日々の業務処理とBCPを両立させる仕組み

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掲載日 2012/04/17

ザ・キーマンインタビュー 日々の業務処理とBCPを両立させる仕組み

リスクマネジメントの一環としてBCP策定に乗り出した物流サポートサービス会社の興伸。同社は東京都のBCP策定支援事業を活用してBCPを策定するとともに、演習を通じて策定したBCPの改善に取り組んでいるが、その過程で見えてきたのは、BCP対策と通常業務の改善との密接なつながりだという。代表取締役の小野伸太郎氏にその理由をお伺いした。

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代表取締役 小野 伸太郎氏



代表取締役 小野 伸太郎氏

東京都中小企業BCP策定推進フォーラムで奨励賞を受賞

Question

御社の概要と主な事業内容を教えて下さい。

Answer

興伸:小野 伸太郎氏

興伸は東京都江戸川区に本社を置く、1973年創業の物流サポートサービス会社です。ダイレクトメールや明細書などの送り先データの入力・印刷・管理から同封物の印刷・加工・封入、発送までの業務を代行するメーリングサービス、キャンペーン事務局と私書箱の開設から応募の受付・抽選、賞品の発送、問い合わせ対応までを一括で代行するキャンペーンサポートサービス、自社の倉庫・配送センターで商品を保管し、ピッキング、梱包、出荷までをワンストップで提供する物流サービスの3本柱で事業を展開しています。

Question

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)策定に取り組まれた経緯を教えて下さい。

Answer

当社の事業は、お客様の大切な情報資産をお預かりして、お客様に代わってダイレクトメールを発送したり、キャンペーン事務局の運営を代行したりするものなので、早い時期から情報セキュリティ対策などのリスクマネジメントに積極的に取り組んできました。日本工業規格の「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム−要求事項」に適合した個人情報保護体制が整備されていることを認証するプライバシーマークを2002年に取得したほか、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であるISO/IEC27001に基づいた情報セキュリティマネジメント(ISMS)が実施されていることを認定するISMS認証を2006年に取得しています。BCPの策定にもこの流れの中で取り組み始めたのですが、なかなかうまくまとめられなかったため、東京都が中小企業を対象に実施しているBCP策定支援事業を活用しました。

Question

策定されたBCPはどのようなものでしょうか?

Answer

東京湾北部地震(首都直下地震)を対象リスクとして、メーリングサービス、キャンペーンサポートサービス、物流サービスの3サービスのBCPを策定しました。以前に取り組んだ時は「あれもこれも」と全部をやろうとしたためにまとめられなかったのですが、今回はコンサルタントの指導を受けて、業務を優先させる対象を社会的責任が大きいお客様や日常的に発注していただいているお客様、売上金額が大きいお客様など重要取引先10社に絞り込み、被災をまぬがれた社員を総動員して早期復旧に当たるようにしました。

他の業界だと、遠隔地の同業他社とアライアンスを結び、万一被災してもお客様に影響が及ばないように業務を肩代わりしてもらうといった体制を組むこともできますが、当社がお預かりしているのはお客様の情報資産や私書箱に郵送されたキャンペーンの応募ハガキといった機密情報ですので、同業他社とその情報を共有するという訳にはいきません。このため千葉県船橋市にあるデリバリーセンターでデータをミラーリングし、本社のサーバが壊れてもデータを復旧できるようにしています。

このほか、BCPマニュアルが入ったデイパックを各部署に配備し、避難時にはすぐに持ち出して活用できるようにしたり、会社から社員の自宅がある各エリアまでのルート情報などを記したオリジナルの災害時支援ロードマップを作成したりといった実践的な取り組みが評価され、平成22年度東京都中小企業BCP策定推進フォーラムで奨励賞を受賞しました。

図1 携帯用BCPハンドブック(抜粋)
図1 携帯用BCPハンドブック(抜粋)
資料提供:興伸
図2 災害時支援ロードマップ(抜粋)
図2 災害時支援ロードマップ(抜粋)
資料提供:興伸

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日々の業務で使えないと、いざという時には使えない

Question

BCP策定後に東日本大震災が発生しました。大震災を受けて、策定したBCPの見直しや対象範囲の拡大といったことは行われたのでしょうか?

Answer

興伸:小野 伸太郎氏

はい、いろいろとやっています。とはいえ、備蓄1つをとっても、あるいは什器、備品の転倒防止対策やサーバの入れ替えなどにしてもお金がかかります。当社は中小企業なのでふんだんに投資できる訳ではありません。前期でやったこと、今期にすること、来期の予算に組み入れるもの、といったように、優先順位を付けながら1つずつ進めています。

それと、演習を2回行いました。1回は避難する際の危険個所や役に立つ施設などを調べながら自宅から会社まで実際に歩く演習、もう1回はBCPの被災シナリオに沿った演習です。

2回目の演習は、今年の2月上旬に行いました。演習当日に「あなたはけが人です」「このPCは壊れました」といった被災設定をいきなり示し、「この仕事、このミッションをクリアするために、あなたやあなたのチームはどうしたらいいか」という課題を与えて動いてもらうといった内容です。

演習の結果、四百数十件の気づきや改善案が出てきました。これらは災害発生時に事業を継続するためのアイデアとして出てきたものですが、意外なことに、通常業務を改善するためのヒントだったり、日々の業務処理の中で出てくるトラブルへの有効な対処方法だったりすることが分かりました。

Question

通常業務自体を改善し、日々のトラブルにも柔軟に対処できる仕組みにしていくことが、災害発生時の事業継続能力の向上につながっていくということでしょうか?

Answer

阪神・淡路大震災や東日本大震災に遭われた方のリアルな感想は、あらかじめ取って付けたように用意しておいたものは意外と使えなかった、というものです。結局、日々の業務の中でちゃんと使えているものでないと、いざという時に使えないのです。防災用や地震対策用と聞くと災害や地震が発生した時のためのものと思ってしまいがちですが、そうではない。日々の業務を改善するものだという発想で取り組めば、それは取って付けたようなものではなくなるのではないかと思います。


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クラウドによる日々の業務処理と災害発生時の事業継続の両立

Question

日々の業務でちゃんと使えているものでないと、いざという時には使えないとのことですが、クラウドサービスで日々の業務処理と災害発生時の事業継続を両立させるというお考えはありますでしょうか?

Answer

現在は船橋市のデリバリーセンターでデータをミラーリングしていますが、その次のステップとしては、もう少し遠隔地で津波が及ばない場所の免震構造の建物の中にサーバを移すことや、クラウドサービスを導入してデータをバックアップすることを検討しています。

クラウドサービスのメリットは事業者側で耐震・防災対策や電源、ハードウェア、ネットワークなどの2重化といったBCP対策を講じているため安心なことですが、その一方で、データがどこにあるか分からないことや情報漏洩してしまうのではないかといった不安もあります。当社がお預かりしているのはお客様の情報資産なので、そのデータを当社以外の場所に置くことをお客様がどうお考えになるのか、それを了承されるのかといった課題もあります。

お客様の大切な情報資産をお預かりしていますので、クラウドの利用に関してはお客様の考えや判断が大前提となりますが、日々の業務を処理する仕組みがそのまま災害発生時のBCP対策にもなっているという点で、1つの有効な選択だと思います。


●ありがとうございました。


取材協力

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1973年創業の物流サポートサービス会社。メーリングサービス、キャンペーンサポートサービス、物流サービスの3本柱で事業を展開している。品質管理ではISO 9001:2008、情報セキュリティではISO/IEC27001(ISMS)、個人情報保護ではプライバシーマークをそれぞれ取得し、更にBCPでは東日本大震災の発生以前に対応策を策定するなど、顧客の資産保全を第1とした危機管理体制を構築している。


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