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掲載日 2012/07/11

ザ・キーマンインタビュー インメモリでERPを再びリアルタイムに

ビッグデータ活用の目的は様々だが、一般的な企業ではやはり、より正確な市場動向の予測や売上促進、リスク回避などが主体となるだろう。その場合、軸となるのはERPから得られる確定情報であり、そこにパブリックな不確定情報なども取り込みつつ、情報を“膨らませて”いくことになる。SAPでは、インメモリデータベースをその基盤とした、“超リアルタイム”という新しいビジネスのかたちを提案している。それはどのような考えや技術にもとづくものなのだろうか?

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池田 真人 氏(左)、松舘 学 氏(右)

リアルタイムコンピューティング事業本部
HANA事業開発マネージャ
池田 真人 氏

リアルタイムコンピューティング事業本部
プリンシバルアーキテクト
松舘 学 氏

従来よりも一回り大きな情報にリーチしつつ、リアルタイムに進める必要が生じている

Question

貴社では長年にわたり、ERPをはじめとするエンタープライズソフトウェア分野に取り組んでおり、様々な関連技術を世に送り出されてきたかと存じますが、ビッグデータに対してはどのようなスタンスに立っているのでしょうか?

Answer

SAPジャパン株式会社:池田 真人 氏

【池田】弊社は会計を中心とするERP製品からスタートしたソフトウェア企業であり、売上においても、かつてはERPが大半を占めていました。しかし、現在では「Analytics」「Mobile」「Application」「Database&Technology」「Cloud」という5つの分野に重点を置いて事業を進めており、売上比率としてはERP以外の部分が半分を越えようとしています。

 また一方で、ビッグデータといった観点で見た場合に、取り扱うべきすべてのデータが“ERPの中”だけではカバーできなくなっていることも事実でしょう。例えば、データ分析により、「自社の売上を上げたい」「商品が売れなかった原因を知りたい」「新しい商品開発に活かしたい」といった場合には、現在のERPで発生したトランザクションごとのデータを見るだけでは十分とは言えなくなっています。

Question

ほかの情報系基盤で得られるようなデータなども取り込んでいく必要があるということでしょうか?

Answer

【池田】ERPは、企業組織としての業務が発生し、それが動いていき、その結果、商品やサービス、あるいは価値が顧客へ提供されていくという、いわば標準化されたプロセスのもとに成り立っています。しかし、現在のビジネスにおいては、そこから得られる確定情報だけにはとどまらず、ソーシャルメディアなどといった企業にとっては不確定要素となる情報も非常に多く存在し、そうした不確定情報と確定情報を組み合わせて扱っていくことが非常に重要になっていると言えるでしょう。

 だからこそ、弊社としては、ERPを軸としつつも、CRM(顧客関係管理)、SRM(購買管理)などに関係する部分の情報も含め、確定情報から未確定情報/不確定情報へと輪を広げることで、もう一回り大きな情報にリーチしなくてはいけない。その手段を顧客に提供していかなくてはいけない。それがビッグデータを活用し、価値を見出していく上で重要だと考えています。そして、スピード感を持ってそうした方向性を提供できるよう、インメモリコンピューティングを実現する「SAP HANA」を2010年11月にリリースし、それを軸として様々な製品やサービスを提供しているのです。

Question

事業計画、将来予測、価格設定の最適化といった目的を遂行するためには、ERP上にある大量のトランザクションデータだけではなく、より多くの情報を集約して分析することが必要であり、そのためにインメモリコンピューティングによる高速性が必要だったということでしょうか?

Answer

【池田】現在、多くの企業でERPを導入していただいており、そうした企業ではERPにもとづくかたちで業務プロセスが動いているでしょう。また、製造業においては、SCM(サプライチェーン管理)が中心的な役割を果たしています。ただ、先ほど述べたように、現在、非常に重要となりつつあるのは、それ以外の範囲の情報も取り込み、シームレスに連携を図っていくことです。様々な情報を取り込んで、利活用していくという製品としての許容力が要求されると同時に、弊社では、それを“リアルタイムに進めていく”ことが大きなポイントだと考えているのです。

図1 SAP HANAを基盤とし、5つの重点事業戦略を推進
図1 SAP HANAを基盤とし、5つの重点事業戦略を推進
出典:2012年 SAP

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ハードウェアとソフトウェアの両方でインメモリを実現

Question

SAP HANAを導入されている企業では、具体的にどういった目的で活用しているのでしょうか?

Answer

SAPジャパン株式会社:池田 真人 氏

【池田】SAP HANAのリリースから1年半が経過しましたが、現在、全世界で350社以上、日本国内でも30社以上に採用いただいており、SAP史上最も成長の早い製品だと言えます。例えば、BIソリューション「SAP NetWeaver Business Warehouse」を導入している顧客企業に対しては、データベースレイヤーをSAP HANAにすることで、高速なパフォーマンスによる業務改革が可能だというかたちでの提案を行っています。更に次の段階として、弊社の主力ERP製品をSAP HANA上で、つまりインメモリで稼働可能にする作業も進んでいます。

 これらはSAPの既存顧客の方に向けた動きとなりますが、もちろん、それ以外の方にもSAP HANAは活用していただける製品となっています。つまり、SAP HANAはインメモリデータベースを実現するものであり、すべてのアプリケーションのデータベース基盤として高速なインフラを提供可能です。実際、自社開発のスクラッチ型アプリケーションでパフォーマンスの問題を抱えていて、その高速化を目的に採用いただいている企業もあります。

Question

SAP HANAの特長はどのような点にあるのでしょうか?

Answer

【池田】まず、インメモリデータベースを実現しつつ、1つのデータベースシステムで業務系と分析系のシステムを兼ねることができます。これは、トランザクション系のOLTP処理に適した行ストアと、OLAP処理に適した列(カラム)ストアの両方をサポートしているからです。しかも、列ストアにおいては非常に効率的な圧縮が可能で、データを持っている時点で既に圧縮されている状態になっている点も大きなメリットと言えるでしょう。また、使用可能なコア数に合わせた並列実行ができるように設計されており、マルチコア・プラットフォーム向けの最適化として、データのパーティショニング、つまり、テーブルを分割して持つようになっています。そのほか、集計の計算処理自体が高速なため、パフォーマンスチューニングを目的としたマテリアライズドビューなどが必要なく、無駄なデータを保管しておかなくていい点も挙げられます。

 そして、最後はERPが稼働するようになると最も活かされる技術要素なのですが、差分がインサートのみということ。通常のデータベースでは、アップデート、デリート、インサートという3つの差分処理がありますが、SAP HANAでは高速化のために基本的にはインサートのみで行っています。このように、SAP HANAでは、ハードウェア的な部分だけではなく、ソフトウェア側の工夫も各所に少しずつ盛り込み、ハードウェアとソフトウェアの両方でインメモリを実現しているところが特長と言えます。

図2 SAPのインメモリ技術の基本要素
図2 SAPのインメモリ技術の基本要素
出典:2012年 SAP

Question

特にビッグデータ活用においては、SAP HANAはどのように働くのでしょうか?

Answer

【池田】SAP HANAでは、最新バージョンのSP4からApache Hadoopとの連携に対応しており、ビッグデータを高速に取り扱えるデータベース基盤として活用可能です。しかも、ビッグデータをデータソースとして取り込むことができるだけではなく、価格情報や顧客情報といったERPデータも同時に格納し、両者を組み合わせて、垂直統合的な分析、包括的な分析が行えるという点が強みです。

 また、ビッグデータの分析・解析を行う際には、オープンソースのR言語を利用可能ですが、SAP HANAを高速に活用できるように最適化して開発した独自関数群「PAL(Predictive Analysis Library)」 「BFL(Business Functional Library)」も提供していますので、ユーザは難しいロジックに取り組む必要なく、よりシンプルなアプリケーションで、大量のデータを活用した将来予測といったビッグデータ解析を容易に実現可能になっています。


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コモディティ化された技術を活用しつつ、各ベンダと連携して技術革新を進める

Question

Hadoop連携だけではなく、SAP HANAでは他企業との協業などにも重点を置いているようですが、これはどういう意図なのでしょうか?

Answer

SAPジャパン株式会社:松舘 学 氏

【松舘】企業買収などで、自社で必要なハードウェア/ソフトウェア資産などを取り込んで、すべてワンストップでやるというのも1つの手だとは思いますが、弊社の場合は、基本方針として「for Innovation」という考え方を中枢に置いていて、“SAPエコシステム”というアプローチを非常に大事にしています。例えば、弊社ではインテルとの協業も10年以上に及びますが、それによって、SAP HANAのソフトウェア開発にあたっても、インテルの技術者と共同で行うことでコードの最適化が図れていますし、更にCPU以外の分野でも技術供与を受けています。

 SAP HANAのアプライアンス製品に関しても、自社による1社垂直型ではなく、現在は認定パートナーである7社から提供していただいていますが、そういう提供体制にすることで、コモディティ化されたテクノロジーを活用しつつ、様々なベンダとともに技術革新を進められる。これにより、市場や技術の変化に素早く対応しつつ、SAP HANAとハードウェアを常に最高のバランスで最適化しておくことができるというのが弊社の戦略です。

Question

先ほどリアルタイムという言葉が出ましたが、リアルタイムは具体的に何をビジネスにもたらすのでしょうか?

Answer

【池田】例えば複数の拠点を抱えている小売業においては、拠点ごとの売上データを見るだけでもいちいち集計作業が必要となるようなシステム環境では、データを分析しようにも、その前の段階で多大なタイムラグが発生してしまいます。しかし、リアルタイムでの分析が実現すれば、社内・社外の幅広い情報を活用しつつ、商品単品ごとの店舗在庫情報に対して、最適な発注量をより精密に割り出すといったことも可能になります。同様に製造業であれば、生産効率の向上につながってくるでしょう。現在のようなビジネス状況では、多くの企業がそのような徹底したビジネスの効率化、そして、それによる利益率の改善などを求めており、ERPのリアルタイム化に期待を寄せている部分と言えるのではないでしょうか。


【松舘】もともとERPはリアルタイムだったのです。リアルタイムというキーワードは、弊社にとって創業当初からの理念であり、SAP R/3の「R」はほかならぬ“リアルタイム”を意味していました。ただ、会計の仕組み上、財務会計、管理会計、在庫購買管理など、次々に拡張されていくことで、取り扱うデータも徐々に膨らんでしまい、その結果、リアルタイムではなくなってしまったというわけです。

 そうなると、今のようにデータウェアハウスにデータを切り出す方法をとるしかないのですが、SAP創業者のハッソ・プラットナーに言わせると、それは「妥協の産物」にすぎない。そういうジレンマの中で発想として出てきたのが、インメモリによる高速処理なのです。そして、SAP HANAという製品を世に送り出すことで、“もう一度、ERPがリアルタイムに戻ろうとしている”。そういう意味で、弊社では再びリアルタイムという言葉を前面に出したり、あるいは“超リアルタイム”という新しいビジネスのかたちの提案を行っているわけです。


取材協力

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エンタープライズ・アプリケーション・ベンダとして、企業がビジネスプロセスを強化し、市場での優位性を保持するための包括的なソリューションを提供。バックオフィスや役員会議室、倉庫や店頭などにおいて、より効率的に協業を行い、より的確なビジネス判断を行うための様々なソフトウェア/サービスを展開している。


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