この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

掲載日: 2011/09/22

ワークスタイル改革と在宅勤務のあるべき姿

【中西】  まず、在宅勤務に関する取り組みについて教えて下さい。

【青野氏】  我々は昨年秋から在宅勤務に関してテスト導入を行っています。働く環境の向上とともに、生産性の向上という観点で在宅勤務を全社員に対して月4回まで、いかなる理由でも申請できるようにしています。震災発生後は交通機関のマヒや原発問題などで出社自体が困難になったことで、事前準備を経て3月16日の水曜日には全社員が在宅勤務できる環境を整えました。実は、この日が当社の決算発表の日だったのですが、全員在宅勤務の状態で決算発表を行うことができました。在宅勤務の環境が準備できていたからこそだと思います。

【永井氏】  当社は以前からみなし労働制を採用しており、生産性や生み出す価値によって給与を決める年棒制を採用しています。そのため、以前から申請ベースで在宅勤務を認めており、リモート接続のツールやVPN環境などは準備していました。震災後は窓口担当以外の従業員全員が在宅勤務できるよう、VPN用のライセンスなどを追加して環境を整えた経緯があります。ただ、自宅で作業する場合、子供が邪魔して仕事ができないなど、自宅の環境自体が課題になることが実施してみて初めて分かりました。

【大友氏】  当社は岐阜に本社を構えており、震災の際には東京のように交通機関のマヒなどが発生せず、さほど在宅勤務が話題にはなっていません。ただ、結婚された女性などが自宅でプログラムを作成するなど、エンジニアという職種であれば在宅勤務も実現しやすいのではないかと考えています。一方、大阪に出張所がないために営業部門でテレワークを実施した経験があるのですが、詳細なタスクをすべて共有するとなると、意思疎通の難しさを感じました。特に、マネジメントする立場からするとかなり大変だった記憶があります。

【長谷川氏】  当社の場合は個人の状況に応じて臨機応変に判断しています。シドニーに個人的な事情で引っ越さなければいけない社員のために、開発業務を自宅でできるよう環境を整備したことがあります。震災の際には個人の判断に任せており、在宅勤務を望めばマネージャが承認するという方法を採用しました。その後は在宅勤務のあり方についても社内的に議論がありましたが、議論した結果、当社としては時期尚早だと判断しました。開発部隊やQA(品質管理)、ポストセールスなど個人の目標がしっかりと管理できる業務であればパフォーマンスが定量化できるため、在宅勤務は可能だという判断はしていますが、個人的にはFace To Faceの環境を重要視しており、会社として認めている状況にはありません。

【飯島氏】  もともとは東京での採用活動が困難だったこともあり、企業が少ないところに拠点を立ち上げたほうがいいという判断から、営業と技術SE、マーケティングの部門以外は和歌山県の南紀白浜に移しています。そのため、震災の際にも業務を止めることなくビジネスを行うことができました。また、一部上海で開発を行っていることから、ビデオ会議やチャットなどを普段の業務の中で利用しており、在宅勤務を実施するための環境は既に整っている状況です。ただ、VPNのライセンスが不足していたことで、急遽買い足して全員自宅で作業できる環境を整えたものの、自宅での勤務は1日だけで、集中して仕事をすることが自宅の環境では難しい場合もあり、結局全員出社していたのが実情です。在宅勤務を行うためには、自宅の環境が重要だと考えています。

【中西】  震災が発生したときに在宅勤務に切り替えざるを得なかった企業も多かったはずです。従業員にはどうやって周知させたのでしょうか?

【青野氏】  グループウェアを提供している我々だけに、震災に関して情報を共有する掲示板をグループウェア上に立ち上げ、この掲示板を常に見ておくよう指示しました。万一に備えて掲示板も社内と社外で二重化し、この掲示板上で原発の状況などをリアルタイムに判断しながら在宅勤務の可否を通知しました。

【永井氏】  個人的なことですが、Twitter経由で家族と連絡を取ることができたことで、非常に有効なツールだと判断し、社員全員にTwitterを登録させました。ただし、その後は電話などもつながるようになったため、結果としてスタッフを通じて在宅勤務に関する指示を出しました。ただ、便利なTwitterですが、震災の時にはいろいろ問題になったこともあります。それは、震災当初は帰宅指示まで出す必要がないと判断していたものの、MIJSのメンバー企業がTwitterで帰宅命令を出したことが全体に伝わり、社内的に動揺が広がったことです。Twitterについては使い方に注意が必要だと思っています。

【中西】  確かにTwitterなどは一気に情報が広まり、想像以上に影響を与えてしまうことがあります。

【長谷川氏】  今回は、MIJSの中でとある知識人の方が原発関連の情報を頻繁に流したことで、現場が混乱したのは確かです。当社もMIJSに参加している他の企業が帰宅命令を出していることが分かり、どう対応するべきかという議論になりました。その結果、最終的には帰宅していいという判断を下した経緯があります。

【飯島氏】  当社はTwitter自体を以前から認めていますが、震災の際にはプライベートSNSを急遽立ち上げ、安否確認などはそのSNS上で行いました。

【大友氏】  我々は在宅勤務の指示は一切行いませんでしたが、顧客からの電話がないことから電話対応の担当者には出社しなくていいという話になった程度です。営業やエンジニアなどは普通に出社していました。


このページの先頭へ

【中西】  Twitterなどの話題も出ましたが、今後在宅勤務を導入するにあたって必要になる考え方やインフラの整備状況など、新たに行っておくべきものはありますか?

【青野氏】  インフラを二重化するということはもちろん、仕事の二重化ということが重要だと考えています。システムが二重化されていても、使える人材がいなければ仕事が継続できません。当社の場合、ソフトウェアを購入していただいた後にライセンスを発行する業務があるのですが、震災以前は東京にしかその発行機能がありませんでした。そこで、急遽愛媛のほうで同じ環境を整備して業務に関する教育も行うことで、システムと人材の二重化を行いました。

【永井氏】  ITは人が財産であり、人材の二重化はなかなか実現できないケースもあります。それよりも、顧客が東京に一極集中していることのほうが大きな問題なのではないかと考えています。これは日本全体に言えることかもしれませんが、もう少し分散した仕事環境をすべての企業が構築しないと上手くいかないような気もしています。

【大友氏】  二重化に関しては、我々の場合はパッケージ製品を販売するだけでなく、プロダクトのコンサルティングを行う部署もあります。お客様の環境に応じてコンサルティングをするため、何かが起こった際にはなかなか代わりの人を用意するのが難しいという事情もあります。業務の標準化という部分は必要ではありますが、顧客の個別要件にあわせてカスタマイズする部分がどうしても必要になるため、なかなか進んでいないのが実情です。

【長谷川氏】  経営のミッションとして重要なものにリスクマネジメントが挙げられますが、二重化などは当然コストとの兼ね合いがでてきます。青野さんのおっしゃる通り、ライセンスの発行などルーチン化できるものでシステム化できるものであれば二重化するべきですが、人に依存する業務については、クオリティの面からもそうはいきません。ルーチン化できない部分があることは認識しておくべきです。

【永井氏】  当社の顧客の中には、ある工場のシステムが停止して使えなくなった場合、競合他社のシステムを借りる契約をしている企業があります。横のつながりの中でお互いに融通しあえる環境を整えている例もあります。こういった取り組みも検討してみてはいかがでしょうか。

【飯島氏】  当社では、幸い東京で行っていた業務だけを南紀白浜に移管している一方で、東京に人材自体が残っていることで仕事の二重化が実現できています。ただ、南紀白浜の場合は東南海地震の影響を受ける可能性がありますので、大阪や上海などでバックアップ体制の構築を進めています。また、以前から全従業員の全業務に対して「業務処理手順書」を作っており、二重化よりも標準化を実施して、手順書をワークフローを使ったシステムに落とし込むようにしています。標準化した業務をシステム化できれば、どんな場所にいても業務が遂行でき、在宅勤務にも移行しやすいはずです。


このページの先頭へ

【中西】  在宅勤務を導入する際の人事制度や評価などの面はいかがでしょうか?

【青野氏】  基本的には上司に成果物を含めて申請を行い、それを上司が評価するというところまでが在宅勤務における一連のフローとなります。ただ、実際にやってみると顔の見えない不安感があるようで、その度合いは普段の信頼関係に大きく依存することが分かりました。普段から締め切りを守ってきちんと業務が遂行できるような人であれば上司も安心できますが、普段から遅刻しがちでネットサーフィンばかりしている人であればなかなか在宅勤務を承認しづらくなる。人事制度はもちろん大事なのですが、普段からの信頼関係がいかに大切なのかを実感しています。信頼関係があれば、実は在宅勤務で人事評価などに困ることはなく、逆にその関係が構築できていないと一気に不信感が高まってしまうものなのです。

【永井氏】 開発部門であれば、ある程度のスパンで成果が必ず出るため、目標の達成度合いで年棒を決めています。だからこそ、どこで仕事をしようが関係ないというスタンスです。ただ、自律できていないメンバーの場合、在宅勤務は難しいでしょう。会社に出社してパソコンの前に座れば仕事をしているように見えるし、自分でもそういう気分になってしまうような人では無理と言わざるを得ません。私は没頭力と呼んでいますが、没頭できない人間はやっぱり生産性が低いというのが実感です。

【長谷川氏】  信頼関係や自律という面では、理想を言えば全社員が自営業であることでしょうか。それぞれが経営感覚を持った社長としての意識を持ち、きちんと稼ぐことができるようになればいいわけです。在宅勤務のための評価という考え方よりも、例えば長男だからいずれは田舎に戻りたいと考えている人は、リモート環境でも仕事ができるようなスキルを身につけるようになればいい。そういう意味で在宅勤務を目指すのであれば本当に理想的だと考えています。東京一極集中で仕事が進められている日本のあり方を考えると、そちらのほうがよっぽど健全なのではないでしょうか。

【青野氏】  当社は月に4回まで在宅勤務を認めていますが、あまり申請する人がいません。その理由を聞くと、きちんと評価されるか不安だと考えている人が多いようです。会社にいればがんばっている姿を周囲に見せることができますが、在宅勤務では今日1日の成果物を明確に問われます。しかも、メンバーが自分の代わりに電話を取ってくれているという後ろめたさもあるようで、結局出勤したほうがいいと判断してしまう。これって制度やシステムでは乗り越えられない部分です。逆に経営者視点で言えば、仕事の目的意識を高めるためにも、強制的に在宅勤務を実施してアウトプットを出させたいところです。


このページの先頭へ

【中西】  では、在宅勤務におけるメリットはどのように考えればよいのでしょうか?

【長谷川氏】  単純に考えれば、経費に対する考え方が変わります。経営者から見れば、通勤費やオフィスの賃料、電気代などにも大きく影響します。

【青野氏】 チャレンジしてみたいのは、東京の中でも東西南北の移動が多い場合に、例えばMIJSのメンバーでどこか部屋などを借りてサテライトオフィスを複数確保することです。クラウド化されていけば場所は関係なくなってくるので、共用スペース的な場所が復活してくるのではないかと考えています。会議スペースなども確保すれば、便利に使えるようになるはずです。

【永井氏】  在宅勤務を行っている従業員は、夜型になりやすい開発部隊です。仕事に没頭しだすと徹夜作業になってしまうこともありますので、在宅勤務の方が、生産性が高まるというメリットがあります。

【大友氏】  自宅での作業であれば、他から電話が入らないことで作業に集中できます。エンジニアであればそういった環境のほうが力を発揮するケースがあるのは間違いありません。

【長谷川氏】  災害というよりも、インフルエンザなどが発生した場合は強制的に在宅勤務せざるを得なくなります。リスクマネジメントの面でもメリットは大きいですね。

【青野氏】  昨年秋に在宅勤務の導入に際して議論を行ったのですが、在宅勤務の導入目的は「福利厚生」か「生産性向上」なのかという点が議論の中心でした。つまり、みんなに還元するものなのか、会社にとってメリットがあることなのかということです。これは、基本的に両立できるものだと考えていますし、両立しないとどこかで必ず歪みが出てきます。これらを如何に両立させるかという話題が議論の中心でしたが、震災後はリスク管理という別の側面でのメリットが出てきたことで、在宅勤務のメリットが大きくなってきています。

【中西】  現在は導入率がさほど高くない在宅勤務ですが、企業として上手く取り入れていくためにはどのようなことが必要だと思われますか。是非アドバイスをお願いします。

【青野氏】  経営層の方であれば、在宅勤務は避けられないことだと認識するべきです。災害対策だけでなく、ワークライフバランスを考えた働き方が選択できないと優秀な学生が採用できないこともありますし、介護の問題でやむなく退職せざるを得ない優秀な人材を引き留めるための手立てを講じなければならないなど、在宅勤務という働き方は避けられないものです。だからこそ、まずはやってみるべきで、そうすると課題がはっきりと分かってきます。覚悟を決めてやってみる、一歩踏み出して見るとメリットも必ず見えてきます。

【永井氏】  事業継続という観点も大事ですが、在宅勤務は社員の生産性を高めるために私は使いたいと思っています。人に助けられながら仕事をしている新人であれば、メールやチャットで教えると時間も手間もかかるため、在宅勤務を行うのは厳しい部分もあります。自律心をもってそれぞれの生産性を高めるために在宅勤務を使うべきだと考えています。また、これは在宅というよりもフレックスの考え方にはなりますが、以前満員電車が嫌で田舎に帰った従業員がいたこともあり、出勤のつらさを解消してあげるための対策としても有効です。

【大友氏】  マネジメントを行うプロジェクトリーダーの役割は非常に重要です。また、在宅勤務をしていると帰属意識が薄まってしまい、ロイヤリティが下がってしまうのは否めません。だからこそ、会社自体に魅力がないといけないのではないかと感じています。ロイヤリティが下がっても会社に魅力を感じてもらえるようにする必要があり、この部分は企業側としては重要視すべきだと思います。

【長谷川氏】  当社は最初にお話しした通り、介護や出産など様々な事情を加味しながら臨機応変に対応していくべきだと考えています。会社として在宅勤務を認めることは時期早尚ですが、個々のケースでは認めていくこともあります。会社から在宅勤務を認められる存在になろうとすることで、その人自身も成長し、それが信頼にもつながっていくことでしょう。

【飯島氏】  在宅勤務を考えるのであれば、まずは全員が同じ環境やツールが与えられているかどうかを考える必要があります。デスクトップを使っている人であれば会社の環境を持ち帰ることはできません。会社の中でも場所や時間に縛られずにフリーアドレスで仕事ができるような環境が整っていないと、その先につながらないのではないでしょうか。会社の中でどこにいても、どの営業所にいても仕事ができる環境があれば、いつでも在宅勤務が可能なはずです。ただし、ポイントは家庭環境のような気がしています。集中して仕事ができる環境をどう作るのかは課題の1つになってくるはずです。

ビジネス相互連携を行って海外展開及び国内ビジネス基盤の強化を図る目的で、日本のソフトウェアベンダが集結。設立以来最大のテーマである「海外展開」をはじめ、ユーザが安心して使えるITを目指す「製品連携」、ITの利用の大きな流れとなっている「SaaS連携」の3つの柱で活動を行っている。2011年8月現在は、正会員が19社、準会員企業が38社となっている。


このページの先頭へ





Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この記事に掲載している情報は、掲載日時点のものです。変更となる場合がございますのでご了承下さい。


30004442


IT・IT製品TOP > 情報共有システム・コミュニケーションツール > テレビ会議/ビデオ会議 > テレビ会議/ビデオ会議のIT特集 > 特集詳細

このページの先頭へ

キーマンズネットとは

ページトップへ

実際にやってみて分かった「在宅勤務」の課題 必要となるインフラや業務整備とは? 人事制度や評価はどうすべきか? 経営者が考える!在宅勤務を上手く導入するコツ