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掲載日 2012/06/28

ザ・キーマンインタビュー BCPに即したバックアップの勘所とは?

システム障害や人為的ミスによるデータ消失に備えるためのバックアップは、既に大部分の企業が何らかの手段を導入済みと思われるが、それらをBCP目的へと対応させていくためには、どのような考え方や具体的な手順が必要になるのだろうか。日立製作所の西部憲和氏にお話を伺った。

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西部 憲和 氏

ITマネジメントソリューション開発部
主任技師 西部 憲和 氏

確実に守ることに対する意識と、すぐにできる手段への関心の高まり

Question

企業データのバックアップに対するユーザ企業の意識は、東日本大震災を受けてどのように変わったと言えるでしょう。震災直後と現在の違いも含め、全体的な印象をお聞かせ下さい。

Answer

株式会社日立製作所:西部 憲和 氏

震災直後は、多くの企業において「BCPの一環としてのバックアップ」のあり方に関心が高まっていたものの、実際に手立てを行うためには、まず情報収集や予算確保をしなければならないという状態だったと思います。また、それ以降になると、節電対策などの問題が浮上したことで、BCPへの意識は一旦落ち着いたかのように見えました。

 ただ、新たな年度に入って本格的に予算も確保され始めたおかげか、最近ではより具体的な引き合いが増えているようです。中でも注目度が高いのが、重複排除機能などを利用して、なるべく経済的に“企業データの遠隔バックアップ”を実現する製品なのですが、これは「データをより確実に守る」ことに対する意識の高まり、そして、「今すぐにできる手段」への関心の高さを示しているのではないでしょうか。

Question

「今すぐにできる手段」ということで言えば、既存の環境を活かしつつ、BCPにも有効なバックアップシステムを構築したいという要望も多いのではないでしょうか?

Answer

もちろん、そういう企業の方は多いです。例えば、東京本社と各拠点でレプリケーションを行いたいという案件の場合、最も理想的なのは高速な専用回線を新たに設けて、ハードウェアレプリケーションのようなかたちに近づけることでしょう。しかし、予算を有効に使いたいので、いまある回線をうまく活かしてほしいという要望をいただくことも多いです。

 では、実際にどうするかというと、初回のフルバックアップはネットワーク経由ではとても終わらないですから、フルバックアップのデータをテープに保存して物理的に搬送する。あとは回線を通じて差分データのみをやりとりするような仕組みにすればいい。まあ、言ってしまえば簡単なことなのですが、実際には転送や回復時間などをきちんとシミュレーションした上で、運用にも何らかの工夫を加えることが必要になります。そのように、既存の環境を活かしながらデータを守る方法を考えるという案件はやはり多いです。

Question

そうした企業ではバックアップ先をどのように選んでいるのでしょうか?

Answer

災害の影響が少ない場所という観点もありますが、距離も意識するようになっていますね。これまでは50kmや100kmでも、あるいは、せいぜい300kmで十分という感覚もあったかもしれませんが、最近は「500km以上は離れていなければ」と考える企業も少なくない。あとは、自社内の拠点となると、データセンタの建設候補地のような強固な地盤というのは望めない可能性が高いのですが、工場を持っているような企業であれば、むしろ、そちらを選ぶという企業は多いようです。もともと工場というものは、ある程度しっかりとした地盤の土地に建てられていることがほとんどですから。


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業務/システムの重要度調整を行うことで、必要最低限の対策に絞り込める

Question

データに関して言えば、やはり基幹業務系のものが重要度が高いかと思いますが、それ以外にも何かありますでしょうか?

Answer

株式会社日立製作所:西部 憲和 氏

メールなどが代表的かと思いますが、失われた時に「意外に重要性が高かった」と気づくことが多いのが、ファイルサーバのようですね。特に個人データの保管場所として運用されているようなファイルサーバの場合は、バックアップに関しては軽視されがちなところがあるのですが、実は仕事上のノウハウに関わるデータがかなり存在するのではないでしょうか。ただ、その分、容量もかなり膨らんでいますし、あくまでも「意外に…」なので、あまり大仰なバックアップシステムなどはそぐわない。ですから、なるべく容量あたりのコストが低くて、それなりに信頼性も高い手段のニーズというものが、近いうちに急増するのではないかと考えています。

Question

データバックアップの次の段階としては、どのようなことに取り組むべきなのでしょうか?

Answer

BCP、特にディザスタリカバリ(DR)を実現していくためには、「データ保全」に加えて、「サーバ保全」も必要になります。単なるファイルのバックアップ/リストアではなく、システムもバックアップ/リストアできなければいけない。いわゆる、システムリカバリというものですが、そうした状況を受け、BCPの観点から「サーバ仮想化」に取り組むケースがかなり増えてきています。あらかじめ仮想化を導入しておけば、サーバイメージを丸ごとバックアップすることも容易になりますし、しかも、システムの復旧も短時間で行えます。また、通常、BCP対策はコストがかかるというイメージが強いですが、仮想化にはコスト削減効果も期待できるため、「“BCP”を目的とした“仮想化”」という組み合わせは経営層への訴求力も高いですから。

図1 企業の検討状況から見える傾向
図1 企業の検討状況から見える傾向
出典:日立製作所

Question

そうした包括的なバックアップ体制の構築を行うためには、製品導入以前に方針策定の段階で綿密に進める必要があるかと思いますが、具体的にはどのように臨むべきなのでしょうか?

Answer

まずは、想定されるリスクを洗い出して、「それが失われてしまうと、あるいは機能しなくなると、自社のビジネスが停止に追い込まれる」という可能性のある経営資源を特定しなければなりません。ただ、一定のレベルで線引きをしなければ、業務部門にとっては「あれも必要、これも必要」ということになるでしょうし、それでは予算がいくらあっても足りません。必要最小限の対策に絞り込めるよう、損害が許容できる部分を客観的に洗い出したり、取捨選択すべきでしょう。こうした業務(システム)の重要度調整は、各業務部門はもちろん、情報システム部門にも完全に任せられるものではありませんから、ある程度は経営層が判断するかたちで、トップダウンで計画を進めていくことが非常に重要だと思います。

図2 「RTO/RPOの整理」の実現例
図2 「RTO/RPOの整理」の実現例
出典:日立製作所

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「守る」だけではなく、「戻す」までの体制もしっかり整備しておく

Question

「BCPの一環としてのバックアップ」において、運用担当者が留意すべき点やヒントなどがありましたら、お聞かせ下さい。

Answer

株式会社日立製作所:西部 憲和 氏

一番考えなくてはいけないのは、「データを守る」こともそうですが、やはり、「守ったデータからシステムを復旧させる」という部分でしょうね。ある特定の人だけができればいい話ではなく、何人かの人間が同じように復旧作業を実行できる体制を構築しておく。あとは、特に緊急用のサブシステムを構築した場合に起こりうるのですが、先の震災でも、サブシステムへの切り替え、メインシステムの復旧はできても、復旧後にメインシステムへ戻す際に問題が生じたり、戻せなかったというケースも多々あったようです。ですから、「戻す」というところまでを含めて、マニュアルを整備したり、実際にそれらの動作を実行する訓練を定期的に行うことが重要だと思います。

 また、バックアップという分野は特に新しい技術が矢継ぎ早に出てくるというものではないですし、レプリケーションにおける重複排除、あるいはシステム全体をバックアップして容易に復旧できるベアメタルリストアなども特に新しいテクノロジーではないですが、ソフトウェアレベルで磨かれたり、アプライアンスという形態で提供されるようになったりと、徐々に進化しています。そうした機能を持った製品を活用することで、運用管理もある程度は自動化され、効率的なバックアップ環境を構築できます。それが結果的に復旧時間の短縮にもつながるわけですから、うまく活用してほしいですね。


●ありがとうございました。


取材協力

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2010年に創業100周年を迎えた総合電機メーカー。IT(情報技術)で高度化された社会インフラを提供する「社会イノベーション事業」を軸に、グローバル市場でビジネスを展開している。情報・通信分野においては、サーバ、ストレージ、ネットワークなど、ITインフラとそのオペレーションに注力するほか、クラウドサービスやビッグデータ活用でも先進的な取り組みを行っている。


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