産消逆転で広まった企業内情報共有の行方

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掲載日 2011/11/22

ザ・キーマンインタビュー クルマもツイートでつぶやく時代が到来!? “産消逆転”で広まった企業内の情報共有の行方

Lotus Notes/Dominoが登場して20余年。これまでグループウェアを中心に進んできた情報共有、コラボレーションの形が、Web 2.0の深化やクラウド時代の到来によって大きく変容しつつあると言う。それはビジネスのあり方にどんな変化をもたらすのか。野村総合研究所の主任研究員である亀津 敦氏にお話を伺った。

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亀津 敦氏


野村総合研究所 情報技術本部 イノベーション開発部 イノベーション・インテリジェンスグループ
主任研究員 亀津 敦氏

コラボレーション基盤としてのクラウド

Question

メールやグループウェア、ファイル共有などの情報共有基盤が自社保有システムからクラウドへと移行しつつあります。「情報共有」の観点から見たクラウドの市場動向や技術動向、ユーザ動向などをご解説下さい。

Answer

野村総合研究所:亀津 敦氏

我々もお客様から依頼を受けて、例えばインフラを刷新するに当たって、特にグループウェアで情報共有を行ってきた部分をどうすればいいのかをヒアリングしたり、ディスカッションしたりさせていただく機会が増えてきました。

 グループウェアはLotus Notes/Dominoが先駆けとなり、サイボウズやdesknet'sなどのように比較的安価なWebアプリケーション型が登場し、更にグループウェア以外の機能も取り込んだポータルという形のコラボレーションプラットフォームへと進化していきました。また、当初はとても小さな存在でしたが、掲示板で議論したりQ&Aのコミュニティを開設したりといったコラボレーションのメインストリームではないところで行われていた社員同士の助け合いがWeb 2.0になってSNSやWikiなどへと進化していき、今だと更にその上にTwitterなどのマイクロブログが乗る形でWeb 2.0時代の分散的なコラボレーションの仕組みができていきました。従来これらはオンプレミス中心で行われていましたが、今はクラウド上へと移行していっています(図1)。

図1 コラボレーションの進化
図1 コラボレーションの進化
出典:野村総合研究所

とは言っても、私自身は、2006年ぐらいにはコラボレーションのプラットフォームがグループウェアからSNSやWikiなどを含めたものへと拡大していくだろうと思っていましたし、その後も2008年ぐらいにはソーシャルメディアが企業内に入っていくだろうと思っていましたが、日本ではなかなかそうはならなかった。しかしクラウドへの移行が進むにつれ、これらが企業に浸透していっているように感じています。

Question

クラウドベースのコラボレーションサービスが企業で利用され始めたのはいつぐらいからなのでしょうか?

Answer

実際に動き始めたのは2010年前後です。「クラウド」というキーワードはそれ以前から浸透してはいましたが、クラウドベースのコラボレーションに関しては『本当にちゃんと使えるのだろうか?』と皆さん気にしながらのスタートだったようです。

 導入に関しては、企業中心の流れからではなくて、オープンな世界の影響の方が強かった。はっきり言えばGmailの影響なんですが、Google Appsの中でもまずはGmailだけを切り出して使いたいという要望が1番多かったようです。

 とは言っても、最初は皆さんいろいろと葛藤はあったようです。『メールシステムを外に出してしまって本当に大丈夫か?』と。また、細かい部分で言えば『Gmailのメール管理形式や使い勝手に社員が戸惑うのではないか?』という懸念もあったようです。しかし実際に導入してみたら、そんなことはなかった。というのは、我々はITによる革新を産業界(企業)よりも消費者の方が先に享受する現象を「産消逆転」と呼んでいますが、この産消逆転によって社員はGmailをプライベートで使い始めており、導入し始めた2009〜2010年頃にはかなりの社員がGmailに慣れていたからです。

Question

既に消費者に受け入れられていたWebメールやSNS、オンラインストレージといったクラウドベースのコラボレーションサービスが企業の中でも使われるようになったということでしょうか?

Answer

その通りです。とは言うものの、Web 2.0的なコラボレーションやタイムラインを共有するTwitterライクなリアルタイムコミュニケーションが活発に行われるようになったかと言うと、決してそうではありません。導入や活用が進まない原因が管理者側と利用者側の双方にあるからです。

 管理者側での問題点は、セキュリティ対策とコンプライアンス管理です。Google AppsやMicrosoft Office 365、LotusLiveなどの主なサービスのメール機能に関しては証跡管理ができるようになりオンプレミスのメールシステムと同様のコンプライアンス管理が行えるようになったため導入が進みましたが、それ以外のコラボレーション機能、例えば文書共有サービスの多くでは、誰が、いつ、どの段階で、どんな変更を加えたかなどの証跡管理機能がまだ十分に成熟していません。オンラインストレージも同様に、企業利用の観点からはセキュリティ対策やコンプライアンス管理の面で十分でないサービスも見受けられます。

 一方利用者側の問題点は、個々のコラボレーションツールにどんな意味、役割があるのかについての認識や利用レベル、使用する際の作法などが、利用者によってバラバラなことです。ソーシャルな働き方の意義がよく分かってない人には、社内SNSでプロフィールを公開したり、人脈を築いたり、社内Twitterでタイムラインを共有したりすることにどんな意味があるのか分からないものです。だから積極的に使おうとしないし、企業全体としても生産性向上につながらない。メールのような誰にも必須の機能はいいんですが、人によって認識や利用レベルがデコボコになってしまう機能に関しては、IT部門としては導入・活用を推進しにくいのです。

Question

どうすれば導入・活用が進むのでしょうか?

Answer

生産性を上げていくためにはどんな働き方をする必要があるのか、グローバルに事業展開していくためには、あるいはグループのシナジーを上げていくためにはどうすればいいのかといったビジネス課題を解決するために、よりリアルタイム性の高い、より進化したコラボレーションを追求していくのだという方針を経営側がトップダウンで提示することが必要でしょう。

 タイミング的には、いい時期に来ているのではないかと思います。人材のBCPを考えた時、どんな状況下でも企業内あるいは企業間の人的交流を絶やさないという意味で、ソーシャルメディアが役に立つことが今回の震災で改めて証明されました。また、グローバル展開を考えた場合でも、それぞれの拠点で知識や情報が蛸壺状態になってしまわないようにするためには、拠点間の社員同士のコミュニケーションやコラボレーションが欠かせないからです。


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ビジネスにおけるソーシャルメディアの可能性

Question

ソーシャルメディアは働き方以外にどんな変化を企業にもたらすのでしょうか?

Answer

野村総合研究所:亀津 敦氏

クラウドベースであるかどうかは別として、ソーシャルメディアが企業に浸透し、ビジネススタイルやビジネスプロセスを変えていくことは間違いないと思っています。

 例えばトヨタ自動車はセールスフォース・ドットコムと共同で自動車向けソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」を構築し、2012年市販予定の電気自動車(EV)及びプラグインハイブリッド自動車(PHV)でサービスを開始すると発表しています。トヨタフレンドは利用者(オーナー/ドライバー)とメーカー、ディーラー、更には自動車に搭載されている各種センサをソーシャルネットワークで結び、新車情報やメンテナンス情報、サービス情報、車載センサから上がってくる自動車情報などを利用者に提供します。もちろん利用者同士でも情報交換できますし、自動車からの情報も、例えば右のフロントタイヤの空気圧が下がっている場合「2km先にガソリンスタンドがあるので空気を入れませんか?」などとツイートの形でクルマがつぶやきかけてきます。

 この例の場合、タイヤの空気圧は車載センサが検知した情報を言葉に置き換えているだけに過ぎませんが、「2km先にガソリンスタンドが〜」という部分は、そのガソリンスタンドチェーンがトヨタフレンドというソーシャルネットワークに入っていることを意味します。逆に言うと、入っていないとビジネスチャンスを逃してしまう可能性があるということです。

 サプライチェーンのリレーションマネジメントにソーシャルネットワークを活用するケースも出てきています。このように考えると、クラウドはシェアードサービスのインフラだから必要というのではなく、攻めのビジネス、攻めのサービスを実現するためにクラウドは必要なのだという視点で活用していけるかどうかが重要になってくると思います。


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情報はビジネスプロセスと連動してこそ価値がある

Question

クラウドのコラボレーション基盤に蓄積される情報はどのようにビジネスで活用されていくのでしょうか?

Answer

野村総合研究所:亀津 敦氏

蓄積された情報に対する検索傾向などから何が重視されているのかを分析したり、人と人との関係性をソーシャルグラフで可視化したりといった活用もあるかと思いますが、その方向性よりもむしろ、ビジネスプロセスと密接に連動したコラボレーションのあり方、ビジネスプロセスを動かしていく情報の活用が求められているのではないかと思っています。

 例えば企業内ブログが流行った頃に、社内ブログに記された内容のテキストマイニングや、コメントやトラックバックを利用した社内ソーシャルグラフの可視化、エンタープライズサーチを用いたKnow-Whoの発見といった知識ベースを活用するソリューションがいろいろと提案されましたが、あまり使われませんでした。「あった方がいい。でもなくても困らない」というものはROIの判定が難しく、なかなか広まらないものです。そういった「あったらいいね」ではなく「ないと本当に困る」というところから広がっていくと思います。

Question

ビジネスプロセスと連動するコラボレーション、ビジネスプロセスを動かしていく情報の活用にはどのようなものがあるのでしょうか?

Answer

まず挙げられるのが営業プロセスとの連動でしょう。例えばアメリカでは、Facebookに登録されたプロフィール情報をAPI経由で抜き出し、企業の顧客データベースと連携させるといった使い方が行われています。そのようにすれば相手のプロフィールを把握した上で営業をかけることができますし、Facebookを通じて相手にコンタクトを取ることも可能です。また、このような方法だと顧客と勝手に連絡を取ったり契約を結んだりといったコンプライアンス上の問題が発生する可能性がありますので、FacebookとCRMとの連携も必要になってきます。

 別の例では、営業担当者がマーケティング部門や開発部門の担当者とソーシャルネットワークを通じて情報やコメントを共有しながらプレゼンテーション資料を短時間で最新版にアップデートしたり、プレゼンテーションした相手から出された宿題を各担当者にフィードバックして対応策を素早く見つけ出したりといった活用方法もあるでしょう。

 おそらく今後、コラボレーションの概念が変容していくのだと思います。昔ながらのグループウェア的な情報共有の発想でとどまっていたのでは、ついていけなくなるのかもしれません(図2)。

図2 ソーシャルメディアを介した消費者−企業−従業員間のコラボレーションへの進化
図2 ソーシャルメディアを介した消費者−企業−従業員間のコラボレーションへの進化
出典:野村総合研究所

ではどうすればいいか。一言で言うと「新しいコラボレーションの仕方をどんどん試してみましょう」ということです。“社内Facebook”を使ったり“社内Twitter”でつぶやいたりすることにどんな意味があるのかなどと言っていないで、特にB to C企業の場合は消費者の方がどんどん先に進んでいるので、「消費者と同じように企業内でもコラボレーションしてみましょう。そうしないとお客様との新しい対話方法やビジネスプロセスの進め方についていけなくなりますよ」ということなのです。企業の意識もそのように変えていくべきだと思います。


●ありがとうございました。


取材協力

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流通や金融など各産業分野の研究、消費者動向調査、未来予測などを行い、その成果を広く社会に発信。予測、分析、政策提言などによって問題発見から解決策を導くまでの「ナビゲーション」と、その解決策を業務改革やシステムの設計、構築、運用によって実現する「ソリューション」を相乗的に機能させることを軸に、「未来創発」に取り組んでいる。


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