インメモリが実現するビッグアナリティクス

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掲載日 2012/06/27

ザ・キーマンインタビュー インメモリが実現するビッグアナリティクス

データを活用することで将来を予測し、企業経営に役立てることを目指す。そうしたビジネスアナリティクス分野に長年に取り組み、分析・予測/レポーティング/データ統合などの関連製品・技術を世に送り出してきた、SAS Institute。同社のビッグデータに対する考え方、技術的な取り組み、そして今後の展望などについて、SAS Institute Japan マーケティング本部長の北川裕康氏に伺った。

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北川 裕康 氏


マーケティング本部長 北川 裕康 氏

関連性のあるデータをいかに探して処理するかがポイント

Question

貴社では長年にわたり、ビジネスアナリティクス分野に取り組んでいますが、ビッグデータに関しては、どのようにとらえているのでしょうか?

Answer

SAS Institute Japan 株式会社:北川 裕康 氏

まず、弊社のビッグデータに対する考え方の基本は、“絶対的ではなく相対的”ということです。つまり、より正確でタイムリーな意思決定を行おうとした場合に、データの量(Volume)、多様性(Variety)、スピード(Velocity)が、企業が持つストレージやコンピュータの能力を超えてしまっている状態。そういう視点において、弊社のビジネスは36年前に創業して以来、ずっと“ビッグデータとの戦い”に取り組んできたと言えます。ただ、近年はビッグデータそのものの規模が、従来の尺度では計りきれないレベルに達していることもたしかで、企業の中だけを見ても、データ量は相当に膨らんでいるでしょう。

 ただ存在していたとしても、データはそのままでは無価値、極端に言えば「ゴミ」にすぎませんし、どのように有効活用するかを考えねばなりません。ビッグデータの特性を示すものとして、先ほどのデータの量(Volume)、多様性(Variety)、スピード(Velocity)という“3V”を挙げることが多いですが、それに価値(Value)を加える考え方もあります。その点において、弊社では「関連性(Relevance)」のあるデータをいかに探して、処理するかということがポイントになると考えています。

 膨大なデータの中から、関連するデータを探した上で、今度はそれを価値のあるものに変える。それを可能にするのが“アナリティクス”であり、特にビッグデータを対象としたものを“ビッグアナリティクス”と呼んでいます。ストレージの容量はどんどん増加し、コストも下がっていますが、単にデータを集約するだけではなく、分析をして、何らかの発見に結び付けないと意味がありません。

図1 ビッグデータ時代に成功するためには?
図1 ビッグデータ時代に成功するためには?
出典:SAS Institute Japan

Question

このあたりはビジネスインテリジェンスと通じる部分も多いのでしょうか?

Answer

ビジネスインテリジェンスの場合は、どちらかというと過去のレポーティングを重視することが多いのですが、企業の経営は、自動車の運転のように、後ろだけでなく、前方を中心に見ることが非常に重要になります。しかも、ビジネスアナリティクスによって、最新のミリ波レーダのように前方に何があるかを予測して、運転をアシストする必要があります。ですから、アナリティクスに関わる立場としては、データを活用して企業にもっと前を向かせるということを大事にしてきました。

 アナリティクスには主に、“自動化”(Automated)、“戦術的”(Tactical)、それよりも更に広い“戦略的”(Strategic)、そして、“予測型”(Predictive)という4つの段階があり、どこまで取り組むかによって、ROI(投資利益率)がかなり変わってくることも分かっています。例えば、自動化までの場合は2倍、予測型になると12倍のROIが実現できたという調査結果も出てきています。ビッグデータ活用も、ただ漫然と推進するのではなく、“予測”によって前方の視界を良好にし、企業にROIをもたらすべきものだと思っています。


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インメモリ分析エンジンをビッグデータ活用の基盤に

Question

技術的要素に関しては、これまで培ってきたアナリティクスでの取り組みが、ビッグデータにおいても“生きてくる”ということでしょうか?

Answer

ビッグデータの活用分野としては、今の時点では、ソーシャルメディアのインフルエンサーマーケティングにおける最適なターゲティングなどが代表的な例として挙げられることが多くなっています。ただ、一般的な企業においては、当然ながら、より多く、正しいビジネスインサイトを得るために使いたい、顧客ベースのセグメンテーションに活用したいという要望も多く、より大規模なデータを分析することで、これらの精度を高められるのではないかという期待が大きいかと思います。

SAS Institute Japan 株式会社:北川 裕康 氏  そうした点で、ビッグデータの分析は、やはり従来のアナリティクスの延長だと思っています。突如生まれたものではなくて、これまでの蓄積による成熟度の先にあるもの、それがビッグアナリティクスということです。逆に言えば、いきなりビッグデータの活用に取り組もうとしても無理なわけで、段階を踏んで、まずアナリティクスを実装し、そこからより大きなデータを扱えるビッグアナリティクスの構築へと持っていくべきでしょう。

 ただし、アナリティクスとビッグアナリティクスの間には、当然、若干のギャップもあり、まずはどうしても、高速のデータを大量に処理することが求められます。これに対しては、弊社でもこれまで取り組んできた技術である「インメモリ」、そして、「スケールアウト型の並列処理」が、やはり重要になるでしょう。しかも、この両者を組み合わせて使うことがビッグデータを扱えるようになった最大のポイントです。例えば、1台のサーバあたりの最大メモリ容量が1テラだとしても、ビッグデータはペタといった数字をも扱う世界ですから、キャッシュで1000分の1しか乗らないことになります。だから、弊社では「LASR Analytic Server」というインメモリ分析エンジンを開発し、ビックデータのためのすべての製品の基盤となる、インメモリ+並列処理を実現する技術として世に送り出したわけです。

Question

インメモリは、やはりビッグデータを活用する上で重要な技術だということでしょうか?

Answer

インメモリと一口に言っても、大きく分けて、インメモリアナリティクスとインメモリデータベースがあるかと思います。汎用的なデータベースとは違い、今回の「LASR Analytic Server」では、分析はサーバ側にデータを読み込んで繰り返し処理するだけなので、いかに読み込みを高速にして、メモリの中で高度な分析をさせるかという意味でインメモリを活用、つまり、インメモリアナリティクスを実現しています。

 先ほど説明したように、それに加えて並列処理が必要ですが、ここは2つの実装方法に対応しています。まず1つはTeradataやEMC Greenplumのような超並列マシンによるコンピューティング・システムを利用し、ストレージにもそれらのデータベースシステムを活用するという形態。

 そして、もう1つが今回の製品の大きな特長とも言えるのですが、HPやDellといった「汎用的なブレードサーバ」を並べて稼働させることも可能で、しかも、この場合は、ストレージとしてHDFS(Hadoop Distributed File System=Hadoop分散ファイルシステム)を使います。このように、「アナリティクスに特化したインメモリ手法」を実装しつつ、「専用アプライアンスはもちろん、汎用ブレードサーバによる並列処理にも対応」し、「ストレージにHadoopのファイルシステムを使える」という3点が、弊社の技術上の大きな特長と言えるでしょう。

図2 SAS製品とHadoopの関係
図2 SAS製品とHadoopの関係
出典:SAS Institute Japan

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フロントエンドの充実で“超高速ビッグデータ処理”の活用分野は更に広く

Question

そうした様々なテクノロジーの組み合わせによって超高速処理が実現したことで、利用する側の意識変化が求められるといったことはあるのでしょうか?

Answer

SAS Institute Japan 株式会社:北川 裕康 氏

今回紹介したようなインメモリをはじめとするハードウェア技術が、ビッグデータ活用、ビッグアナリティクスにもたらすメリットは、基本的にはあくまでも「大量のデータを高速に処理できる」という点に尽きます。

 もちろん、新たな成果がもたらされることもあり、弊社でも「LASR Analytic Server」を活用するためのフロントエンドとして、インメモリのハイパフォーマンスを活用し、生のビッグデータを視覚的に探索できる「SAS Visual Analytics」をリリースしました。ただ、その一方で、従来のアナリティクス関連アプリケーションの「LASR Analytic Server」対応も進めています。ハードウェアの進化を利用することで、既存製品のキャパシティを上げていくというかたちですね。

 ですから、おそらくアナリティクスに携わる方にとっては、従来より高速に処理ができるようになるというだけで、あまり違和感はないでしょう。利用するツールが変わるわけでもないので、これまで蓄積した知識や経験もそのまま活かせるはずです。

 ただ、大量のデータをいかに管理していくかというのは、やはり簡単な問題ではないので、分析の高速化と並行して、弊社ではインフォメーションマネージメントの分野にも力を入れています。地味な分野ですが、データのクオリティをいかに上げるか、意思決定のプロセスをどのように管理するかといった、データ管理のベーシックな部分の機能も充実させようと取り組んでいます。

Question

こうした、大規模データの高速処理を可能にするソリューションは、どのような規模・業種の企業が利用することを想定されているのでしょうか?

Answer

当初はやはり、銀行のリスク分析、あるいは、大量の店舗やSKU(Stock Keeping Unit)を抱える小売業などが主な対象となるでしょうが、フロントエンドの充実で、適用分野は広がっていくでしょう。例えば、前述の「SAS Visual Analytics」などは、BIの進化型とも言うべき形態になっていますので、どんな企業でも活用できると思います。価格の面でも、汎用ブレードサーバによる構成に対応したことで、導入しやすくなっていますし、構成やコストは今後も更に最適化されていきますので、将来的にはかなり広い範囲での利用が見込まれます。

 また、先ほど述べたとおり、アナリティクスを実践している企業が大量のデータを扱えるようにアップグレードしていくことが基本となりますが、最初からビッグアナリティクス、ハイパフォーマンスアナリティクスの導入を検討するという時代も、数年後には来るのではないかと思っています。ソリューションベンダとしては、こうした流れにも対応していかなければいけないでしょうね。

 もちろん、こうしたソリューションを活用して、ビジネスメリットを引き出す、ビジネスを変えていくためには、いくつかのハードルを越えることも必要になります。まず、アナリティクスはどの企業にも絶対に必要だと考えますが、アナリティクスの文化を企業内に根付かせ、組織的に成熟させていくというのは、やはり簡単にできるものではありません。

 また、大規模データを高速に処理できるというのは事実ですが、ただ速くなるだけでは意味がなく、その圧倒的な桁違いのスピードを活用することで、自社に何がもたらされるのか、どのようなメリットを顧客に対して提供できるのかといったことを想像したり、アイデアを膨らませたりすることができないといけないわけです。これは大きなチャレンジと言えるでしょうが、逆にそうした意識を持って、新しいテクノロジーやソリューションを導入していこうという企業が“強く”なっていくことも事実ですから。


●ありがとうございました。


取材協力

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企業の経営課題解決を支援するビジネスアナリティクス・ソフトウェアとサービスのリーディング・カンパニー。1976年の設立以来、高度な分析と将来予測を実現するフレームワークにもとづき、「The Power to Know(知る力)」を世界各地の顧客に提供することで、顧客のパフォーマンス向上と価値の創出を支援。全世界の5万5000以上のサイトにソリューションを提供し、日本においても1500社2300サイトの導入実績を誇る。


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