氏(中央)
ITハードウェア事業本部 システム製品技術グループ 技術シニアエキスパート 中井 康博氏(右)

電力効率の高さが直流給電方式の最大のメリット

Question

貴社は、交流給電対応のIT機器はもちろんですが、直流-48V、直流12V、そして昨年からはNTTグループが推進している約380Vの高電圧直流(HVDC)給電に対応したIT機器も提供しておられます。直流給電に対してどのような認識を持っているかを、省電力の観点からお聞かせ下さい。

Answer

日本電気株式会社:谷長 薫氏

【谷長】データセンタやサーバルームに導入されている一般的な交流給電の場合は、商用電源からサーバやストレージといったIT機器までの間に何段階かの電力変換が行われています。変換のたびに電力の一部は熱となって失われていきますので、電力効率の面だけで言えば、商用電源からIT機器や更にその先のマザーボードまで変換レスで電力が供給されるのが一番望ましい。とは言うものの、マザーボードには安定した電圧で電力を供給しなくてはならないので、何ステップかの電力変換を行って電圧を安定させる今の交流給電方式がスタンダードになっていました。

変換ロスを少なくするための1つの解が、通信キャリア系のデータセンタなどで利用されている直流-48Vの給電方式です。この方式に対応するため、弊社では直流-48Vの電源ユニットを実装したIT機器をラインナップしています。それに加え、IT機器の設置自由度を高めるとともに、電源ケーブルの敷設コストを削減できる給電方式であるHVDC給電に対応した電源ユニットを開発し、それを実装したブレードサーバとSAN対応ストレージを製品化しました。電源ユニットに関しては、直流-48Vのものよりも変換効率を上げることに取り組んでいます。

【鈴木】省電力化の観点から、様々な選択肢をラインナップとして用意するのが我々の使命です。そのため、早い段階からラインナップ拡充に積極的に取り組んでいます。

Question

HVDC給電はどのようなデータセンタやサーバルームに向いているのでしょうか?

Answer

日本電気株式会社:鈴木 陸文氏

【鈴木】新たに建設されるデータセンタがターゲットになることは間違いないでしょう。既設のデータセンタに導入するには既存の電源設備だけでなく様々な付帯設備も更新する必要があるからです。もう1つは、規模の大きさを追求するデータセンタではないでしょうか。

【中井】広い範囲に電力を配るには高電圧の方が配電損失が少ない。規模が大きくなればなるほど約380Vという高電圧のメリットが出てくるでしょう。

【谷長】逆に、規模が大きくないサーバルームなどにはあまり向いていないでしょう。対応IT機器の購入費用なども含めて考えると、現時点では投資対効果がそれほど見込めないからです。

Question

直流給電方式の主流は直流-48VからHVDCへ移行していくのでしょうか?

Answer

【中井】移行すると言うよりは、普及が進んでいくと言った方が正しいでしょう。選択肢が広がってユーザの採用が進み、その結果として直流-48VからHVDCへ移行していくこともあるでしょう。

様々な選択肢を用意するのが我々の使命ですので、比較的幅広い用途に適用できるHVDC対応機器として、まずブレードサーバとミッドレンジのSAN対応ストレージを用意しました。IT機器から電源を分離し、複数のIT機器で電源を共有することによって電力効率を向上させる共有電源ユニットのHVDC対応版も開発し、実証実験を行っています。

Question

HVDCが普及していくと、直流-48Vの給電方式は使われなくなるのでしょうか?

Answer

【中井】通信キャリア系のそれほど規模が大きくない交換局などでは今後も利用されていくでしょう。NTTが前身の時代を含めて長年にわたって直流-48Vの給電方式を採用してきたのにはそれなりの理由があります。その理由の1つは、停電や瞬時電圧低下対策のために備えているバックアップ電源用の鉛蓄電池の電圧との関係です。約380Vまで蓄電池を直列で接続すると内部抵抗による電力ロスが増えますし、感電した場合の危険なども大きくなりますので、端末基地局などでは高信頼な給電方式としてこれからも使われていくと思います。

図1 給電方式による電力効率の違い
図1 給電方式による電力効率の違い
資料提供:NEC

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ITの省電力化にはファシリティとの連携が不可欠

Question

省電力の観点から見ると、データセンタ/サーバルームの給電方式は必然的に交流から直流へと変わっていくのでしょうか?

Answer

日本電気株式会社:谷長 薫氏

【谷長】誤解していただきたくないのですが、交流給電でも今では変換効率が90%を超える電源ユニットが登場していますし、安全性の高さや技術者の層の厚さ、設備側の対応状況など、交流には交流の良さがあります。その中で省電力を追求していくというアプローチも当然あるので、我々としては交流から直流に対応機器を移行させていくのではなく、製品ラインナップを拡充させる形でそれぞれのニーズにこたえていこうと考えています。

【中井】商用電源から入ってくる数千数万Vの交流電力を低電圧版のCPUやメモリモジュールなどが使用する1V前後の直流電力まで落としていく道筋はひと通りではありません。ベストな電力変換の組み合わせはデータセンタ/サーバルームの規模やシステム構築方針などによっても変わってきます。例えばあるデータセンタの場合は、3相4線の約400V交流で給電しています。この方式なら中性線と各相の線を接続すればIT機器が対応している約200Vの交流電力になるため、約400Vから約200Vへの変圧器が不要になり、また、変換ロスも削減できるからです。

日本電気株式会社:中井 康博氏

【鈴木】弊社はITの省電力化を、(1)機器そのものの省電力化、(2)運用による省電力制御、(3)ファシリティとの連携による省電力化――の3つのアプローチで進めてきました。1つめのアプローチは、高効率電源や低電圧版CPU/メモリモジュールといった省電力パーツの採用などによるIT機器単体での省電力化です。2つめに該当するのは、リモート監視/制御/操作やスケジュール運転、パワーキャッピング(消費電力上限設定)などによるシステムの省電力制御です。

この2つの取り組みは今後も進めていきますが、これらだけではどうしても限界が出てきます。そこで更なる取り組みとして行っているのが、3番目のファシリティとの連携による省電力化です。HVDC給電への対応はこのアプローチにのっとったものですし、動作保証環境温度を40度まで引き上げることによって空調の設定温度を緩和し、空調設備の消費電力を削減する40度環境対応サーバ/ストレージ製品群を開発したのもこの一環です。

図2 NECが志向する省電力化の方向性
図2 NECが志向する省電力化の方向性
資料提供:NEC

Question

これまでは、ITは情報システム部門、ファシリティは総務部門と担当部署が異なっていました。ファシリティとの連携によるITの省電力化を推し進めていくためには、この2つの部署の連携・協力が必要になっていくと思いますが、いかがでしょうか?

Answer

【谷長】お客様とお話ししていても、ITはIT、ファシリティはファシリティと分けて考えていらっしゃるように感じることがしばしばあります。しかし、ファシリティと組み合わせて考えていかなければITの省電力化には限界がありますし、情報システム部門の自発的・積極的な協力がなければ、全社をあげた節電の取り組みもうまく進んでいきません。データセンタ/サーバルームの給電方式の見直しについても、交流と直流のどちらがいいのか、といった議論ではなくて、ITの省電力化、ひいては会社全体の消費電力削減をどのように進めていけばいいかを2つの部署が話し合い、連携・協力していくきっかけになれば、と思っています。


●ありがとうございました。


取材協力

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1899年7月17日設立。ITソリューション、キャリアネットワーク、社会インフラ、パーソナルソリューションを主要事業とし、NECグループビジョン2017として「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」を掲げている。


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