クラウド活用でコスト削減を図るコツとは?

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掲載日 2012/05/22

ザ・キーマンインタビュー IaaS・PaaSでも効果あり!クラウド活用でコスト削減を図るコツ

クラウドはコスト削減の手段としてとらえられる場合も多いが、単純にオンプレミスからクラウドへと移行すれば、それだけでトータルコスト削減が見込めると言えるわけではないだろう。実際にどれほどのコスト削減が見込めるのか?コスト削減効果をより高めるためには?SaaSからPaaS、HaaS/IaaSまで、幅広い形態のクラウドサービスを扱うインターネットイニシアティブの喜多剛志氏にお話を伺った。

株式会社インターネットイニシアティブ 企業サイトへ

喜多 剛志 氏

マーケティング本部 市場開発部 1課長
喜多 剛志 氏

リソースプールや配線が“まとまる”ことによるコスト削減効果

Question

ITシステムをオンプレミスからクラウドへと移行しようという企業では、やはりコスト削減を目的とする場合が多いのでしょうか?

Answer

SaaSにせよ、IaaS、PaaSにせよ、クラウド導入を検討する理由として、やはり大きいのはコストだと思います。逆に言えば、コストを上げてまでクラウドを利用しようという企業はほぼないでしょう。ただ、「100%コストです」とは言い切れないのも確かです。昨年の震災の影響もあり、バックアップ、あるいはDR/BCPといった見地で、改めてクラウドに目を向ける企業が増えていますが、企業側からすれば新たな投資にあたり、コスト削減とは別のテーマでのクラウド検討ということになるでしょう。とはいえ、これらも大きな視点で見れば、起こりうるリスクを回避する保険をかけつつ、効率的にIT運用を行うというコストマネージメントの一環ともなります。クラウドは企業においてコストの問題を解決しうる手段と考えてよいかと思います。

Question

SaaSの場合はコスト削減を直接的にイメージしやすいかもしれませんが、IaaS、PaaSでも同様と言えますでしょうか?

Answer

株式会社インターネットイニシアティブ:喜多 剛志 氏

SaaSではいわば上層にあたるアプリケーションまでカバーするので、例えば、現在必要な数だけのライセンスを利用する、バージョンアップ時の負担を軽減できるといったコスト削減効果を得られると言えます。それでは、インフラ提供をサービスの主軸とし、そこで稼働するアプリケーションなどは自由に導入いただくというIaaSやPaaSでは、どれほどのコスト削減が可能なのか。これはサービス事業者側から見ると、いかにバリューを返せるかという意味になりますが、まず分かりやすいのは、リソースプールが大規模に“まとまる”ことによる効果があるかと思います。

 例えば、弊社のクラウド関連の今年度の売り上げは、昨年度と比較して5倍以上と急速に成長していますが、リソースプールは1桁単位で拡張しています。サーバ台数で言えば、千台規模だったものが既に万単位にまで成長しています。まとまった調達を行えば、いわゆるバイイングパワーが発揮され、運用の効率化も図れます。それらを低価格なサービス利用料金体系で、お客様にお返しできるということです。

 また、地味な部分で見逃しがちなのですが、データセンタでお客様ごとにラック設計を行っている場合などには、配線だけでもかなりのボリュームになってしまいます。お客様個別で配線した場合、一括で配線する場合よりも数十倍の長さとなるケースも少なくありません。このように一括で配線を行うことにより、データセンタとしてのコストを低減することができます。ITインフラをハードウェアではなく、サーバリソースという形態で効率的に提供するIaaSやPaaSでは、こうした配線や電気系統などもサービス提供側で最大限に効率化を図ることが可能なため、1コアあたりの価格で見ればよりリーズナブルになり、今後も更にコスト効果が高まっていくのではないかと思います。

 もちろん、単純に現状利用しているサーバを安価なサーバリソースへ置き換えればコスト削減が図れるという話ではありません。より効果的にコスト削減を図るためには、自社のITシステム全体を視野に入れて、効率のよい投資判断を行うことも必要でしょう。

Question

一般的にどの程度のコスト削減が図れるのかというのは難しい質問かと思いますが、実例として、大きなコスト削減を実現した例などがありましたら、お教えいただけますか?

Answer

複数の拠点を持つ製造業の企業がコンソリデーションを図りたいという要望があり、自社ビル内に大規模なデータセンタを設けて、社内の全システムを集約させたプライベートクラウドを構築するプランと、われわれのクラウドサービスを利用してITインフラをそのままアウトソーシングするというアプローチを比較したところ、コスト削減効果は3分の1、あるいは4分の1にまでなったという実例もあります。もちろん、ネットワークの見直しや無駄な拠点(ラックスペース)の統廃合なども含めて提案することで、これほどのコスト削減効果が実現できたという部分もありますが、エンタープライズシステムの案件ではクラウド移行によって従来の半分程度までコスト削減が図れたというのは、めずらしいわけではありません。


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クラウドへ移行してもコスト削減が見込めないケースとは

Question

IaaSやPaaSを利用する場合は、やはり既存のオンプレミスで運用しているシステムを、そのまま移行するというかたちが多いのでしょうか?

Answer

そうですね。なるべく従来の環境をそのまま移行するという形態がポピュラーです。サービス提供側としても既存のインフラ構成を変更せずに移行できるような環境を実現できるよう、シンプルなアプローチをとっています。企業側の負荷が最も高まるのがアプリケーションの変更や業務変更で、ここにテコ入れされているケースもありますが、そこまでの投資ができないケースも多くあると思います。その際に今までの構成をなるべく変えさせないという配慮が必要になります。

Question

SaaSとはアプリケーションをサービスとして提供するものなので、導入検討も比較的しやすいかと思うのですが、IaaSやPaaSの場合は極端に言えば何でも利用できるため、既存のどのシステムを移行させるのかという判断もしづらいのではないでしょうか?

Answer

株式会社インターネットイニシアティブ:喜多 剛志 氏

クラウド導入を積極的にお薦めできないという場面も当然あります。クラウドは万能薬ではなく、フィットしないケースも十分にありえます。例えば、最初の一度だけシステムに投資すれば、10年間などの長い期間、あるいは完全に壊れるまで使い続けられるような場合です。これはおそらく、そのまま使い続けたほうがコスト効率は高いでしょうから、われわれとしてもお薦めしません。

 また、中堅中小規模の企業などでは、どれをクラウド化したいのかをお聞きすると、「ここにあるサーバ」と足元にあるPCサーバを指差されるような場合もあります。このケースは電気代、場所代、運用人件費などがまったく可視化できていないケースですが、こうしたお客様をクラウドにご案内することも困難です。もちろん、コスト以外の部分で、クラウドの拡張性、機能性を生かして自社の競争力や経営体質を強化しよう、信頼性を高めるためにプロに任せよう、あるいは企業内全体のITシステムの効率化や、ITガバナンスの強化を図りたいといった意識があればよいのですが、こういったケースで単にコスト削減を狙うだけであれば、クラウドへ移行してもあまり効果は見込めない、もしくは適切な効果測定ができない可能性が高いです。

Question

一定以上の企業規模でなければコスト削減などの効果は見込めないということもありますでしょうか?

Answer

企業の規模、あるいは業種に関しては、あまり因果関係がないという印象を持っています。われわれもユーザ分析を定期的に実施していますが、傾向としては、規模の大きな企業ほど大幅なコスト削減を実現しているというわけではありません。企業の規模よりもむしろ、主要なシステムを柔軟に外へ出せるポリシーへと切り替えられるかどうかのほうが、おそらく重要ではないでしょうか。一般論として、情報系システムは出しやすい、基幹系は出しにくいという傾向も確かにありますが、そこに絶対的な指針があるわけではないと思います。企業の姿勢として、外に出せる可能性があるものはなるべく外に出す努力をし、それによって、企業体として強化を図ったり、コスト効率を高めるためのチャレンジをしていく。そういうことを考えなければいけない時代になっていると感じています。


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「手始めに情報系から」という導入検討は、必ずしも正解とは言えない

Question

クラウドの導入を進めている企業では、どのような形態から始めるケースが多いのでしょうか?

Answer

株式会社インターネットイニシアティブ:喜多 剛志 氏

最も一般的なシナリオは、まず情報系と呼ばれるメールやグループウェア、ファイルサーバなどから着手するアプローチです。こうしたシステムではリモートアクセスやモバイル機器への対応も必要になっていますし、必ずしも企業内に閉じておかなければならないということもありません。そういった意味では出しやすい部分と言えるでしょう。部分移行も比較的しやすいところのため、実際にここから検討するという企業も多いです。

 以前、弊社のコンサルティングチームと話した際、現状の日本企業の傾向は、いわゆる「小島型のクラウド化」という表現をしている者がいました。つまり、「とりあえず、この部分だけ出してみましょうか」というふうに、局所的なクラウド化を行うケースが多いのです。しかし、本来は重要度の低いものから高いものまで、システム全体をとらえて、一定の統合基盤として切り出すほうがずっと効率的なはずです。局所的な範囲だけでとどまってしまうと、会社全体のシステムの中では重要度は高くないのに、それに見合わない投資を費やしたという結論にもなりかねないでしょう。

Question

先ほどおっしゃられたように、情報系は出しやすいといった一般論だけで判断するのではなく、より大きな視野で自社のシステムをとらえて、なるべく包括的に検討すべきということでしょうか?

Answer

例えば、企業が本当に困っている部分を解決できるという観点で見れば、ファイルサーバのバックアップなどのほうが実は適合性が高いかもしれません。コストや運用負荷の軽減を目的に、重要なファイルサーバのバックアップ先としてクラウドを利用するという流れも実際に出てきています。そして、最初はバックアップ用途だけで“クラウドに入った”企業が、日常的に運用しているうちに速度や信頼性の部分でもまったく問題ないと感じると、次は本番のストレージもクラウドに移行しようかという判断を下すのはごく自然な流れと言えるでしょう。更に本番ファイルサーバがクラウドに置かれるようになれば、それをマウントしているグループウェアやそのほかの業務システムなども移行したほうが何かと都合がいいと考える。そうしてサーバを次々に移行していき、いわゆる裏側の仕組みはすべてクラウドへ移ってしまい、ふと何が残っているのかを考えると公開Webサーバだけだったという、いわば“逆”の順番をたどるケースもあります。

 いずれにせよ、どれが王道かというのは難しいと言えます。どの部分が出しやすいかというのも判断材料の1つにはなりますが、それに加えて、自社においては何をクラウド移行すれば最も効果的なのかをしっかりと考え、そこから始めるということが重要でしょう。どこから入っても、最終的には全体のシステムへと広げられるような体制も整っています。更に言えば、仮想デスクトップと呼ばれるクライアント側のクラウド化も普及の兆しを見せています。2〜3年後にはお客様側のITリソースがほぼない、いわゆる“フルアウトソース”を最終的に実現する企業も出てくるのではないでしょうか。


●ありがとうございました。


取材協力

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1992年、インターネットの商用化を目的とした会社として設立。インターネット接続事業で培った技術をベースに、メール、セキュリティなどのアウトソーシングサービス、ネットワーク構築からシステムインテグレーション、運用に至るまで、あらゆるニーズに応えるサービスを総合的に提供している。


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