持たないプライベートクラウドの進化を探る

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掲載日 2012/08/21

ザ・キーマンインタビュー 進化を続ける持たないプライベートクラウド

クラウドには様々な形態が存在するが、大企業においては以前から自社システムのプライベートクラウド移行を検討する割合が多く、更に最近では中堅中小企業でもプライベートクラウドへの関心が高まっているという。そして、その流れをいっそう現実的なものにするのが、“持たないプライベートクラウド”だ。プライベートクラウド市場の現状について、インターネットイニシアティブの喜多剛志氏、山田貴大氏にお話を伺った。

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山田 貴大 氏(左)、喜多 剛志 氏(右)

マーケティング本部
プロダクトマーケティング部 GIOマーケティング部
山田 貴大 氏

マーケティング本部
市場開発部 1課長
喜多 剛志 氏

プライベートクラウド導入に取り組む企業が直面する不満や悩み

Question

企業システムをプライベートクラウドへ移行させるという動きは、大企業を中心として検討や導入が進められてきた印象がありますが、現在はどのような状況だと見ていますか?

Answer

株式会社インターネットイニシアティブ:喜多 剛志 氏

【喜多】比較的大規模なシステムを持っている企業では、プライベートクラウドへの移行をまったく検討してこなかったということはほとんどないでしょうし、実際に導入を進めているところもかなり増えています。ただ、そうした企業の方のお話を伺っていると、導入検討段階にせよ、あるいは導入を済ませているにせよ、プライベートクラウドに関して何らかの不満を持っていて、今後どのように推進すべきかと悩んでいる場合が非常に多いですね。

 プライベートクラウドに対して期待するもともとのメリットを考えると意外に感じるかもしれませんが、現実には「初期投資が大きすぎる」「柔軟な運用ができない」といった課題を感じている企業が少なくないようです。まずは将来的なプライベートクラウドへの移行を見越して、その前に仮想化による統合を進められる場合も多いのですが、例えば100台のサーバを受け皿として用意し、もともと300台あったサーバのコンソリデーションを行ったとします。まずはこの時点で「結果的には80台で十分だった」などというかたちで無駄が生じ、思ったよりもコストがかかると感じてしまうことも少なからずあるようです。

 ただ、これはある意味でしかたないとも言えます。日本企業の場合、念のためという意識で、余裕を持ってシステム構築を行うことが多いため、こうしたことが起こりがちなのです。しかし、問題なのは、そこからいざプライベートクラウドのサーバを120台に拡張しようとしてもできない、つまり簡単には増やせない構成になっていたというケースです。これはどういうことかというと、完全にサイロ型の設計がされており、300台を100台にすることに最適化しているものの、拡張は考慮していなかったというわけです。先ほどのような余裕を持った設計とは逆に、決まった範囲にきっちりフィットするコスト感での設計が行われており、拡張に対応できないネットワーク機器やストレージを選んでしまったことが問題の原因です。そうすると、「クラウドなのに柔軟性がない」という一種ちぐはぐな印象を受けてしまいます。

Question

プライベートクラウドへの流れは間違いなく生じているものの、まだまだ課題が多いということでしょうか?

Answer

【喜多】クラウドへ移行させようという、そもそものきっかけは何かというと、やはりコスト削減です。そして、「企業での利用に適したプライベートクラウドというものが存在するのなら、自社でも取り組んでみよう」という意識だと思います。ただ、プライベートクラウドという“マジックボックス”があって、それを社内へ導入すればコスト削減が実現するわけではありません。セオリー通りに考えると、まず標準化を進めて、仮想化を展開し、そして、次にようやくプライベートクラウドへとたどり着くというのが一般的なステップと言えます。

 しかし実際には、サーバが乱立している状況で標準化を進めようとしても、なかなか難しく、ここでつまずいてしまう企業は少なくないのです。できる部分から標準化に取り組もうとしても、どの業務サーバから着手すべきかという議論が生じたり、社内調整も遅々として進まなかったりすることもあります。そこで、効率を高めるには標準化から取り組むべきといった大義名分はひとまず置いておく。つまり、最近では仮想化の基盤がかなり安定してきたこともあって、いわゆるベアメタル型(ホストOSを介さず、ハードウェア上で直接、仮想化ソフトウェアを動作させる)などを利用して、仮想化だけを先に進めてしまうアプローチをとる企業も出てきています。

 実現が困難なアプローチにこだわっていては、時間がかかるばかりで現実的ではないので、そこはシンプルな思考でいくということでしょう。しかも、仮想化だけでもインフラの運用はものすごく楽になりますから、情報システム部門のインフラ担当エンジニアを中心に、もたらされるメリットは十分に大きいと言えます。


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そもそも、プライベートクラウドの定義とは?

Question

そういう状況の中で、自社で所有するオンプレミスではなく、そのほかの形態のプライベートクラウドも含めて、幅広く検討を行う企業が増えているという印象は感じられるでしょうか?

Answer

【喜多】そもそも、何をもってプライベートクラウドと定義するのかというのは難しい面もありますが、「自分たちで資産を所有する」「自社データセンタであること」などという説明は必ずしも当てはまりません。自社のポリシーをきちんと守れて閉じた環境であり、それらを適用可能な空間が、プライベートクラウドと呼ばれるべきものだと思います。

 ただ、そうした“閉じた空間”という定義は共通だとしても、大企業と中堅・中小では同じ流れで動いているわけではなく、ポリシーに対する意識も少し違ってきます。予算規模が異なるということもありますが、大企業などではリソースに関しても“心理的な理由”でなるべく自前で持っておきたいというところはまだまだ多いですし、一方で中堅・中小では、ポリシーとして明確に閉じられているのであれば、コストや柔軟性、スピード感などとの兼ね合いで、リソースなどは共有でもかまわないと判断する場合もあるでしょう。

Question

つまり、ホステッドのようなかたちでプライベートクラウドを利用したいという意識が、中堅・中小企業を中心に高まっているということでしょうか?

Answer

【喜多】もちろん、先ほどのような傾向は必ずしもすべての企業に当てはまる話ではなく、大企業でも持たないほうがいいと考えている場合もありますし、逆も然りです。実際、弊社が提供しているクラウドサービス「IIJ GIO」は大企業での利用が少なくありません。その理由としては、もともと弊社はエンタープライズを主なターゲットとして各種ソリューションを提供していますし、「IIJ GIO」に関しても、インターネット経由を前提としたものではなく、企業の閉域網であるWAN/LANと直結した利用を可能にしています。これはスタート時からのコンセプトなのです。

 もちろん、標準サービスに含まれているのは、あくまでもインターネット経由での接続で、上記のような閉域網での利用は追加サービスという位置づけとなるわけですが、クラウドを“閉じた空間”で構築できるなら、追加費用を払ってでも利用したいという顧客企業の割合が、規模を問わずに非常に伸びてきています。特に、大手製造業や金融業のお客様が本番環境として利用するというケースでは、ほぼ100%の企業がそうした使い方を選択されています。

株式会社インターネットイニシアティブ:山田 貴大 氏  【山田】同時に、中堅・中小規模の企業において、ホステッド・プライベートクラウドへの期待が特に大きいとも言えます。予算や情報システム部門の人員という点で、通常のオンプレミスでのプライベートクラウド構築はハードルがかなり高くなってしまいますから。これまでは着手することさえなかなか難しかったものの、ようやく、こうしたサービスによってプライベートクラウドが現実的な選択肢として検討できる段階になっており、それを受けて、実際のニーズとしても高まってきていると感じます。


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“持たないプライベートクラウド”でも自社独自の要件を満たしたいという要望が高まっている

Question

ホステッド・プライベートクラウドに対しては、どのような要件が求められることが多いのでしょうか?

Answer

株式会社インターネットイニシアティブ:喜多 剛志 氏

【喜多】弊社も“持たないプライベートクラウド”というキーワードでサービスの充実を徐々に図ってきていますが、本当に注目されるようになったのは2010年あたりからで、これから更に浸透していく段階だと感じています。「IIJ GIO」は2011年度末までに1100以上のシステムに導入されていますが、パブリックだけでなく、社内システムを構築するためのプライベートクラウド基盤として活用される傾向が顕著になってきています。

 ただ、昨年あたりから、専用線をつなぐだけでは十分ではなく、自社独自の要件を満たせるような形態を望まれる企業が増えてきており、それに応えるべく、先日、「IIJ GIO仮想化プラットフォーム VWシリーズ」をリリースしました。これは従来から提供してきた仮想サーバや専有サーバを利用いただくサービスではなく、仮想化プラットフォームそのものを提供します。お客様は仮想基盤上の仮想マシンの構築から行えるようになり、更にOSやアプリケーションの自由な設計・導入が可能になります。これによって業務環境や要件に合ったシステムを「IIJ GIO」のクラウド上に構築できるというわけです。

Question

閉じた環境での運用を実現した上で、更に企業が個別に持っている様々な要求を満たすことが望まれているということでしょうか?

Answer

【喜多】そのとおりです。以前から複数のOS選択やアドオンメニューを用意し、サービスのカバレッジを広げる取り組みは積極的に行っていましたが、当然ながら、すべての要望に対応できるわけではありません。メジャーなOSに関してもバージョンや種別を含めると無数に存在します。そのため、ニッチな要望もカバーし、お客様が本当に自由に使えるように、なるべく低レイヤーで、かつ柔軟性を高めたサービスで応える必要があります。今回の「IIJ GIO仮想化プラットフォーム VWシリーズ」はそういったニーズをターゲットにしたものです。自社で構築するプライベートクラウドと同様に、自分たちで物理リソースから仮想マシンを自由に作成し、それらを様々な業務やサービスに利用できるものになっています。

 【山田】日本では自社のシステム構築に関して、わりと細かな要望や課題を持たれているお客様も多いので、それに対してどのように仮想化プラットフォームを提供すべきかいろいろと検討しました。やはり、決められたスペックを押し付けても、うまくニーズに合致しないだろうし、そうであれば、いっそのこと、基盤そのものを提供しようという流れになったわけです。そして、今後も更に、本サービスの適応範囲は広がっていくと思われます。

 例えば、今回のサービスはエンタープライズシステムをメインターゲットとしていますが、SAP(Social Application Provider)と呼ばれている、ソーシャルアプリの開発・提供を行う企業などでも利用したいという要望が出てきています。具体的には、仮想サーバのコントロールに関して運用性の高さを求める一方で、超大規模なネットワーク構築や、1ミリセカンドの遅延も許したくないというネットワークの迅速性を求められる場合もあります。「IIJ GIO」では、エンタープライズシステムだけでなく大規模サイト・高負荷サイトなどの公開サイトに求められる様々な要求も満たせるよう、多彩なメニューやアドオンを用意しています。今後も既存モデルにとらわれることなくニーズを汲み取り、様々なサービス形態や拡張機能などを提供していかなければならないと考えています。


●ありがとうございました。


取材協力

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1992年、インターネットの商用化を目的とした会社として設立。インターネット接続事業で培った技術をベースに、メール、セキュリティなどのアウトソーシングサービス、ネットワーク構築からシステムインテグレーション、運用に至るまで、あらゆるニーズに応えるサービスを総合的に提供している。


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