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掲載日 2011/12/20

ザ・キーマンインタビュー 今、仮想化に求められるものとは?

これまで成長を続けてきた国内仮想化サーバ市場の出荷台数だが、今年度は1桁の成長にとどまる見込みだという。もちろん震災の影響も無視できないが、それ以外にも仮想化サーバ市場の動向に影響を与える要因はいくつもある。IDC Japanのサーバー リサーチマネージャーである福冨 里志氏にお話を伺った。

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福冨 里志氏


IDC Japan株式会社
サーバー リサーチマネージャー 福冨 里志氏

2011年は3%成長にとどまるが、2012年には2桁成長に復帰する見込み

Question

IDCでは今年9月に国内仮想化サーバ市場の最新予測を発表されていますが、その内容をお教えいただけますでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:福冨 里志氏

IDCでは仮想化環境を構築するために出荷されたサーバを「仮想化サーバ」と定義しています。仮想化市場のとらえ方は多様で、仮想化ソフトウェアの売り上げ、あるいは無料ライセンスも存在するため、利用されているライセンス数を算出するという考え方もあるかと思いますが、現状では普及規模をイメージしやすい仮想化サーバの出荷台数で量るのがよいのではないかということです。

 9月に発表した内容は2011年第1四半期の出荷実績と市場動向にもとづいて予測したもので、2011年は震災の影響などもあり、国内仮想化サーバ市場の出荷台数は9万3096台。前年と比較して3.0%という1桁の成長にとどまる見込みとなっています。これまで伸び続けてきたペースを維持することはできず、ほぼ横ばいとなり、しかも出荷額で見れば若干のマイナスという状況です。ただ、2012年には2桁の高成長に復帰すると予測しています。

図1 国内仮想化サーバ市場の出荷台数予測(2010年〜2015年)
図1 国内仮想化サーバ市場の出荷台数予測(2010年〜2015年)
出典:IDC Japan(2011年9月)

Question

震災はもちろん、様々な要因で景気が不安定な状況にはなっていますから、その影響で仮想化サーバ市場が若干落ち込んでしまったことはたしかなのでしょうが、逆にそうした状況を打破しようと、企業ではコスト削減や海外展開などに戦略的に取り組み、その中でシステムのクラウド化が活発化し、それにともなう仮想化サーバの導入数もまた伸びていくのではないかという考え方もありますよね?

Answer

既に大企業はもちろん、中堅・中小企業においても、システムの全面的な更新や刷新を行う際には、仮想化という技術要素を必ず1度は検討するという流れになっています。コスト削減の手段として、仮想化を用いてサーバの集約率を上げたり、オンプレミスシステムをプライベートクラウド化する。また、それほど大きな割合とは言えないものの、旧資産の継続利用によるコスト削減、つまり新しいハードウェアでサポートされなくなってしまったIT資産を使い続けるという用途も、依然として堅実に仮想化サーバ市場を支える分野となっています。


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仮想化サーバ市場は今後も伸び続けるが、意識の変化も生じている

Question

x86など、分野別の市場動向についてはどのような状況なのでしょうか?

Answer

国内のサーバ市場を構成しているのは、「メインフレーム」、Itaniumプロセッサーを採用し、オープン系のOSを搭載した「IA64サーバ」、RISCプロセッサを採用し、主にUNIXを搭載した「RISCサーバ」、メインフレーム以外のプロプライエタリ系サーバである「ビジネスサーバ(オフコン)」、そして、x86アーキテクチャのプロセッサを採用しWindows、Linuxなどオープン系のOSを搭載した「x86サーバ」ということができますが、出荷台数では既に95%以上がx86サーバです。仮想化環境上で利用しようというワークロードも、基本的には業務系アプリケーション、データベースを含むx86系のサーバで稼動していたものが多くなりますから、仮想化サーバにおいてもx86サーバの伸びが最も著しいのは当然のことでしょう。具体的には、国内仮想化サーバ市場におけるx86サーバの出荷額構成比率は2010年は30.6%でしたが、2015年には更に上昇して42.6%になると見込まれます。

 一方で、メインフレーム、IA64サーバ、RISCサーバを使い続けているところは、信頼性、可用性を重視していたり、特定のOSを前提としたカスタムアプリであるなどの様々な理由でリプレースがきかない分野だと考えられますし、そうしたところでは元来、仮想化の適用率は高く(UNIXのフロントエンドで使われているサーバを除けば)、そのため、市場動向も安定化しているわけです。ちなみに、仮想化サーバ市場におけるメインフレームとビジネスサーバの出荷額合計が占める割合は、2010年は52.0%でしたが、2015年には37.0%になると予測しています。

Question

今回の市場調査を行う中で、予想外の動きといいますか、意外な動向みたいなものが見受けられたりはしたのでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:福冨 里志氏

震災の前後ということで言えば、中小企業での意識の変化があるようです。仮想化というと大企業で先行しているイメージがありますが、中小企業でも仮想化を導入しようという動きはありましたよね。例えば会計システムなどの業務系アプリケーションやファイルサーバ、Webインフラとして利用している20台程度のPCサーバを何台かに集約させて、可用性やスケーラビリティを高めようとか、部門ごとにサーバを個別に管理しているのはコンプライアンスやセキュリティの観点では、いわば野放しになっているので、1ヵ所に集めて正しく管理しようという流れですね。ただ、そういった気運が高まりつつあった中で震災が発生してしまい、物理的に1ヵ所に集めてしまうことの善し悪しなども考えなければならないなど、意識の変化が起きているという印象です。

Question

基本的にx86を中心に市場は伸びていくものの、従来とは異なる意識が出てくることで、縮小する部分もあるということですか?

Answer

これまでは国内サーバ市場全体の出荷動向が弱含む中でも、仮想化サーバ上に導入するアプリケーションエリアの広がり、導入企業の裾野の広がりを背景に、仮想化サーバ市場は高成長を維持してきたわけですが、今後は中長期的には国内サーバ市場全体の成長率に沿ったレベルへ収斂していくことになると思われます。その中で、仮想化サーバを提供するベンダがプラス成長を維持するためには、x86サーバを前提とした仮想化ビジネスに注力しつつ、それぞれのターゲットセグメントに絞り込んだ、きめ細かい戦略が不可欠になると言えるでしょう。

Question

そのほかに、仮想化サーバの導入傾向に影響を与えるものとしては、どのような要因が挙げられるでしょうか?

Answer

テクノロジーの観点から言えば、ムーアの法則にならうわけではないですが、プロセッサをはじめとするハードウェアの性能は継続的に向上し続けており、今後もやはり上がっていきます。ただ、BRICsを中心としたエマージング・マーケットなどを除けば、日本も含めて、既存ビジネスの延長線上で処理すべきトランザクション、取り扱わなければならないデータ量というものは、残念ながらこれまでのように右肩上がりで増え続けるとは言えないという状況でしょう。そうすると、トランザクションやデータを処理するために必要な演算能力も当然減っていきますから、やはり仮想化導入などでリソースをまとめて、効率的に配分していく必要があるというわけです。

 あとは、前述のように、ユーザ側における需要として、管理のしやすさが挙げられると思います。コンプライアンス、あるいは外部からの攻撃に対するセキュリティも含めて、きっちりとシステム管理を行うためには、やはり1ヵ所にまとめたほうが都合がいいということです。IT部門に大きなリソースを割けない中小企業だけの問題ではなく、IT部門を抱える大企業においても、利用規模が大きくなればなるほど、部門が増えれば増えるほど、システム管理が複雑になりますから。この2つの大きな流れが、仮想化サーバを導入する背景になっているでしょうね。


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すべてをパッケージ化した、いわゆる“仮想化セット”に対する市場の反応は?

Question

仮想化サーバ市場におけるベンダ側の動向についてはいかがでしょう?

Answer

IDC Japan株式会社:福冨 里志氏

メインフレーム、RISC/IA64サーバ、x86サーバといった複数のサーバ製品をラインナップしているベンダでは、製品ごとの縦割りによる事業戦略立案/事業計画策定から脱却する必要があるでしょう。顧客の規模に応じた仮想化ソリューションを提供したり、顧客の予算に応じた幅広いサービス体系を整える必要があります。

 また、ベンダの中には、SIerに近いスタンスでエンドユーザのサポートにより力を入れているところもあれば、仮想化だけではなくクラウドという大きな括りで自社の製品を提供し始めたところも多いですよね。更に、円高をはじめとする喫緊の課題がきっかけとなって、海外展開を急いで検討し始めた国内企業も増えていますが、そうした動きをサポートしようと、海外ベンダと組むことでワールドワイドでの展開の地盤を固めようという動きもあります。いずれにせよ、幅広い製品やサービスを揃えていたとしても、それをマーケティングメッセージとして、体系化して明確に伝え切れていないベンダも少なくないと感じられます。顧客から見て分かりやすい、ぶれない提案が求められています。

Question

ハードウェアだけではなく、仮想化に必要なソフトウェアや、その上で動作させるアプリケーション、サポートなども含め、事前構成されたセットで提供するという形態も目立ってきている印象があります。そのあたりの動きはいかがでしょう?

Answer

現時点では、そのようなセットとして、サーバがどれほど出荷されているのかなどという動きは正確な数値としては把握しきれていません。ただ、パッケージ化された製品がサーバ市場全体の中でどの程度を占めていくことになるのかというレポートを作成しており、主要サーバベンダへヒアリングを行っています。その中でよく耳にしたのは、そうした、いわゆるアプライアンス化された製品自体がものすごく売れるというわけではないものの、潜在需要を引き出す効果はきわめて高いということです。つまり、そのパッケージ自体は自社にそのまま適用できるものではないけれど、それに近い構成をセミオーダーメイドとして導入したい、あるいは、その構成要素となっている製品を導入検討したいという企業からの引き合いが増えるということです。ベンダ側としても、そうしたハードウェアとソリューション、サービスを組み合わせたセミオーダーメイド提供に注力しているというのが、共通の動きとしてありますから。


●ありがとうございました。


取材協力

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IT専門の調査会社として、1975年に設立以来、国内・外の情報技術・通信産業をはじめ、金融機関、政府機関等など、市場データ、市況分析とそれにもとづいたアドバイスを提供。グローバルに展開するビジネスを品質の高いデータで支援することに取り組んでいる。


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