SaaSの積極活用で基幹系システムを刷新!

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掲載日 2012/05/08

ザ・キーマンインタビュー システム共通化が“コスト削減”につながる SaaSの積極活用で基幹系を刷新!

企業のITシステムをクラウドへ移行することで、コスト削減などのメリットが見込めるのは確かだろう。ただ、いざ移行を進めようとすると、様々な課題が浮上し、実際には限定的な範囲での利用にとどまっているという企業も多い。しかし、今回取材した日本ビューホテルでは、社内システムの刷新・統合を実現すべく、基幹業務システムのクラウドサービスへの移行を決断。既に昨年4月から利用を開始し、数々のメリットを実感していると言う。日本ビューホテル 業務改革IT推進室長の渡辺淳氏にお話を伺った。

日本ビューホテル株式会社 企業サイトへ

渡辺 淳 氏

業務改革IT推進室長
渡辺 淳 氏

ホテルや業務ごとにバラバラだったシステムを1つの流れの中へ

Question

まずはホテルビジネスを取り巻く現在の状況についてお教え下さい。

Answer

現在ではインターネットを利用して予約をしていただくお客様が非常に多くになっていますが、これはホテル側から見ると、客室の“在庫管理”が非常に難しくなるということなんです。

 一口にインターネット経由での予約といっても、料金と商品は極めて多岐にわたります。その中でなるべく毎日の稼働率を高くしていかなければなりませんから、ホテル側でも効率的に商品としての在庫管理を行っていく必要があるというわけです。そのためには、IT化をせざるをえない状況と言えます。

 また、戦略的な料金設定も大きな問題です。インターネットでの予約が主流になるにつれ、容易に価格などで宿泊先の検討ができるようになっており、その中には「泊まるだけなら、なるべく安いところがいい」「こういう付加価値があるなら、これくらいの金額は出してもいい」など、様々なお客様がいらっしゃると思います。

 その中で競争していくためには、他社の料金がいくらなのかを見据えつつ、自社の客室に対して最適な料金設定を行わなければいけない。つまり、料金体系を正確にとらえておく必要がありますから、ITで経営資源の統合管理を行い、原価や人件費などを厳密かつタイムリーに把握しておかなければならないというわけです。

Question

貴社では昨年4月からいち早くクラウドの導入に踏み切っていますが、これにはどのような狙いがあったのでしょうか?

Answer

日本ビューホテル株式会社:渡辺 淳 氏

現在のシステムの導入を検討し始めたのは約3年前になりますが、当時、弊社では株式上場を計画し、それに向けて、経営可視化、内部統制の強化に取り組んでいました。その一環として基幹業務の見直しを進めていく中で、ITへの依存度をより高めておきたいという意向が生じてきたのです。もちろん、IT自体の活用は以前から行っていましたが、直営ホテルの中でも「浅草ビューホテル」では独自開発、「高崎ビューホテル」や「成田ビューホテル」ではそれぞれに異なるメーカー製のパッケージなど、個別のシステムを利用している状況でした。

 直営するすべてのホテルで利用するための共通システムを確立するとともに、会計、売上管理など、業務ごとにバラバラだったシステムをすべて1つの流れの中に取り込まなければならないという思いがありました。システム統合で会計上の統一化を図りつつ、しかも、できる限りシステム資産などを持たず、更に常に最新のシステムを利用したい。それに答えられるのが、SaaS型のシステムだったというわけです。


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数字上に表れなくても、結果的にコスト削減につながる効果は多数ある

Question

導入後の効果としては狙い通りというかたちになっているのでしょうか?

Answer

そうですね。今回導入したNECのホテル総合クラウドサービスは、おそらく弊社がほぼ初めてのユーザということになるかと思います。その点で導入時にいろいろと苦労はありましたが、現在では、顧客情報データベースと連携する宿泊業務・宴会・レストラン予約・料飲管理といった営業系システム、そして、経営情報データベースと連携する売上管理・売掛管理・資材/発注管理・会計・人事/給与・固定資産管理といった管理系システムまでを1つのシステムに統合でき、グループホテルで共通のシステムを利用しています。

図1 日本ビューホテルのシステム構成
図1 日本ビューホテルのシステム構成
出典:日本ビューホテル株式会社

Question

SaaSを利用することでコスト削減効果も得られたのでしょうか?

Answer

日本ビューホテル株式会社:渡辺 淳 氏

相当な効果はあるとは思います。社内に抱えているシステム資産も、現在ではActive Directoryサーバとファイルサーバだけで、業務システムに関しては、手間をかけることなく、災害などがあったとしてもネットワークさえつながれば24時間365日利用可能な環境を提供してもらえるので、システムの運用・管理費も抑えられています。また、工数の削減という点だけでも、結果としてかなりのコスト削減に貢献しているでしょう。しかし、弊社の場合、従来はシステム統合が図られておらず、システム間のやりとりをほぼ手作業で行うような状況でしたから、SaaS導入そのものでいくら削減できたのかという算出はしにくいかと思います。

 ただ、数字上に表れなくても、結果的にコスト削減につながるような要素は結構出てきており、共通化されたシステムがネットワーク上に構築されているので、社員はどのホテルに出向いても、各種管理システムの利用、更には社員食堂などの清算まで、違和感なく行えますし、総務・経理担当者などの管理作業も最小限で済みます。同様に、新たにホテルを出店した場合にも、VPN接続さえ確保すれば同じシステムを利用できますから、新たにシステム構築を行う必要はありません。


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メリットを最大化できるよう、カスタマイズは基本的に行わない

Question

ホテル総合クラウドサービスとは別に、SaaS型の勤怠管理システムも利用しているそうですが、どういった経緯で導入されたのでしょうか?

Answer

日本ビューホテル株式会社:渡辺 淳 氏

こちらもほかの業務管理と同様に、各事業所(ホテル)で個別のシステムを利用していました。人事/給与システムを統合するにあたり、当然ながら、勤怠管理システムも共通化し、更にできればSaaS型を採用したほうが、よりいっそう効率化・一元化を図れるだろうと考えたわけです。ただ、前述のホテル総合クラウドサービスには含まれていなかったので、別にSaaS型の勤怠管理システムを導入する必要がありました。とはいえ、ホテル業務における勤怠管理はかなり特殊な部類に入りますから、そこは少し問題になりました。

Question

具体的にはどのような点が特殊なのですか?

Answer

各スタッフの働き方や勤務形態が一定ではなく、むしろイレギュラーなものが多いという点ですね。代表的なものでは日にちをまたぐ勤務があり、例えば、フロント業務では夕方出勤して、仮眠を取りながら“断続勤務”という形態を取らざるをえないポジションも少なくありません。そもそも通常の企業とは異なり、ホテルは24時間稼働していますし、そこで働くスタッフも宴会場の人員、レストランの人員、フロントの人員、清掃の人員など、働き方も様々です。また、ホテルによって、そうした働き方のルールも異なっていますから、勤怠管理システム側ですべてを吸収するのは難しいと思います。

Question

そのあたりは自社に合ったカスタマイズを施した上で導入されたということでしょうか?

Answer

いえ。弊社ではシステムのカスタマイズは基本的に行わないことにしています。カスタマイズをすると、バージョンアップの際に不具合が生じる場合も多いですし、運用管理の面でも得策とは言えないからです。もちろん、カスタマイズをしないことでシステムの導入・利用に少し苦労したホテルも出てきましたが、すべて同じシステムを利用しています。また、あまりにも実際の業務に即していない部分があれば、ベンダ側に要望を出すことで、システム側で拡張・改善というかたちで実現していただいていますから。

 実は今回導入したネオレックスの勤怠管理システム「バイバイ タイムカード」は、“カスタマイズできるASPサービス”をうたっており、弊社にもカスタマイズできますということで売り込みをいただいたのですが、一方で、コンフィグレーションで調整できる範囲がかなり広く、しかも、継続的な機能拡張が図られているという点も大きな特長でした。前述のような様々な働き方、勤務形態に対しても、コンフィグレーションで柔軟に対応可能で、最終的に“カスタマイズはしない”という弊社のポリシーを貫くことができました。

 もともと、一口にホテルと言っても、シティホテルとリゾートホテルでは形態もお客様の特性もまったく異なりますし、どの業務システムにせよ、それぞれのホテルの要望を聞いて、それに合わせてカスタマイズしていくと、結果的に同じシステムに共通化したはずなのに、中身はまるで違うという状況になりかねません。前述のようなシステム統合やSaaS導入による数々のメリットも失われてしまうでしょう。それでは、システム刷新の意味がないと思いますから。


●ありがとうございました。

IaaS・PaaSなどのクラウド活用でコスト削減は可能か?

今回紹介した日本ビューホテルでは、ホテルの基幹業務に関わるシステムを包括的に提供するSaaSを利用することで、様々な効果が得られている。ただ、SaaSによるコスト削減はイメージしやすいが、同じクラウドでも、IaaS・PaaSといった形態では実際のところ、どの程度の効果が見込めるのかと感じている方も多いかもしれない。

 別の取材の際に大手SIerに話を伺ったところ、IaaS、PaaSでも相当なコスト削減効果があることは確かだと言う。「IaaSやPaaSなどを利用する場合は、いきなりクラウド上に新しいシステムを構築するのではなく、既存のオンプレミス環境を移行するという流れになります。そのため、まだまだ適用範囲は限定的にとどまっていますが、それでも、情報系システムなどのクラウド移行で相当な効果を実感し、業務系システムなどの移行も検討し始める企業も増えています。とりわけ、ストレージ周りなどでは、オンプレミスからクラウドへ移行することで、トータルコストが100分の1になるといった事例も出てきています。」

 クラウドの場合、イニシャルコストは低くても、ランニングコストがずっとかかるので、単純にコスト削減とはいかないのではないかという懸念もあるだろう。しかし、クラウドには「使った分だけ払えばいい」という特長もあるため、常に「現時点で必要なリソース」を的確に把握し、定期的に契約の見直しを行うことで、より大きなコスト削減効果を引き出せるということだ。


取材協力

日本ビューホテル株式会社 企業サイトへ

栃木県那須温泉で発祥した旅館からスタートし、現在ではシティホテル、リゾートホテル、エアポートホテルなど、全国17カ所に展開。旅館時代から続く日本の女将さんや仲居さんの温かい人情・真心を継承した「おもてなしの心」をホテルサービスのホスピタリティとして掲げつつ、宿泊サービスはもちろん、ブライダル・宴会、レストラン・バーなど、様々なサービスを提供している。


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