直流給電は消費電力削減の切り札となるか?

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

掲載日 2012/07/12

ザ・キーマンインタビュー (仮題)直流給電は消費電力削減の切り札となるか?

東日本大震災を機に激変した日本の電力事情。データセンタ/サーバルームでも、災害発生時はもとより平時においても、いかに消費電力を削減していくかが事業継続上の重要な課題となっている。消費電力削減に寄与する電力供給方式として注目を集めている高電圧直流給電システムを開発したNTTファシリティーズのキーマンに話をお伺いした。

株式会社NTTファシリティーズ 企業サイトへ

吉田 誠氏(左)、廣瀬 圭一氏(中央)、則竹 政俊氏(右)

営業本部 ソリューションビジネス部 データセンター担当/BCP担当 担当部長 吉田 誠氏(左)
研究開発本部 パワーシステム部門 主幹研究員 博士(工学) 廣瀬 圭一氏(中央)
研究開発本部 パワーシステム部門 則竹 政俊氏(右)

東日本大震災を機に激変した日本の電力事情

Question

データセンタを運営している事業者、あるいはサーバルームを運用しているユーザ企業の情報システム部門は「電力」の面でどのような課題を持っているとお考えでしょうか?

Answer

株式会社NTTファシリティーズ:吉田 誠氏

【吉田】CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の観点からも、企業のグリーン化は経営上の重要な課題、テーマとなっています。また事業の観点からも、より少ないリソースでより良い製品やサービスをお客様に提供し、利益を上げていくことが求められています。データセンタやサーバルームでは運用コストのかなりの割合を電気代が占めているため、リソースとしての電力を強く意識しなくてはいけない。もともとこのような流れにあったところに東日本大震災が発生し、計画停電や電力使用制限令が発動され、いつでもふんだんに電気が使える電力事情ではなくなった。大幅な電力料金の値上げも予定されており、これらが事業にどんな影響を及ぼすかを考えなくてはならない状況となっています。

【則竹】ITトレンドの観点からも、データセンタ/サーバルームの消費電力削減は必須の課題となっています。クラウドやビッグデータ時代の到来によって取り扱うデータ量が加速度的に増加するにつれ、データセンタや企業のサーバルームに設置されるサーバやストレージなどのICT機器もどんどん増えてきています。それにともなって、もちろんICT機器自体の効率化や省エネ化は進められてはいますが、データセンタ/サーバルームの消費電力は右肩上がりで増大しています。

消費電力の増加に対処するためには、電力を供給するための電源設備をまず増やさなくてはなりません。ICT機器が増えれば発熱量も増えるため空調設備を増強しなくてはならず、そこでも消費電力は増加します。また、細かい点ですが、電力供給量を増やすためには電力ケーブルを増設しなくてはなりませんが、そのために空調の流路としても使われている二重床の内部がケーブルだらけになってしまい、気流の流れが悪くなってICT機器を適切に冷やせなくなることもあり得ます。都市部にある面積の狭いデータセンタ/サーバルームの場合は、電源設備や空調設備の増設スペースをどう確保するかといった課題もあるでしょうし、賃料などの面でコストアップの要因にもなります。

【吉田】震災やその後の電力不足でクローズアップされましたが、消費電力の削減は当たり前のこととして取り組んでいかなくてはならない課題だと考えています。このためNTTグループでは消費電力の削減に貢献できる直流給電の普及に向けた施策を推進するとともに、高電圧直流(HVDC)給電技術の開発や国際標準化に取り組んでいます。


このページの先頭へ

高信頼性、高効率、省スペースな電力供給方式

Question

給電の直流化にはどんなメリットがあるのでしょうか?

Answer

株式会社NTTファシリティーズ:則竹 政俊氏

【則竹】直流給電という技術は最近登場したものではなく、NTTが使用している通信機器などでは直流48V(DC-48V)の電力供給方式が何十年も前から使われてきました。その一番の理由は、信頼性の高さです。商用交流電源をそのまま使用している一般的なデータセンタ/サーバルームでは、停電や瞬時電圧低下対策のためにUPS(交流無停電電源装置)を導入しています。UPSにはバックアップ電源として蓄電池が装備されていますが、蓄電池は直流で充放電するので、ICT機器に電力を供給する際には直流-交流変換が必要となります。この変換部分が構造上のウィークポイントとなり、停電時に万一ここが故障するとバックアップ電源としての機能を果たせなくなります。その点、直流無停電電源装置の場合はバッテリの電力を直接ICT機器に供給できるので、断線など根本的な障害が発生しない限り電力供給が途絶することはありません。

NTTの施設で長年使われてきた2番目の理由は、効率の高さです。信頼性が高い常時インバータ給電方式のUPSでは交流-直流、直流-交流の2段階の電力変換が発生しますが、直流無停電電源装置の場合は1段階です。商用交流電源からICT機器までを考えると、交流給電の場合は4段階の電力変換が発生するのに対し、直流給電の場合は2段階で済むため、効率性の面では交流よりも優れた電力供給方式だと言えるでしょう。

電源設備のスペースを削減できるというメリットもあります。これは電源装置の信頼性とも密接にかかわってくるのですが、直流無停電電源装置は2N構成のUPSと同等の信頼性がありますので、電源装置本体の面積が仮に同じだとすると、直流給電は交流給電に比べて電源装置の設置スペースが半分で済むことになります。実際には電源装置のほかに分電盤なども必要で、これらを合わせると50%以上スペース効率が上がると試算されています。

【吉田】スペース効率はことのほか重要です。データセンタ事業者にしても、サーバルームを運用しているユーザ企業にしても、マシンルームにスペースがあるなら事業に供するICTシステムを入れたいと考えるのが普通でしょう。ところが、サーバやストレージなどは高密度化しているので設置するスペースはあるのですが、電源装置や空調装置を増設する余地がないので結局ICT機器を設置できない、といったことが実際に起こっています。都内は特に地価が高いですし、スペースをいかに効率的に活用していくかについては、皆さん悩まれているのではないでしょうか。

図1 交流給電と直流給電の方式比較
図1 交流給電と直流給電の方式比較
資料提供:NTTファシリティーズ

Question

御社はHVDC給電にも取り組んでおられますが、高電圧化にはどんなメリットがあるのでしょうか?

Answer

【則竹】高電圧化によって電源装置やICT機器の設置の自由度が高まります。電圧を高めれば送電損失による電圧低下を少なくできるので、電源装置−ICT機器間の距離を延ばすことができるからです。また、電源ケーブルを細径化できるので、ケーブル自体のコストや施工費用を削減できます。先ほど二重床の内部がケーブルだらけになってしまい、ICT機器の冷却に悪影響が出るという話をしましたが、電源ケーブルが細くなれば空調の流れも改善できます。

Question

高電圧化することによって更なる効率化も見込めるのでしょうか?

Answer

【則竹】弊社のHVDC給電システムが採用している約380Vの電圧にはメリットがあります。既存のICT機器の交流電源部は100/200Vの交流電力を電源部で直流化し、一旦380V程度に高電圧化してから機器の内部で使われている12Vなどの電圧に変換しています。これに対しHVDC給電システムの場合は約380Vの電圧で給電するので機器内部での高電圧化が不要になり、そのために生じていた変換ロスをなくすことができます。

太陽光発電システムなど直流で発電する分散電源との親和性が高いこともメリットと言えるでしょう。電圧を変換したりきれいな直流に整えたりといった処理は必要になりますが、直流の電力を直流のまま効率よく使えるからです。太陽光発電システムとの連系も検討しており、サービスとして提供していきたいと考えています。

図2 高電圧直流給電システムのメリット
図2 高電圧直流給電システムのメリット
資料提供:NTTファシリティーズ

このページの先頭へ

現実的な選択肢になり始めた高電圧直流給電システム

Question

直流給電を普及させていく上で課題となっているものはあるのでしょうか?

Answer

【則竹】安全性、国際標準化、対応機器の普及などです。

安全性の課題に関しては、感電対策や短絡事故時の保護、地絡、漏電の検出などがありますが、これらの課題はおおむね解決されてきています。感電対策については、施工者側の対策としては、露出充電部がまったくないような施工方法や、高抵抗を接地ラインに挟んで万一充電部に触れてしまっても人体に電気が流れない接地方式を開発し、感電しない施策と万一感電しても人体に影響を及ぼさない施策の2段構えにしています。使用者側の対策では、交流用コンセントバーと同様の操作性で、かつ、通電時はロックがかかっていて電源プラグを抜けず、ロックを解除するために機械式スイッチをオフ側へスライドすると瞬時に内部で電流が遮断されるHVDC給電システム用のコンセントバーと電源プラグを富士通コンポーネント社と共同開発し、アークが発生したり使用者が感電したりしないようにしています。

Question

国際標準化についてはいかがでしょうか?

Answer

株式会社NTTファシリティーズ:廣瀬 圭一氏

【廣瀬】持ち株会社のNTTやグループ会社と協力しながら、IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)、ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector:国際電気通信連合 電気通信標準化部門)、ETSI(European Telecommunications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)などの国際標準化機関で直流給電の標準化を進めています。先ほど話に出たHVDC給電システム用コンセントについてはドラフト案が出る段階まで来ています。

IEC内で直流関連の規格を検討している組織はいくつかありますが、1500V以下の直流の規格をどのように定めていくかについてのロードマップを策定しているのがSG4(Strategic Group 4)で、その最初の対象としてデータセンタと通信施設用の直流規格を策定することが決まりました。早いものでは来年くらいから国際標準規格となり始め、その後順次、関連あるいは派生する国際標準規格が決まっていくと思います。

図3 IECにおける直流関連の活動状況
図3 IECにおける直流関連の活動状況
資料提供:NTTファシリティーズ

Question

国際標準規格を策定している最中とのことですが、この1〜2年の間に新たなデータセンタを構築しようと考えている事業者、あるいはサーバルームを新設しようと考えているユーザ企業にとって、HVDC給電システムは現時点での有力な選択肢の1つと考えていいのでしょうか?それとも国際標準規格が策定されるまで様子見しておいたほうがいいのでしょうか?

Answer

【廣瀬】それはもう完全に前者です。導入事例はまだ少ないですが、既に商用フェーズに入っていると考えていただいて構いません。欧米では新設するデータセンタの電力供給方式に直流を採用するところが次々と出てきていますし、約380VのHVDCに対応したサーバなどのICT機器も販売され始めています。

【吉田】データセンタ事業者の場合、お客様のICTシステムをお預かりするハウジングサービスの分野では交流用の電源設備を用意する必要がありますが、コンピューティングリソースをサービスとして提供するホスティングやクラウドなどの分野では事業者自身の考えでICTシステムをデザインできますので、消費電力削減を目的にHVDC給電システムを導入することは、有力な選択肢の1つとしてご検討いただけると思います。しかしながら、HVDCに対応したICT機器はまだ数が限られていますので、ICT機器ベンダと協力しながら直流の世界を広げていきたいと考えています。


●ありがとうございました。


取材協力

株式会社NTTファシリティーズ 企業サイトへ

NTTが逓信省であった時代から、「通信を止めない」という使命のもとで培われてきた建築と電力の技術を融合するかたちで1992年に誕生。ビルや建物設備の「企画・設計・施工」から「保守・運用・維持管理」まで、ワンストップでサービス提供できることが強みの1つ。環境とエネルギーのインテグレータとしてSmartでSafetyな街づくりに取り組んでいる。


このページの先頭へ



◆関連記事を探す

直流/直流給電は消費電力削減の切り札となるか?」関連の情報を、チョイスしてお届けします

※キーマンズネット内の「直流」関連情報をランダムに表示しています。

直流」関連の特集


まさかの災害時に携帯やスマホの電源が足りなくなる・・・そんな状況を“カセットボンベ”1つで回避できる…



「太陽電池を直結、8kWhの家庭用蓄電池」をご紹介



Googleが210億円を投資したというニュースも記憶に新しいデータセンタ。ユーザ企業高まる要求に応…


「UPS」関連の特集


充電の所要時間は30秒!かつ従来の電池の10倍の出力を持つ「有機ラジカル電池」。携帯などのモバイルグ…



怖いものの代表、地震や雷による停電・瞬断対策は万全ですか?UPSがあれば大丈夫…とは限りません!正し…



仮想化されたサーバ環境との連携や省エネ対策が最新動向として挙げられる「UPS」。これらトレンドから基…


「サーバー」関連 製品レポート一覧

このページの先頭へ

Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この記事に掲載している情報は、掲載日時点のものです。変更となる場合がございますのでご了承下さい。


30004974


IT・IT製品TOP > BCP最適化プロジェクト > サーバー > UPS > UPSのIT特集 > 特集詳細

このページの先頭へ

キーマンズネットとは

ページトップへ