震度6強…その中でも情報発信が必要なワケ

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掲載日 2011/07/28

アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー 震度6強の激震…その中でも情報発信が必要なワケ

仙台駅からJR仙石線に乗って海の方向に15分ほど行くと福田町駅に着く。東北システムズ・サポートの本社社屋は、そこから歩いて数分の道のりの街中に位置する。3月11日の東北地方太平洋沖地震では、この地を震度6強の揺れが襲った。その後の津波は、同社にあと500mの地点まで迫ったという。この地震は同社オフィス内をめちゃめちゃにした上、社屋のコンクリート壁に亀裂を走らせた。サーバ室では耐震仕様のサーバラックが転倒してしまった。そして、この地震を乗り越えたと思ったのもつかの間、4月7日に最大の余震が再び襲い、宮城野区の震度はまたも震度6強。再起動できたサーバもまた転倒してしまった。この2度にわたる被害を同社はどう乗り切り、事業再開を行ったのかを責任者の方に伺った。

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佐々木 正己氏


ストラテジックビジネス企画推進室 兼 ストラテジックビジネスグループ
部長 佐々木 正己氏

大震災の被害状況

Question

3月11日の大地震とその後の余震の際に、宮城野区でも大きな被害が出たと聞いています。その時の御社の状況はいかがだったでしょうか?

Answer

株式会社 東北システムズ・サポート:佐々木 正己氏

私はその日、東京の国際展示場の催事のために出張していて、地震発生時にも会場に詰めていました。その会場でも床が波打つように大きく揺れたので、最初は「東海地震が来たか」と思いました。携帯電話に着信する緊急地震速報のメールサービスに加入していたのですぐに確認してみると、「宮城県震度7」という文字がありました。私は1978年の宮城県沖地震を中学1年の時に経験していますし、必ずまた大地震が来るという予測についてもよく知っていました。すぐに仙台が危ないとひらめき、会社に連絡しようとしたのですが、携帯電話も固定電話も不通になっていました。

■机は飛び跳ね、サーバラックも倒れた

その時仙台の社屋にいた人に聞くと、フロアが縦横に数分間揺れ続けたそうです。社員は机の下にもぐったものの、机が上下に飛び跳ねるような状態で、机の脚を押さえつけながら倒れかかるオフィス用品などの被害を避けたということでした。プリンタなどは2〜3m飛んで行ったそうです。幸い人的な被害はありませんでしたが、オフィスには物品が散乱し、コンクリート壁の一部にひびが入りました。
 一方、サーバ室では耐震仕様の縦長のサーバラック(サーバ15台ほどを搭載)がUPSやバックアップ用のNASの上に倒れ込んでしまっていました。

■Skypeで安否確認、迂回路線で仙台へ

そんな状況は東京にいる私は知る由もありません。とにかく状況確認と安否確認をしなくてはと焦っていたところ、当社がパートナーとして参加している企業の方がSkype端末を持ち込んでいて、ご厚意で機器を貸してもらうことができました。
 交通機関はほとんど使えなかったので、チームメンバー5人で都内を歩き、その日はホテルに泊まり、ずっとSkypeによる安否確認をしていました。これもつながりにくい上に音質の問題があり、難航しましたが、結局は家族や社員との通話に成功し、ひとまず安心できました。
 次の日は、取引き先の方からお借りした自家用車を使い、群馬、新潟、山形を回って移動し、仙台に着けたのはその翌日の日曜日です。

Question

3月11日の大地震の後にサーバの再起動はどのように行いましたか。また宮城野区では4月7日に同規模の余震が起きています。この時はどのような影響がありましたか?

Answer

株式会社 東北システムズ・サポート:佐々木 正己氏

大地震後の1週間は業務をストップして復旧にあたっていました。ただしIT機器は二の次で、従業員と家族の安否確認やサポートをはじめに行いました。倒れたサーバラックを立て直して、電力が回復してから通電をテストしたのは3月17日のことです。サーバに特に問題はなく、NASも無事でした。UPSは損傷して使えないものもありました。
 サーバ復旧のための応急措置として、サーバ室に大きな机を3台運びこみ、ラック回りのフリースペースを埋めることにしました。余震はずっと続いていたので、ラックの揺れをこれで押さえようとしたのです。
 ところがこれが失敗でした。4月7日の最大余震の時、サーバラックを押さえつけていた机が飛ばされてしまいました。机は部屋の両側の壁を壊して隣の部屋まで突き破るほどの揺れでした。ラックはまたも倒れてしまいました。この時は3日間停電しましたが、ラックを立て直して通電すると、無事に通常運用が可能な状態になりました。


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災害対応の問題点と解決策

Question

今回の災害への対応で問題となったポイントと、その改善策についてお聞かせ下さい。

Answer

痛感したのは、このような非常時にはITシステムの復旧は二の次だということです。家族の安否、同僚や友人の安否などの確認が第一の課題です。私たちはよく「データが命」と言っていますが、本当は「社員こそ命」です。
 早急な営業再開は半ばあきらめていたのですが、社員は震災直後の月曜日から、お客様先に出向き、可能な場合は作業を開始していました。停電していても会議を開くなどして、とにかくお客様の力になろうと力を注いでいました。自宅待機という形になった社員もありましたが、車や自転車、あるいは徒歩で何時間もかけて月曜日から出社してきた社員も少なくありませんでした。

■立ち上がるための安否確認 文字だけではなく、声を聞くことでの安心感

そんな社員を支えたのは、従業員同士や家族との安否確認が早くできたことです。仙台本社及び東京支社で取締役総務部長と支社長が災害対策本部を起ち上げ、そこを中心に情報収集や連絡ができるようにしました。携帯電話用のメールサービスには、大地震が起きた時にメーリングリストのメンバーに情報を一斉送信できるものがあります。会社のメールサーバは停止しているので、このサービスはおおいに役立ちました。
 もっとも、社員全員がメーリングリストに登録されているわけではありません。そのためWeb上に掲示板を作成(無償提供されているサービスを利用)し、プライベートなメールアドレスを書き込むと対策本部に登録されて連絡がとれるという仕組みも用意しました。
 様々な手段を使って社員の安否確認ができたのは、5日後のことです。安否確認の連絡をもらうと「自分を心配してくれる誰かがいる」という温かさを感じます。また情報を送る先があるだけでも「伝えた」ことによる安心感がありました。
 また今回、メールの文字だけでなく、リアルタイムに声を出して話すことが大きな安心につながるということを多くの人が体験しました。Skypeや衛星電話のような通話手段は用意しておくべきだと思いました。

■自社の状況を外部に伝えることの重要性

株式会社 東北システムズ・サポート:佐々木 正己氏

なお、システムが復旧した後、最初に取り組んだのはファイルサーバとメール及びWebサーバの再起動です。Webサイトに当社が営業を開始していることや被害状況などのお知らせを掲載できたのが3月22日です。するとお客様からの大量の激励メールが一斉に届きました。「電話が通じるのは分かっていても、どうも連絡しにくくて…」と教えてくれたお客様もありました。あまりにまわりの被害が大きいと、連絡を遠慮してしまう心理が働くようです。自社の現状を早く、広く伝えることの重要性にも気づきました。

■バックアップデータを遠隔地に保存することの重要性

ITシステムを守る立場で言えば、最も恐かったのはバックアップデータをなくしてしまうことでした。通常はお客様向けに開発したシステムなどを含め、サーバ全体のバックアップを複数台のNAS装置で実施しています。今回は、データに問題は生じませんでしたが、もしもこれを失っていたらどうなったかと胆を冷やしました。
 バックアップは「保険」なのではなく、サーバ同様に守るべき資産であり、現実的な備えとして重要なものです。まずはバックアップをローカルに置かない仕組みを考えなければなりません。当社の場合だと東京本社との間にバックアップ専用の回線を用意してバックアップを東京で行う体制をとるのがよいと考えています。また、テープにバックアップを行い、それを別の地域に移動して保管するという方法も、手間はかかりますが、ルーチンとして確立すれば、結局は安全につながると思います。

■ソフトウェアライセンスを含め社内資産の管理も必要

また、不安を感じたことの1つに、開発作業やオフィスワークで使うソフトウェアライセンス管理の問題があります。大手のソフトウェアメーカーはライセンスを喪失しても申請すれば再発行してくれます。しかし、自社のソフトウェア資産を管理していないと、申請することができなくなります。平常時にライセンスの棚卸しを行い、管理を不断に続けていなければなりません。
 同様に、社内にある数々の物品を日頃から管理しておく必要も感じました。混乱に紛れて重要な書類やメディアなどがなくなってしまうことがあり得ます。当社ではRFIDを使った管理システムなどを扱っていますが、震災後の復旧作業の中で、RFIDを使って棚から持ち出された物品をチェックできる仕組みや、今ある資産を簡単に棚卸しできる仕組みがあるとどれだけよいかと思いました。資産管理のためのRFIDインフラの整備も考えたいところです。

■サーバラックは免震や制震機能だけではダメ

サーバラックの転倒は大きな問題です。ラックの耐震機構だけでは不十分だったということが分かりました。今後は免震機能や制震機能がついているだけでなく、構造として倒れにくいものを採用することになります。低層型のラックへの切り替えも考えています。

■ローカルだけでも使えるITシステムが必要

今回は、ITがどれだけネットワークに依存していたかも考えさせられました。ネットワークがないと現在のITシステムはあまり役に立ちません。自家発電機でPCを動かすことはできますが、メールやWeb閲覧などができず、クラウドサービスを使うこともできません。
 現在様々なクラウドサービスが登場する中で、スタンドアロンのIT機器の機能は軽視される面があります。しかし、私はネットワークインフラや屋外の無線LANアクセスポイントが津波で流されて、ネットワークが一切使えなくなったお客様の例も身近に見てきました。ネットワークとローカルの双方を考えたITシステムが必要だと思います。

■改めて認識したRFIDソリューションの有効性

震災の後しばらく避難所の物資不足が叫ばれていましたが、私が行った避難所では物資がたくさん山積みになっていました。避難所の人全員に配分できる量でなければ配布できないという事情があり、その数のカウントに時間が割かれていました。物資は段ボール箱で届きますが、品名も数字も書かれていないので、中身を出さないと品物も数量も分からない状況でした。また余っている物資をほかに回し、足りない物資をほかから融通してもらう作業が必要なのに、それを行う前提となる数量把握ができておらず、何とも歯がゆい状況でした。

株式会社 東北システムズ・サポート:佐々木 正己氏

ここでも私はRFIDの有効性を痛感しました。物資の1つひとつにRFIDタグが貼られ、ローカル端末で簡単に品名や数量のチェックができたらよいのにと考えました。物品の生産や物流の途中でRFIDタグが貼られ、管理が合理化できれば、その後の移動や保管のプロセスも合理化できます。避難所内のPCにRFIDリーダを接続して箱ごと物資の品名や数量がチェックできれば、ほかの避難所や倉庫との連絡により必要物資の交換などが容易になったはずです。

災害後には、安否確認、資産の保全や管理、復旧に向けた取り組みなど、あらゆることを全部パラレルに進める必要がありました。その中には、平常時に用意しておけばあまり考えなくてもよいことも含まれていたはずです。準備があれば、それだけほかの部分に力を注ぐことができます。会社の責任として何をするべきか、どんな準備ができるかを、よく考えて日頃から実行するべきだと思います。


●ありがとうございました。


取材協力

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1976年(昭和51年)に設立、情報システムのコンサルティングやシステムアプリケーション開発受託、ネットワーク環境構築、パッケージソリューションの提供を中心に事業を展開している。RFIDシステムや資産・物品管理システムなどの自社パッケージや共同開発製品をもち、ハンディターミナルやRFIDリーダなどを利用するモバイルソリューションにも実績が豊富。従業員数170名。事業所は仙台市宮城野区の本社のほかに、東京都大田区に東京支社を設置している。


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