【IT節電のポイント】今なすべきこととは?

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掲載日: 2012/07/26

追い込まれた状況をチャンスに変える!IT節電推進のポイントとは?

東日本大震災後、長らく続く電力危機、法人向け電気料金の値上げなどにより、ITシステムの“電源・電力管理”にいっそう注目が集まっている。ITシステムの電源・電力管理に関する最近の動向とは?ITの省電力化を推進するにあたって、多くの企業が直面している課題とは?各ベンダはユーザ企業を支援すべく、どのような方針のもとで取り組みを行っているのか?今回は、ATENジャパン、シュナイダーエレクトリック、リタールという、UPS(無停電電源装置)や電源制御機器、空調といった関連製品/ソリューションを手がけるベンダの方々に参加いただき、座談会を開催した。



――  企業におけるITシステムの電源・電力管理に対する意識の変化について、ベンダの立場からどのように感じていますか?

【鈴木氏】  震災直後には、まずシステム安定稼働への意識が高まりましたが、最近では恒久的な電気料金の値上げを受けて、直接的なコスト意識が強まっており、より厳密な電源・電力管理を実現するための具体的な導入検討を行っている企業が実際に増えています。リーマンショック以降、IT投資でも稟議を通すことが難しくなっていましたが、この時期を逃すと、もっと大きな打撃を受けることになるという危惧があり、もはや導入はマストだという感覚になっているようです。

【栗田氏】  ようやくIT管理者とファシリティ管理者が一体になって、電源・電力の問題に真剣に取り組み始めたと言えるのではないでしょうか。そういう意識の必要性は以前から語られていましたが、現実には難しく、特にIT管理の立場から見れば、やはりシステムの安定稼働が第一になりますから、節電推進は他部門に任せたいという感覚は必然だったでしょう。しかし、情勢の逼迫がきっかけとなり、ITとファシリティがうまく連携をとりつつ、具体的な手段の導入へ踏み出すという流れになりつつあると思います。

【高村氏】  震災後は問い合わせも多く、Webサイトへの訪問数も急激に増えましたね。クラウドへの興味関心が高まったと言われますが、電源・電力管理も同様の状況です。また、企業の方々の視点や興味対象が変わっているので、同じ提案や製品に対しても反応や認識度が震災前とはまったく違っています。例えば、全体に需要が増えているUPSでも、従来は電力供給が安定しているという前提で、入力電圧や周波数の変動幅が少ない部分での細かな制御が求められましたが、現在では不安定な電力供給に対応可能な性能を備えた製品への関心が高まっています。

――  実際の企業の取り組み状況に関しては、やはり大企業から進んでいるという状況なのでしょうか?

【鈴木氏】  全体的に見れば、やはり投資的な部分で先行しているのは大企業で、その中でも特に金融、通信/サービス事業者、あるいは公共などが最初に取り組んでいるという状況かと思います。ただ、冒頭でも述べたように、中堅・中小も含めた幅広い企業で、具体的に取り組んでおかなければならない、部分的でもかまわないので何らかの節電の仕組みを導入しておきたいという流れにはなっています。

【高村氏】  あとは、規模の大小だけではなく、ITに対するリテラシーの度合いによっても、ずいぶん変わってくると思います。中小企業であっても非常によく認識されていて、具体的に導入を行ってコスト削減を実現しているところもありますし、大手でもまだまだ進んでいないという企業も結構あります。いずれにせよ、現時点ではまだ、本当に初期の段階だという認識です。

【栗田氏】  企業内でのITに対する意識というものは大きいでしょうね。いわば聖域化してしまって、オフィスの節電は極限まで進めているのに、ITは基本的に落とすべきではないから、極力触るべきではないという感覚があるとしたら難しいですから。経営層も100%稼働している状況のみを評価しがちなため、どうしても、IT管理者側は必要以上に安全を確保しようという方向に行かざるをえない。だからこそ、いまのように、社会全体で節電意識が高まり、企業が追い込まれている状況というのは、むしろベストな状態と言えるのかもしれません。


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――  ITシステムの省電力化も必須という状況になっているようですが、実際にその取り組みを進めるためには、具体的にどうすればいいのでしょうか?

【高村氏】  最近では、1つひとつの機器を選定する際に省電力という視点を入れるという方は多いかと思います。ただ、やはり、それに加えて、サーバルーム、あるいはデータセンタの空間全体をどうデザインするかということが鍵になるでしょう。ご存じのとおり、そうした空間において最も電力消費が高いのは冷却するための空調システムです。例えば、サーバ仮想化なども進んでいるでしょうが、それでシステム密度が高くなれば、ラック1本あたりの発熱量は上がったとしても本数は減っているはずですから、部屋全体を冷やす必要はないですし、そもそも部屋自体を可能なかぎり小さくすることを考えたほうがいい。スペースを小さくする、効率的に冷やす、もしくはラック単位で冷やすというやり方が、やはり最も効果的ではないでしょうか。

【栗田氏】  最適解があればいいんですが、やはりケースにもよります。サーバの進化にともない、動作温度の許容範囲も上がっているでしょうから、可能なかぎり空調の設定温度を引き上げる手もあるかと思いますが、そのためには各機器の性能を綿密に把握しておくことが必要でしょうし、様々な企業にスペースを提供しているデータセンタなどでは、かなり昔のサーバ性能を前提とした温度設定が契約条項に含まれているかもしれないという点にも注意が必要です。一方で、昨年などは電力使用抑制の要請が急に出される可能性もあったわけですが、その際には、いくつかのレベルに分けて“止められるサーバ”を決めておき、状況に応じてリモートで順番に落としていくという手段が有効だったかと思います。同様に、企業においては計画的にサーバの稼働数を減らせるようにするというのも、現実的な節電方法になるかと思います。

【鈴木氏】  考え方としては、サーバやラックといったマイクロな管理で解決する部分と、サーバルーム、あるいはビル全体といった広範囲でのとらえ方と大きく分けて考える必要があるでしょうね。先ほどITとファシリティの一体化といった話がありましたが、電力容量に関しては、やはり安定稼働が特に重視され、また経験則の積み上げもあって、ファシリティの側がかなりマージンを持たせる傾向があり、全体に容量が大きくなってしまっています。いわゆる「見える化」ということがよく言われますが、日々の稼働における無駄を明確化して、どこまで切り詰められるのかを判断する材料として積極的に活用し、あらゆるアプローチをとっていくことが大きな削減効果につながるのではないかと思います。

――  そういう考え方のもとに、ベンダとしてはどのような製品を展開しているのでしょうか?

【鈴木氏】  弊社は、以前はAPCという社名でUPSやサージ保護製品を中心に提供していましたが、現在では仏シュナイダーエレクトリックの一員として、各種電源/配電システムや空調機器など、幅広い製品に取り組んでいます。そうした設備機器では効率性を高めるとともに、監視機能を持たせた製品も投入しており、節電を追求するという分野では、ソフトウェアの部分が重要だと考えています。ITシステムの管理環境だけではなく、ラック、サーバルーム、そして、ビル全体といった管理環境との連携によって自動運用へとつながるようなソフトウェアを開発するなど、いかにユーザの手を煩わせることなく節電を実現できるかということを追求しています。

【栗田氏】  KVMスイッチを中心に扱っており、ラック内のサーバのコンソールやキーボード、マウス、モニタなどの入出力を1つに束ねて切り替えるというところから始まり、更にはリモートでのコントロールを可能にするという分野へと発展させています。そして、離れた場所からでも現地とまったく同じ操作環境で運用するためには、サーバの電源操作もできなければならないということで、リモート制御に対応したPDU(データセンタの電源タップ)、更には「見える化」を支援すべく電流値や温度の測定といった環境監視機能を持たせたPDUも提供しています。どういう節電対策を行うにしても、まずは現状の問題を認識することが必要ですから、ハードウェアで情報を収集し、ソフトウェアと連携して、状況を把握しやすい環境を作っていくことが重要だと思っています。

【高村氏】  弊社でも、節電対策の第一歩として、ラック単位、IT機器単位の消費電力の「見える化」が重要だと考え、そうした目的に対応したPDUを提供していますし、そのほかの分野も含めて、提供している製品の種類や基本性能は、極端に言えば、さほど変わりはないと思います。その上で、どのように使うことで節電効果を引き出せるのかという点を、ユーザの方にも真剣に考えていただきたいと考えていますし、同様に、われわれ提供する側でも様々な可能性を検討しながら、取り組まなければいけないと感じています。その一環として、コンセント単位で電源を自動でオンするスケジューリングを行い、突発的な電力のピークが発生しにくいようにする、新しいマネジメントの考え方を持たせたPDUなども提供しています。例えば、出勤時間帯のPC起動による電力ピークを回避できれば、電気基本料金の低減にもつながるというわけです。


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――  ITシステムの電源・電力管理を推進し、節電などの目的を果たしていくためには、組織的な改革なども必要になってくるのでしょうか?

【栗田氏】  計画的にサーバの稼働数を減らせるようにしておくという取り組み方について触れましたが、これは手段としては本当に今すぐにでもできることだと思います。電力不足というのは今後長い年月にわたり続く可能性が高いですから、長い目でとらえる必要がありますし、こうした最低限の部分からでも即座に取り組み始めるべきでしょう。ただ、じゃあ落としていいものとそうでないものを誰が判断するのかという問題も出てきます。例えば、先ほどのITとファシリティが一体化されていないという課題を挙げましたが、同様に、頭がいくつもあると絶対にうまくいくはずがない。1人の管理者なり、経営陣なりが、全体に対する権限と責任を持って指示を出せるという環境をまず作らないと延々とうまく行かない可能性が高いでしょう。

【高村氏】  弊社の顧客では、ITシステムも含めて、それこそオフィスの照明や空調などまで、全社における電気使用量を収集し、それを社員全員が気軽に確認できるようにしたことで、節電への意識を高められたという事例がありました。これも企業全体としてどう取り組むか、いかに理解を深めるかという答えの1つになると思います。実際、こうしたことを実現するための機器やソフトウェアも以前ほど高価ではなく、手の届く範囲内で選択可能になっていますから、まずはそうしたところから取り組むというのも成功への道ではないかと考えます。また、先ほどの全体的な指示を出せる立場に関しては、グローバルではCIOがその領域での絶対的な権限を持たされているケースが多いですね。日本でもそうした役割が根付いてくれば、責任範囲も明確になってくるし、組織的な問題も解消されるかもしれません。

【鈴木氏】  社長直属の節電担当などといったかたちで設けるケースもあるのでしょうが、一時的なものになりかねないですしね。実はCO2削減、グリーン推進などと同じ体制で、時期を経て呼び名が変わっただけということも大いにありそうです。今は電気が問題になっているだけで、そうした企業全体で取り組むべき問題、管理しなければいけない問題は今後もいろいろと浮上してくる可能性も高いですから、どういう分野は誰に責任があるのか、権限があるのかという点をしっかり固めておく必要があるかと思います。

――  では、最後に各ベンダとしての今後の方針などをそれぞれお聞かせいただけますでしょうか?

【高村氏】  弊社はもともと、産業用エンクロージャのメーカーとして始まったため、ITに関しては後発と言えます。ただ、現在ではサーバベンダへラックをOEM供給するなど、ノウハウを着実に蓄積しており、更に産業分野で培った技術を組み合わせることで、かなり幅広いソリューションを手がけるようになってきました。例えば、最近では倉庫や配送センターでも物流管理の面からサーバが必須になっていますが、PDU、UPS、監視システム、更には消火システムに至るまでの“サーバルームの設備”を、そのまま1台のラックに収めた製品も提供しています。こうした製品はBCPの観点でも有効ですが、クーリングユニットの実装により、ラックの中だけを効率的に冷却でき、空調コストの大幅な削減にも貢献します。更に、同じような考え方のもとでコンテナ型データセンタなども用意していますから、個々の製品による電源・電力管理の支援はもちろん、オールインワンでの提案も行っていきます。

【栗田氏】  KVMスイッチを今後も主力商品としつつ、データセンタやサーバルームのラック内のリモート制御にとどまらず、「現場で可能なことは、遠隔からでも極力すべてできるようにしよう」という流れで守備範囲を広げています。そして、電源・電力管理の部分は、PDUを中心として取り組んでいこうという方向性です。PDUの電源制御と環境測定で統合管理を図っていくわけですが、一口に電源・電力管理といっても様々な要求が出てきており、1つのPDUですべての機能をカバーするのは賢明とは言えません。弊社のコンセントバーなどではモジュール設計を採用しており、その組み合わせで多様なニーズに対応できますから、例えば、単に電源制御だけを行うようなものから、非常に細かい温度変化をリアルタイムで延々と測り続けるようなものまで、今後も幅広いラインナップを提供していくことで、顧客企業の要求に事細かく対応できる姿勢を維持していこうと考えています。

【鈴木氏】  弊社は、グローバルでは総合的な提案力を強みとしており、製品ラインナップに関しても、データセンタの物理インフラやファシリティにとどまらず、先ほども述べたように、各種電源/配電システムや空調機器など、ビルディング単位での管理に対応するような機器を提供しています。こうしたシュナイダーがもともと持っている総合提案力は、日本でも広げていこうとしています。そこで中心となるのは、やはりソフトウェアの部分で、データセンタ、電源システム、空調設備など、個々のコントロールは別々のソフトウェアで行っていたとしても、すべてを総合的に見られるような仕組み、いわゆるBI(Business Intelligence)などのダッシュボードのような考え方を取り入れていくことなども考えられます。そうした環境を構築することで、企業の経営層などの責任を持った方々が、全体的な電力削減のための具体的な指示を容易に出せるように支援していければと思います。


●ありがとうございました。

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