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掲載日 2012/09/18

ザ・キーマンインタビュー OpenStackを核としたHPのクラウド戦略

日本ヒューレット・パッカードでは今年4月に、クラウド事業本部の拡充を図るべく、ハイブリッドクラウド環境における構築、運用管理、保守までを可能にする同社戦略/ポートフォリオ「HP Converged Cloud」を発表した。この「HP Converged Cloud」では、オープンソースソフトウェア(OSS)のクラウド基盤「OpenStack」を取り入れた点も大きな特長となっているが、その狙いはどのようなところにあるのだろうか?同社のクラウドソリューション部 担当部長である真壁徹氏にお話を伺った。

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真壁 徹 氏

プリセールス統括本部 ソリューションセンター
クラウドソリューション部 担当部長
真壁 徹 氏

従来型IT基盤に加え、マネージドを含む3つのクラウドを展開

Question

まず、貴社のクラウド戦略の概要をお聞かせいただけますでしょうか?

Answer

日本ヒューレット・パッカード株式会社:真壁 徹 氏

弊社では「インフラストラクチャ」「ソフトウェア」「サービス」と、大きく分けて3つの事業を展開しており、それぞれ、ハードウェア、IT管理ソフトウェア、そして、顧客企業のITシステム/アプリケーションの構築・保守・運用などを主に手がけてきました。

 ただ、“クラウド”という分野においてはカバーすべき範囲が広く、顧客企業が求めるものも非常に多岐にわたります。それゆえ、従来から強みを持っているハードウェアやIT管理ソフトウェアを単に提供するだけではなく、今後はサービス分野へも更に力を入れていきつつ、うまく相乗効果を引き出し、統合ソリューションとして提供していかなければならない。そのためには、3つの事業を横断して取り組める組織が必要だと考え、昨年5月にクラウド事業本部を立ち上げたというわけです。

Question

その後、今年4月にはクラウド事業の拡充を発表されましたが、現在ではどのような方針のもとで、クラウド関連製品/ソリューションを提供しているのでしょうか?

Answer

まず、弊社では“万能のITプラットフォームはない”と考えています。ごく当たり前のことですが、1つの形態やサイズですべての企業のビジネス要求を満たすことは無理ですから、それぞれのビジネス課題に合わせたプラットフォームが必要でしょう。そこで、弊社ではトラディショナルと称していますが、従来型の単一プロジェクトで占有するIT基盤に加えて、プライベート、マネージド、パブリックという3つの形態のクラウドを展開しています。プライベートクラウド、パブリッククラウドに関しては説明不要だと思いますが、マネージドクラウドに関しては、2008年に買収したITアウトソーシングサービス企業(Electronic Data Systems=EDS)のノウハウを生かしており、“顧客企業の要求に沿った自由なカスタマイズが可能なクラウド”と位置づけています。

図1 万能なITプラットフォームは存在しない〜ビジネス課題にあわせて基盤を選択する時代
図1 万能なITプラットフォームは存在しない〜ビジネス課題にあわせて基盤を選択する時代
出典:日本ヒューレット・パッカード

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すべてのITプラットフォームを単一のアーキテクチャで統合

Question

こうしたIT基盤は個別に使うものであると同時に、組み合わせて利用するケースが増えているわけですよね?

Answer

日本ヒューレット・パッカード株式会社:真壁 徹 氏

そのとおりです。先ほどの4つのIT基盤すべてを提供するということだけでも、お客様には様々なメリットをもたらすことができますが、今後は更にそれらを統合していこうというビジョンを持っています。その柱となるのが、今年4月のクラウド事業拡充と同時に発表させていただいた「HP Converged Cloud(HPコンバージドクラウド)」という戦略/ポートフォリオで、パブリック、プライベート、マネージドという各々のクラウドサービスを既存のITと融合し、そうしたハイブリッドクラウド環境における構築・運用管理・保守を実現するものです。

 このビジョンにおいては、「confidence(信頼)」「consistency(整合性)」「choice(選択)」という3つの「C」をテーマとしており、“信頼される基盤”という意味では、局所的ではなく、データ、アプリケーション、インフラストラクチャを横断した運用とセキュリティ管理の実現を目指していますし、“サービス間の整合性”という面では、単一のアーキテクチャによる共通化を図りつつ、お客様の購買プロセスをシンプルにしたいという考えです。そして、その中でもお客様にとって最も重要なのは「choice」ではないでしょうか。ベンダ側が1つのソリューションだけを用意して、それだけをむやみに提案したり、自分にとって都合のいいものを押し付けるのではなく、幅広いプラットフォームを用意して、中立的な視点でお客様の課題に合わせた提案を行い、しかも自由に組み合わせて使っていただくということが大事だと思います。

Question

「HP Converged Cloud」とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?

Answer

従来型のトラディショナル、そして、パブリッククラウド、プライベートクラウド、マネージドクラウドという4つのITプラットフォームがあり、それらを相互につなぐためには、各々のプラットフォームの構成要素である「インフラストラクチャ」「アプリケーション」「インフォメーション」をそれぞれに統合しておく必要があります。最も下層のインフラストラクチャでは、サーバ、ストレージ、ネットワークなどを束ねて抽象化するためのレイヤーが必要ですし、その上のレイヤーでは、複数のITプラットフォームの監視・自動化といった統合管理を図ったり、同じセキュリティレベルを維持しなければなりません。また、最も上のレイヤーでは、それぞれのITプラットフォームで取り扱われる多様な構造化/非構造化データの管理や相互活用が求められるでしょう。

 「HP Converged Cloud」は、既に実績のある「HP Converged Infrastructure」に加えて、「HP Converged Management and Securityソフトウェア」「HP Converged Information」で構成され、それらが各々のレイヤーに対応していますが、更に、オープンソースソフトウェアであるOpenStackの技術を採用した点も大きな特長となっています。現時点では、OpenStackはパブリッククラウドのインフラストラクチャを抽象化する主要技術として採用していますが、今後は順次適用範囲を拡大していく予定で、プライベートクラウド、マネージドクラウドへOpenStackの要素や機能を取り込んだり、連携する機能を用意するといった製品展開を行っていきます。

図2 HP Converged CloudにおけるOpenStackの位置づけ
図2 HP Converged CloudにおけるOpenStackの位置づけ
出典:日本ヒューレット・パッカード

Question

OpenStackはクラウド基盤をオープンソースで実現するためのプロジェクトですよね?

Answer

最近、ネットワークの構成や機能をソフトウェアで定義できるSoftware-Defined Networkというものが注目を集めていますが、それになぞらえて、Software-Defined Datacenterを実現するものだと例えれば分かりやすいかもしれません。サーバやストレージ、ネットワークといったインフラストラクチャを抽象化し、ソフトウェアから扱えるような、つまり、プログラミングできるようなデータセンタを作ろうというのが、OpenStackの目的だととらえています。


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クラウド基盤にオープンソース技術、そして、OpenStackを選ぶ理由とは?

Question

今回、オープンソースソフトウェアを自社ソリューションのベースに採用したのはどういう狙いからなのでしょうか?

Answer

最も大きいのは、やはりベンダロックインの回避です。実際にクラウド基盤の提案を行っていても「ロックインされたくない」という言葉をよく聞く状況になっています。もちろん、ベンダの立場としては“尖った”ソリューションを開発して、それをお客様に役立てていただきたいという思いもあるのですが、それが行き過ぎてしまうと、どうしてもユーザを縛ってしまうということになりかねない。だからこそ、要所にオープンソース技術を取り入れることで、ベンダロックインに対する懸念を緩和することが必要だと判断したわけです。

Question

“尖った”という表現がありましたが、オープンソース技術の採用には大きなメリットがある一方で、やはり、他社製品に対する差別化が難しくなるという部分もあるのでしょうか?

Answer

ある意味では否定できないと思います。ただ、今回オープンソース技術を採用したのはインフラストラクチャを抽象化する部分ですから、その下のインフラストラクチャ、あるいは、より上位のレイヤーではまだまだ差別化ができるでしょう。逆に言えば、各々の部分で“尖った”製品を提供したとしても、オープンソース技術がそうした出っ張りや引っ込みをやわらげるクッションのような役割を果たし、いわば差分を吸収してくれますから、ベンダ側にとっても、ユーザにとっても、大きなメリットがあると考えています。

Question

クラウド基盤を実現するオープンソースソフトウェアは、ほかにもいくつか登場していますが、その中でもOpenStackを選んだのは、どういった理由からなのでしょうか?

Answer

日本ヒューレット・パッカード株式会社:真壁 徹 氏

OpenStackには、ハードウェアベンダだけではなく、ソフトウェアベンダなども含めて、既に100社以上の企業が参加している状況です。そうした様々なベンダが集って標準化を推進していますから、先ほどの“尖った”部分をやわらげるという点でも、より柔軟性の高いものになるだろうという思いがあります。また、そうした場においては、様々な分野の企業の考えや技術が交わるため、そこから化学反応が起きて、新しいイノベーションが起きるのではないかという期待も大きいですね。

Question

クラウド基盤の選択においては、どのような視点が必要だと考えますか?

Answer

クラウドの管理を行うための基盤というものは、ようやく市場に登場してきたばかりというレベルですし、ましてや、まだまだ成熟しているとは言い難い状況にあるかと思います。いずれにせよ、現時点で「使っているユーザが多いから」「参加ベンダが多いから」「優れた機能を備えているから」といった要素で判断するのは尚早でしょう。だからこそ、自社ではどういう点を重視するのかを判断基準にするのは当然ながら、それを中長期的なレンジでとらえるべきだと言えます。先ほどお話したように、OpenStackには多種多様なベンダが参加し、長い時間をかけて標準化していくというプロジェクトですから、そういう視点にフィットしているという印象はありますね。


●ありがとうございました。


取材協力

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サーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェア、ITサービスをはじめとするIT基盤の構築から、プリンティングやPCまで、多様な製品やサービスを通じ、企業・社会から個人の顧客まで、新しい可能性をもたらすテクノロジーソリューションを創造している。


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