23社を比較選定!実例に学ぶIaaSの選び方

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

掲載日 2011/09/27

ザ・キーマンインタビュー 23社のサービスを徹底比較! IaaSベンダを決めた選定ポイントとは?

クラウドサービスが続々登場してきた現在、ユーザ企業はクラウドとは何かの研究段階を終え、実業務にどう活用できるかや、どのようなクラウドサービスを選ぶべきか、サービスを選ぶ決め手は何かという議論を進める段階に入っている。ユーザ企業が試験的に特定業務についてクラウドサービスを利用する例は増えているものの、まだ標準的な導入方法やサービス選定方法は見えてこない。しかし先行する企業では、既に本格的な活用に向けて最適なサービスを選定する方法を組み立て、実際にサービス導入に踏み切っている。リクルートもそうした企業の1つだ。今回は、リクルート全社のIT基盤を担うシステム基盤推進室のキーマン2人に、クラウドサービスの選定法を聞いた。

株式会社 リクルート 企業サイトへ

水野 一郎氏

MIT United システム基盤推進室
インフラソリューショングループ
水野 一郎氏

西 剛男氏

MIT United システム基盤推進室
インフラソリューショングループ
エンジニア 西 剛男氏

クラウドサービスに何を望んだか

Question

まずリクルートのシステム基盤としてなぜクラウドサービスが必要なのかから、お聞かせ下さい。

Answer

株式会社 リクルート:西 剛男氏

【西】私たち「システム基盤推進室」は、リクルート全社のITを担うMIT(Marketing & IT United)部門の中でもネットサービス基盤の構築や運用管理を担当しています。その重要な役割は「低コストで品質の高いインフラサービスを提供すること」です。インフラサービスの提供において、従来からのオンプレミス環境とクラウドサービスとを用途に応じて使い分けることが今後は欠かせないと考えています。
 リクルートでは様々なネットサービスを提供していますが、これまでほとんどのサービスは、オンプレミスで構築した環境で実現してきました。しかし近年になって多くのクラウドサービスが提供されるようになり、局所的に部門がクラウドサービスを利用するケースも増えてきました。利用実感としても、クラウドサービスの内容や機能が最近は格段に充実してきています。

その一方、部門が必要に応じてクラウドを利用していくのには無駄が多いことも明らかになってきました。その無駄は大きく分けて3点です。

1)知見の分散
クラウド利用のノウハウが共有されずに分散してしまうことが無駄です。クラウドサービス導入のたびに新たに勉強しているのでは時間もコストも余計にかかります。各部門が得た知見を集約して、事例やナレッジとして展開していく方策が必要です。

2)個別交渉の非効率
一般的にサービス利用量が大きい場合、契約条件や価格面で交渉を有利に進めることができます。個別の部門がベンダと交渉していては、なかなかそうはいきません。会社全体の利用量をまとめて交渉してこそ、有利な交渉ができます。

3)サポート窓口の分散
部門ごとにベンダサポートの窓口が分散してしまうことで、会社全体の管理業務が増えてしまいます。サポート窓口を共有して、迅速かつ低コストなサポートが実現できなければなりません。


こうした無駄をなくすために、私たちシステム基盤推進室が主管となってクラウドサービスベンダの調査や選定、導入を行う必要があると考えました。

【水野】クラウドサービスに求める要素としてリソース調達のスピードがあります。 システム基盤は、低コストであるとともに、アプリケーション開発部門が必要とするリソースをいかに早く提供できるかが重要なポイントになります。
 オンプレミスで構築した環境は私たちに必要な要件に絞ることで、コスト面、品質面で高いレベルのサービスを提供できると考えています。一方、この2〜3年でクラウドサービスが続々と提供されており、必要な時に必要なだけのリソースを調達できるようになりました。セキュリティ対策、障害時の原因究明などクラウド環境ゆえの課題はあるものの、特定の用途や目的に対しては有効な手段だと考えています。


このページの先頭へ

クラウドサービスの選定ポイント

Question

クラウドサービスを選ぶポイントとして重要視したことは何ですか?

Answer

【西】私たちが求めるクラウドサービスは、IaaSと呼ばれるシステム基盤の部分です。IaaSとは、私たちサービス利用者が直接、クラウドベンダの潤沢なサーバリソースを必要に応じて柔軟に利用することができるサービスのことを指します。
 IaaSのサービスベンダには2つのタイプがあると見ています。1つ目は、基本的なインフラ基盤としてのコストパフォーマンスを追求するタイプ、2つ目はPaaS的な機能で付加価値を高めたタイプです。私たちは前者の「コストパフォーマンス追求」タイプのクラウドサービスを活用したいと考えています。
 またハードウェアのコスト対性能比は年々向上しており、クラウドサービスにおいても後発のベンダほど安くハードウェアを調達できるはずです。クラウドサービスはまだまだ黎明期なので、特定のクラウドベンダにロックインされずに、より安くより良いサービスに切り替えていけることも重要です。私たちは「複数クラウド間のポータビリティを実現する」ことをクラウド活用のテーマの1つに掲げており、容易にクラウド間を移行できるシステム作りに取り組んでいます。

Question

クラウドサービスベンダの選定はどのように行いましたか?

Answer

株式会社 リクルート:水野 一郎氏

【水野】まずは様々な記事や調査資料などからクラウドサービスベンダ23社を抽出しました。基本的なサービス仕様や料金、サポートなどについてはヒアリングシート(RFI)を用いて回答をいただきました。その後、私たちのクラウド活用に対する取組みや実現したいことを説明し、同時に、私たちが作成した提案依頼書(RFP)を提示しました(2011年4月)。
 各社のご提案は5月初めに揃いましたので、その中から数社を候補として絞り込みました。候補のクラウドサービスを構築や運用など役割が異なる社内の担当者が実際に使ってみて、操作性などを利用者の視点で評価しました。それらの評価を経て、6月には最終的に2社のクラウドベンダを選定しました。

【西】サービスベンダの比較検討は、詳しく言えば3段階で行いました。1つ目はRFPに対応する契約上のSLAやオンプレミス環境との連携などの観点です。2つ目は、そのクラウドベンダ自体の企業評価です。そのあとに、操作性や性能・機能の調査検証を行いました(図1)。

図1 比較検討の観点
図1 比較検討の観点

まずサービスそのものの特徴を把握するために、RFPは次のような観点で作成しました。

●クラウドサービスについて
  (1)サービス料金
  (2)サービス稼働率(SLA)
  (3)サービス利用方法
  (4)セルフサービス機能/クラウドAPI
  (5)セキュリティ


●サポート体制/協業体制
  (1)監視・運用体制との連携
  (2)オンプレミス環境との連携(自動化機能)
  (3)オンプレミス環境との連携(環境の整合性)



サービス料金は重要な判断事項ですが、料金体系は各ベンダで大きく異なり、横並びで比較することが難しい状況でした。そこで、「構成-A」と「構成-B」という2つのコスト試算モデルを作成し、それぞれの利用コストを試算してもらうという形をとりました(図2)。

図2 コスト試算モデル
図2 コスト試算モデル

サービス稼働率については99.95%以上のSLAを求めました。またSLAが未達になった場合の対応内容についてもご回答いただきました。
 サービス利用方法は、構成-Bの場合のシステムリソースの利用に際して必要な手続きと利用開始までの必要時間、更に自動拡張/縮退(オートスケール)機能の有無も尋ねました。
 更に、セルフサービス機能(利用者画面)の提供と、クラウド環境の構築と利用に関するクラウドAPIの提供可否とAPI機能の提示をお願いしました。セキュリティ面では、セキュリティ方針や具体的な対策とともに経済産業省の「クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン」への対応についても尋ねました。
 サポート体制/協業体制についてはまず、システム監視/運用に関するサポート体制を尋ねました。これはオンプレミス環境で行っている24時間の監視体制やインフラ運用体制とクラウド環境の監視/運用業務の機能連携や業務連携の可否を検討するためです。
 加えて、オンプレミス環境との連携(自動化機能)としては、当社が計画している「クラウドコントローラ」の開発に協力いただけるかどうかを尋ねました。クラウドコントローラは、クラウド間のポータビリティを確保するために、クラウドベンダが提供するAPIを利用して実現する仕組みです。異なるクラウド環境に同じWebサービスのシステムリソース環境を移行できることを目的にしています。(図3)。

図3 クラウドコントローラのイメージ
図3 クラウドコントローラのイメージ

Question

ひとまず、RFPへの回答が得られた段階での評価をお聞かせ下さい。

Answer

【西】ベンダ各社の戦略によるものかもしれませんが、サービス料金は大きく2つのグループに分かれました。サービス料金体系により構成-Aの試算モデルでは優位なのに構成-Bの場合には不利になるというケースもありました。全体的には、近年サービス提供を始められた後発のベンダからより意欲的なご提案をいただいた印象です。

Question

そうして選んだ数社に向けて、今度は企業評価と、操作性や性能・機能の調査を行ったわけですね。

Answer

【西】はい。企業評価についてはクラウドサービスが安定的に提供されることの担保を得ることが目的です。そのためにIR情報から企業全体の事業内容や業績を確認し、継続的にクラウドサービスを提供し続ける事業構造になっているかを評価しました。
 その結果は企業の特性はあるものの、候補にあがった各社ともに問題はないと判断しました。
 その後、候補ベンダを3社に絞った段階で各社のクラウドサービスを実際に試用させてもらいました。試用の際には、社内で担当業務が異なる3名の部門リーダーに協力を仰ぎました。利用者の観点で操作性と機能性を評価するためです。およそ2週間かけて、アカウントの登録、インスタンスの起ち上げ、それぞれ異なるサービス構成の構築までを実際に行い、評価を点数化しました。
 機能性の調査は、構成-Aでの環境構築、インスタンス生成・ロードバランサ・セキュリティ・スケールアップ・スケールアウト・API・監視・バックアップのチェックを行い、機能の有無と制約、特徴を明確にしました。
 性能の調査は、単体、及び構成全体でベンチマーク試験を行い、性能の問題やボトルネックが存在しないことの確認を行いました。
 更に、サポート品質を確認するために、これらのテストの過程で出てきた疑問についてベンダに質問し、その回答内容、回答までの時間を確認しました。また定型の質問を行って、回答内容や対応スピードを比較項目に加えました。

Question

そうした調査やテストの結果、最終的に選ばれたサービスの決め手は何だったのでしょうか?

Answer

【西】最終的にはGMOクラウド株式会社と株式会社IDCフロンティアの2社をリクルートのIaaSパートナーに選定させていただきました。私たちの要望に関する条件を満たしていただいた上で、コスト面でも納得性の高いご提案をいただけたことが1番の理由です。そのほか、機能面で差が出たのは、オートスケール機能があるかないか、管理画面の分かりやすさ、CPUの性能などです。加えて、SLAとして設定したサービスレベルに達しなかった時の対応にも各ベンダのポリシーの違いがありました。これら、1つひとつの要素を総合的に評価しています。

株式会社 リクルート:水野 一郎氏

【水野】特にマネジメントコンソール(クラウドサービスを利用者が操作するための画面)は、ベンダの特徴がよく表れており、選定時の決め手の1つになりました。実際に現場でクラウドサービスを使う人間が効率的に操作できるものでなければなりません。中には提供リソースの詳細な設定項目を操作できるものもあります。機器内部の仕組みを熟知している担当者には評判がいいのですが、クラウドサービスの利用を広げていくことへの障壁になるとしてほかの担当者には不評でした。
 また、決め手ではありませんが、選定においてはサービス評価をベンダが開示しているスペックだけで行うのは判断を誤る可能性があります。開示されているサービススペックが良くても実際使ってみると通信の状態やマネジメントコンソールの動作が不安定になることも経験しました。新しいサービスなので実際に使ってみて評価することが重要だと考えます。


このページの先頭へ

今後のクラウドサービスの活用

Question

クラウドサービスの今後の活用方針についてお聞かせ下さい。

Answer

【水野】クラウドサービスはこれからどんどん進化していくと考えています。そして、私たちもまだまだクラウドサービスの利活用に関する知見を蓄積していかなければならない状態にあります。
 活用方針については、「どのような用途や目的でクラウドサービスを活用できるのか」「オンプレミスシステムとの使い分けをどうするのか」を明確にしていくことが直面しているテーマです。
 当面はセキュリティ対策と信頼性の確保に関する観点でクラウド活用の知見を広げることを優先的に考えています。クラウドサービス自体の進化と利活用技術をあわせて、使える範囲を広げていきたいと考えています。まずは、静的コンテンツサイトや開発環境、ログデータなどの保管といった、比較的ビジネスリスクの小さい部分からとりかかり、徐々にビジネスのコアな部分に拡張しくことを考えています。
 中期的には活用範囲を広げ、全体トラフィックの3割程度をクラウドサービスによるインフラリソースでまかなうことを目指しています。(図4)。

図4 クラウドサービスの活用方針
図4 クラウドサービスの活用方針
株式会社 リクルート:西 剛男氏

【西】もともとクラウドサービスの活用については、その時々で有利なベンダに切り替えていくことを考えています。今後、定期的にベンダの再評価を行い、必然性があればほかのベンダのサービスに移行することを計画しています。これには、クラウドコントローラが有効に機能すると思います。
 また当社としてのクラウド活用のためのガイドラインを作成しており、これも同時に見直しながら、社内での活用を図っていきたいと思います。

【水野】クラウドサービス活用は、求めるサービスレベルとリソース利用量の2軸の観点が判断基準になると考えています。高いサービスレベルが求められ、定常的リソース利用があるシステムは、現時点ではオンプレミス環境のほうがおそらく有利だと考えます。一方、高いサービスレベルが求められず瞬間的にリソースを大量に使うような場合や、開発時の検証環境のような一時的にリソースを利用するだけの場合なら、クラウドのほうが有利な選択です。
 またサービスレベルを考慮する際には単にベンダが提示しているSLA(サービスの停止時間)だけではなく、システム障害時の対応を担う運用体制への考慮が重要です。例えばデータベース処理に重大な障害が発生した場合には、オンプレミス環境ではデータベースのみならずハードウェア、OS、ネットワークを含めてシステム全体を俯瞰して障害原因を究明していきます。場合によってはハードウェアやネットワーク機器のメーカーも巻き込んだ対応が必要となります。
 クラウドサービスを利用した環境では現実的にオンプレミス環境レベルの対応を行うことは難しいと考えています。このような課題を乗越えていくためにも、クラウドサービス活用の経験と知見を蓄えていく必要があると考えています。これからも、オンプレミスとクラウドサービスの使い分けを見極めながら、上手に活用していきたいと思います。


●ありがとうございました。

このページの先頭へ



◆関連記事を探す

IaaS/23社を比較選定!実例に学ぶIaaSの選び方」関連の情報を、チョイスしてお届けします

※キーマンズネット内の「IaaS」関連情報をランダムに表示しています。

IaaS」関連の製品

Cisco Tetration Analytics 【シスコシステムズ】 実は危険な“塩漬けLinux”サーバの安全を守る実践的アプローチ 【サイオステクノロジー株式会社】 FIT-Cloudサービス 【北電情報システムサービス】
データセンター運用 IaaS/PaaS IaaS/PaaS
運用管理の自動化が進むデータセンターのポリシー検証方法 実は危険な“塩漬けLinux”サーバの安全を守る実践的アプローチ 自然災害の少ない富山県に立地する高信頼のデータセンターを活用したクラウドサービス。仮想化インフラの構築から運用管理までのトータルサービスで、BCP対策を支援。

IaaS」関連の特集


IFRS対応で悩んだらERP導入・リプレースは最重要検討事項! クラウドサービスや短期導入可能な製品…



プライベートクラウドの設計・構築・運用のコツはどこなのか?キリングループのプライベートクラウド構築事…



日本のインターネットビジネスを牽引してきたIIJ代表取締役会長の鈴木幸一氏にワークスタイル変革への取…


IaaS」関連のセミナー

JRCA登録CPD ISO 27017に基づくクラウドセキュリティ解説コース 【BSIグループジャパン】  

開催日 12月13日(火),2月13日(月),4月19日(水)   開催地 東京都   参加費 有料 4万932円(税込)

ISOより2015年新たにクラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドラインISO/IEC 27017が発行されました。ISO/IEC 270…

WebAPIの提供、開発に最適な新たなクラウドサービス 【富士通】  

開催日 2月23日(木)   開催地 東京都   参加費 無料

本セミナーではK5 PaaS「API Management」の実環境を用いて、WebAPI公開に向けた迅速なAPI開発の流れや方法をご説明します。また、APIを…

【無償ハンズオン】クラウド上でのActive Directory構築体験 【富士通】 締切間近 

開催日 11月11日(金),12月9日(金)   開催地 東京都   参加費 無料

ポータル操作で、簡単・スピーディーにシステム構築が可能なマイクロソフト社の最先端クラウド「Microsoft Azure」。富士通ではこの「Microsoft …

「データセンター」関連 製品レポート一覧

このページの先頭へ

Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この記事に掲載している情報は、掲載日時点のものです。変更となる場合がございますのでご了承下さい。


30004338


IT・IT製品TOP > ズームアップIT クラウド > データセンター > IaaS/PaaS > IaaS/PaaSのIT特集 > 特集詳細

このページの先頭へ

キーマンズネットとは

ページトップへ