“企業ソーシャル”に欠けていた要素とは?

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掲載日 2012/07/03

ザ・キーマンインタビュー 企業ソーシャルに欠けていた要素とは?

エンタープライズ・ソーシャル、企業ソーシャルといった言葉が意味するところは多岐にわたる。その中でも注目されているのは、「顧客・消費者との関係構築」、そして、「企業内外での情報共有・情報活用」といった用途だが、現在はどのような利用状況にあり、そして、どのような課題に直面しているのか。野村総合研究所の亀津敦氏にお話を伺った。

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亀津 敦 氏

情報技術本部 イノベーション開発部
上級研究員
亀津 敦 氏

Facebookの急速な普及で、経営層も“ソーシャル”の利用価値を実感しつつある

Question

エンタープライズ・ソーシャルといった言葉が意味するところは非常に多岐にわたると思いますが、まず、広く「企業内における情報共有・情報活用」というものを考えた場合、現在はどのような状況にあると言えるでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:亀津 敦 氏

企業内の新しいコミュニケーションとして、いわゆるソーシャルメディアのような手段を活用しようというのは、特に新しい話ではなく、ブログが流行した2004年頃から取り沙汰されていました。企業向けブログなどを企業でも活用することで、企業の情報発信の速度や量を向上させたり、水平的なコミュニケーションを円滑化していこうという意識そのものは、当時からあったわけです。ただ、実際に多くの企業で使われるまでに至ったかというと、ご存じのとおり、そうでもない。その後に登場した企業向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)製品などへの期待や反応も同様と言えるでしょう。

 では、そうした当時と比べて、現在の状況はどこが違うのか。これはやはり、TwitterやFacebookなどの急速な普及により、ソーシャル的なサービスそのものの先進性や利用価値を、多くの人々が本当に身近なものとして実感しているという点ではないでしょうか。特に経営層に属するような方々は、本来はこういった部類のものに対して、少なくとも「自分が利用する」ということに関しては距離を置く傾向があったかと思うのですが、TwitterやFacebookなどでは若干状況が異なっていますよね。

Question

企業向けに提供されている製品よりも、むしろ、パブリックなSNSのほうに魅力を感じてしまうということでしょうか?

Answer

野村総合研究所では、かなり以前から「産消逆転」という言葉を使っていますが、すなわち、これは産業と消費者の新技術受容に対するスピード感が逆転している現象です。従来はITにおける新技術、あるいは機能向上などは、まず企業向けの製品やサービスに用いられることが多く、コストが下がっていくことで一般消費者向けにも取り込まれていくという流れがありました。しかし、最近では既に皆さんもお気づきだと思いますが、これがどうも逆転している。とりわけ、ネットワーク関連機器やモバイルデバイス、そして、ネットワークサービスなどにおいて、こうした動きが顕著になっています。

 コンシューマ分野で革新的な技術が生まれ、そして、消費者に揉まれながら育つことで、かなりの勢いで進化を遂げていく。そして、それが逆に企業へと流れ込むというのが、もはや一般的な図式になりつつあります。Googleなどが様々なベータサービスを展開し、大規模な消費者層にテスト利用してもらうことで、製品としての完成度を高め、それを企業向けサービスとしてリリースするというのは、その典型的なパターンと言えるでしょう。同様に、パブリックなSNSは圧倒的なスピードで新しい機能を開発・投入しています。企業向けSNS製品などは何年も前から存在していたのは確かですが、成熟度という点で見劣りしてしまうのもしかたがない状況と言えるのではないでしょうか。

Question

そうすると、パブリックなSNSをそのまま社員同士のコミュニケーションツールとして活用したいと考える企業が増えていくような状況と言えるのでしょうか?

Answer

いいえ。例えば、Facebookなどを企業の社員どうしのコラボレーションで使うというのは、私は「ない」と思っています。やはり、あくまでもパブリックな場所だと認識すべきであり、いくらプライベートなグループやコミュニティを作って、その中でやりとりしていたとしても、操作ミスによる情報漏洩など、何らかの問題が生じる可能性は拭えないでしょう。組織的な管理を行えるわけではなく、どうしても各人の判断に任せた利用となってしまいますから。

 パブリックなSNSでのコラボレーションについては、これまでにない迅速かつ柔軟なコミュニケーションの方法として参考にするにとどめ、従業員やパートナー企業の人々とのコラボレーションを行う場所としては、やはり企業ユースに特化したコラボレーションツールを使っていくべきだと考えます。


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消費者との関係構築においては、“より深く”“違和感のない”活用スタイルへ

Question

一方で、企業と消費者の関係構築におけるソーシャルメディア活用はますます活発化しているという状況でしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:亀津 敦 氏

TwitterやFacebookなどのパブリックなSNSを、企業がPR情報などを流布していく場として活用するという取り組みに関しては、昨年の半ばくらいまでにほぼ確立されています。次のフェーズでは、単に情報を流したり広めたりという場所から、消費者とより深い関係を構築したり、企業のサービスへ誘導する場所として使われるという役割に変わっていくと思われます。

 その際、Twitterか、それともFacebookかという議論もあるかと思いますが、結局は使い分けということだと考えます。Twitterは情報伝達の速度が異常に速く、自律的に広がっていくネットワークと言えるでしょう。しかし、逆に中心性は欠如しています。それに対してFacebookは関係性をかなり重視したもの。しかも、基本的に実名性です。だから、関係を深めたり、重要視するという点では、“表面的”にはTwitterは企業がコミットメントしづらく、Facebookは活用しやすいと言えるのも確かです。

Question

Facebookなどをユーザとの深い関係を構築していく場として活用するためには、具体的にはどういう取り組みが必要になるのでしょうか?

Answer

いわゆる“中の人が頑張る”というアプローチで、担当者のパーソナリティに頼ったり、勘と経験だけに頼るというのは無理があるでしょう。だからこそ、システム化していくという方向に変わってきています。つまり、様々な外部アプリケーションからAPI経由で、情報を取得・分析したり、それをもとに何らかのタスクを実行させる。更には、逆に自動的につぶやいたり、メッセージを配信させる。そうしたオープン性を有しているというのは、Twitterでも、Facebookでも、共通の大きな特長になっていますから。

 いわゆるソーシャルCRMの分野でも、こうしたシステム連携は重要な要素になっています。昔ながらのSNS活用というと、せいぜい広告表示であったり、コミュニティを立ち上げて自社の製品に対して議論してもらおうという、ユーザには近づきつつも、何か現実のビジネスプロセスとは乖離したような印象があったかと思います。しかし現在では、企業がビジネスプロセスとソーシャルメディアが密接に関係した仕組みを構築することで、日常の生活行動の中に違和感なくサービスが溶け込み、ユーザや消費者の利便性を高めるよう働くといったような、実効性を持った活用のかたちが増えつつあります。

 そして、これは企業ソーシャルにも当てはまることではないかと考えます。まだ、そうした情報共有基盤を採用している企業は多くないですし、今後普及していくということが前提にはなりますが、もし発展を遂げていったとしたら、コラボレーションの場に人間だけじゃない、ほかの業務システムからのインプットであったり、あるいは、インタラクションを誘うようなインテリジェンスといった部分が参加してくることが、より重要視されていくでしょう。逆に言えば、そういう仕組みに対応できるソリューションでなければ、やはりFacebookなどに太刀打ちできないですし、企業ソーシャルの導入メリットや魅力はあまり出てこないと思います。


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道具そのものよりも、どういう使い方が組織の生産性向上につながるのかということに注視

Question

企業ソーシャルというものを広めていこうとするなら、ユーザ企業だけではなく、ベンダ側の努力も必要ということになるでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:亀津 敦 氏

現在、多くの企業がコラボレーション環境を見直すべきだと考えています。その背景としては、やはり、ビジネスが大きく変化しているという外部条件が1つありますよね。グローバル化への対応をどうするか、あるいは、厳しい競争で生き残るためにいかに生産性を上げていくか。更に、統廃合などで企業の組織形態も変わっていくし、新たな企業とのパートナー体制を構築していく必要もあるかもしれない。そうした状況においては、とにかく社内やパートナー企業にコラボレーションツールを配って全員で使おうというかたちではなく、本当の意味での“新しい働き方”を追求していかないと、素早い世の中の変化についていけないという事実があります。

 つまり、本質的に何らかの道具があればいいという話ではなく、どういう使い方が組織として生産性を上げていくことにつながるのかというほうに、製品を提供する側も目を向けるべきだと思います。更に、先ほどから述べているように、新たな利便性を実感させるような、Facebookやスマートデバイスなどが個人の生活の場では広まっているので、「こういうことができれば、これに近い使い方ができれば、企業でのコミュニケーションやコラボレーションももっとよくなるはずだ」という提案をしていかないと、ユーザに受け入れられにくくなっているのではないでしょうか。

 いずれにせよ、企業のコラボレーション環境は、形態としてはクラウドを使ったものへ既に変わってきているかと思いますが、それに加えて、従来のようにIT部門がシステム的な視点で導入を図って、厳密に管理をして、「さあ、使って下さい」という図式だけではないものを、模索し始めているのではないかと思います。いわゆる、シーズ発想というか、作り手側の発想ではない方向に向かっていると感じますね。


●ありがとうございました。


取材協力

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流通や金融など各産業分野の研究、消費者動向調査、未来予測などを行い、その成果を広く社会に発信。予測、分析、政策提言などによって問題発見から解決策を導くまでの「ナビゲーション」と、その解決策を業務改革やシステムの設計、構築、運用によって実現する「ソリューション」を相乗的に機能させることを軸に、「未来創発」に取り組んでいる。


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