企業SNSが情報共有/発信を“柔らかく”する

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掲載日 2012/07/31

ザ・キーマンインタビュー 

“ソーシャル”の考え方を導入することで、社内外のコミュニケーション/コラボレーション環境を整備し、組織の生産性を向上させたい。そういう要求を実現するためのソリューションやサービスも既に登場しているが、実際のところ、既存のグループウェアとはどのような点が異なり、どう使い分けるべきなのか。日本アイ・ビー・エムのコラボレーション・ソリューション・スペシャリスト 大川宗之氏にお話を伺った。

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大川 宗之 氏

ソフトウェア事業 IBM Collaboration Solutions事業戦略部
コラボレーション・ソリューション・スペシャリスト
大川 宗之 氏

ビジネスに有効なアイデアを、社員の頭の中から“引き出す”ための仕組みとは?

Question

ビジネスを進めていく上で、コミュニケーション、情報共有、そして、コラボレーションというものは欠かせない存在になっているかと思いますが、その現状についてはどのようにとらえていますか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:大川 宗之 氏

コミュニケーションに関しては、これまでは日本もうまくやってこられたかと思います。皆が同じ目標を共有し、それに向かって、1ヵ所に集まって、いっせいに働くという環境でよかったからです。しかし、現在はグローバル化、あるいはダイバーシティといった波が押し寄せている状況ですから、今後はコミュニケーションに関して様々な問題が表面化してくるのではないでしょうか。

 一方、情報共有については、日本では従来もあまりうまく機能していなかったと考えますが、コミュニケーションに支えられていたという印象があります。ただ、コミュニケーションが立ち行かなくなると、そうした既存の課題も含めて、問題が深刻化していくのではないかと思います。

 また、コラボレーションは、コミュニケーションと情報共有の組み合わせの上で、業務や情報を回していくことで実現されるものととらえていますので、これも同様の状況と言えるでしょう。

Question

特に情報共有という部分では、どのような問題があると言えるのでしょうか?

Answer

1つは、どこにどういう情報があるのかが分かりにくいということでしょう。もちろん、検索システムを用意したり、ポータルに新着情報などというかたちで表示させるといった解決策で対処されている場合もあります。しかし、いかに優秀な検索エンジンであろうとも、大量のデータが提示されるだけでは、どれが本当に自分にとって必要な情報なのかは分からない。ポータルについても、個々のニッチな要件に応えてくれなければ、あまり有効とは言えないでしょう。

 いずれにせよ、こうしたシステム側でなんとか対処しよう、あるいは管理者が隅々まで目を行き届かせて、皆に必要な情報を届けられるように頑張ろうという発想では限界があります。ですから、エンドユーザが各々にコミュニケーションや情報共有の活性化に貢献できるような仕組みを作るなどして、社員の個々の力をもっと活用すべきだという流れになっているのだと思います。

Question

そうした問題を解決していくためには、既存の基盤やツールを発展させていくのか、それとも、全く違う観点から見直していくべきなのでしょうか?

Answer

やはり、両方のアプローチが必要でしょう。メールやグループウェアといった既存のツールでも特にコミュニケーション部分に関しては十分に機能してくれるのですが、問題点の1つとして、「そもそも情報がアップされにくい」ということがあると思います。例えば、社員全体から見れば2割程度の人が頻繁に情報をアップしていて、あとの残りは見ているだけ、あるいは見もしないというケースも多い。

 また、これは割合の問題ではなく、いわゆる声の大きい積極的な社員だけではなく、本当はいいアイデアを持っているのに、「自分の意見などはたいしたものではなく、ディスカッションやフォーラムの場で披露するほどではない」と勝手に思い込んでいる人たちの知識や思いを表面化させる必要があるのではないでしょうか。そういう人たちの頭の中に、非常にビジネスに有効なアイデアが隠れているケースも少なくないのですから。それをうまく引き出して、「それはいいね」「こういう視点の考え方もあるよ」といったやりとりを気軽に行えるような、活性化のアプローチが求められていると思います。


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ビジネス向けソーシャル・ソフトウェアと既存のグループウェアとの違い

Question

貴社では既に代表的なグループウェア製品である「Lotus Notes/Domino」に加えて、ビジネス向けソーシャル・ソフトウェア「IBM Connections」を提供されていますが、双方の違いはどこにあると言えるのでしょうか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:大川 宗之 氏

まず1つが、情報共有の範囲、そして、その柔軟性です。グループウェアでは、まず情報共有をしたいという人がいて、それに対して器を用意する、共有の場を設けていくという考え方になります。そのため、情報共有の範囲は基本的には組織単位であったり、タスクチームの範囲になるでしょう。しかし、ソーシャル・ソフトウェアではご存じのとおり、何か目的意識がなくとも、互いの仕事やスキル、行動などに興味を持つことで1人ひとりがつながり合い、特に場を設けなくても情報共有がなされていきます。われわれはピープルセントリックと称していますが、目的が中心ではなく、人が中心ということですね。

 もともとグループウェアとして作られたLotus Notes/Dominoなどでは、こうしたアプローチがなかなか難しい。ソーシャル・ソフトウェアのような“フォロー”の関係というものを作れなくはないのですが、おそらく、かなり無理のある実装になってしまうでしょう。ソーシャル・ソフトウェアで実現されているつながりというのは、固定されたものではなく、クラスタなどとも称されますが、なんとなく嗜好の近い人たちがまとまっていて、しかも、複雑に重なり合っています。こうした環境のもとでは、情報共有のスピードが速く、人と人とのつながりを通じて、注目度の高い情報が効果的に拡散されていくという特長があります。

 そして、もう1つは、情報共有範囲が異なることから情報発信の心理的ハードルに高低が生じるということです。ソーシャル・ソフトウェアでは、組織に紐付いた場に参加して意見を述べる時のようなプレッシャーがあまりなく、自分の考えていることを流しやすいという、ハードルの低さがあると言えるでしょう。ただし、単純にハードルが低いから優れているということではなく、ハードルが高ければ、公共性が高く、皆にとって良質な情報がアップされるという利点もあります。一方、ハードルが低ければ、不完全な情報も載ってしまうかもしれませんが、その中には特定の人にとって必要な情報や、アイデアの種になるような情報も存在する可能性があります。

図1 情報の持ち方の違い
図1 情報の持ち方の違い
出典:2012年 日本アイ・ビー・エム

Question

つまり、どちらか片方があればいいというものではなく、必要に応じて使い分けるべきということでしょうか?

Answer

そうですね。言い換えれば、使われるフェーズが違うということです。仕事のライフサイクルというものを考えた場合、経営者や管理職、あるいは一般社員など、誰かの中に芽生えた目的やアイデア、あるいは解決すべき課題といった「思いを共有する」ことから始まり、それを「コミュニケーション」によってブレイクダウンしつつ、実際に「仕事として回す」、その中で「定型化した情報共有を、ロジックで自動化していく」という、4つのフェーズを確立すれば、効率的に進められます。そして、前の2つのフェーズをカバーするのがソーシャル・ソフトウェアであり、残りの2つはグループウェアの役割だということです。

 また、利用するタイミングという観点で見れば、従来のグループウェアは、情報共有する人やグループが決まってから使われるものでしょう。それに対してソーシャル・ソフトウェアは、その前の情報共有する人やグループを集めるところをサポートし、どこにどんな人がいるのかを可視化しつつ、人と人をつなげ、アドホックな情報共有を支援していきます。その後、チームでの業務をより効率的に行うために、グループウェアへの利用へとシームレスに流れていくというわけです。

図2 利用するタイミングの違い
図2 利用するタイミングの違い
出典:2012年 日本アイ・ビー・エム

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ソーシャル・ソフトウェアのROIをどう見るか、どう見せるかが普及のカギに

Question

今後、ビジネス向けソーシャル・ソフトウェアがより広く浸透していくためには、どのような条件が整うことが必要だと言えるでしょうか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:大川 宗之 氏

企業として実現すべき事柄があり、それをサポートするための道具として浸透していくという点では、冒頭に述べたようなグローバリゼーションの流れが1つのきっかけになるでしょう。ただ、すべての企業がグローバル化していくわけではないですし、一般的には、日常業務においてグループウェアでは解決できない問題が表面化し、それを解決するための手段としてソーシャル・ソフトウェアを導入するというアプローチが多くなるかと思います。

 そして、その際に問題となりうるのが、ソーシャル・ソフトウェアのROI(投資利益率)をどう見るかということです。現状では直接的なROI、つまり、年間売上がいくら向上するかという数字などを算出できるわけではなく、いわば、「風が吹けば桶屋が儲かる」に近いロジックになってしまいますから。

 例えば、営業部門にソーシャル・ソフトウェアを導入したら、コミュニケーションや情報共有が活性化し、情報収集や提案資料作成にかかる時間も短縮できるので、その分、顧客先に訪問できる回数や時間が増える。結果として、営業提案の勝率が上がって、売り上げが向上するという可能性は提示できます。しかし、そんなロジックだけを受け入れて、導入を決断していただける企業は決して多くないでしょう。ですから製品側としても、完全なROIは提示できなくとも、まずは情報発信の活性化状況など、ツールの効果を数字としてとらえられるような機能を用意するといった工夫は必要だと感じています。


●ありがとうございました。


取材協力

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企業や公的機関などの顧客向けに、「ハードウェア(システム&テクノロジー)」「ソフトウェア」「サービス」を中心としたビジネスを展開。約40万人の社員が世界170ヵ国の顧客に製品やサービスを提供し、7ヵ国9ヵ所の研究所では科学者や研究者が最先端の技術研究・開発に取り組んでいる。


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