最適な日数は?「在宅勤務」を導入する秘訣

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掲載日 2011/07/21

アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー 「在宅勤務」を上手く導入する秘訣

震災の影響から節電やBCP(事業継続計画)対策に役立つ在宅勤務(以下:テレワーク)への期待が高まっており、多くの企業で検討が進められている。そこで、テレワークを推進している総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報流通高度化推進室 課長補佐 馬宮 和人氏に、総務省の取り組みやテレワークの効果などについてお話を伺った。

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馬宮 和人氏


総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報流通高度化推進室
課長補佐 馬宮 和人氏

テレワーク推進のための取り組みと実証された効果

Question

最初に、現在政府が掲げているテレワークの方針について教えて下さい。

Answer

総務省:馬宮 和人氏

最新の動きとしては、2010年6月22日にIT戦略本部が決定した「新たな情報通信技術戦略・工程表」の中で、2015年までに在宅型テレワーカーを700万人にする(※2009年時点で約327万人)という目標が掲げられました。つまり、およそ5年の間に倍増する計画です。これまで、テレワークと言えば、企業においては育児や介護を実施するものを対象にしたワークライフバランスの実現やコスト削減などの経営効率化が主な目的とされ、自治体においては障害者や高齢者に対する就労機会の創出などを目指していた経緯があります。しかし、本年3月の東日本大震災以降は、BCP対策や節電対策としてテレワークが検討されるケースが急増しているのが実態です。そんな中、2011年5月に行われた電力需給緊急対策本部において、夏期の節電に向けた啓発方針として、テレワークなどを通じて、ライフスタイルの変革等を進めることにより、節電を図ることが明記されました。テレワークによる節電は、これまであまり注目されてこなかった観点ですが、震災以降、新たなメリットとして注目されるようになったと言えます。

Question

総務省主導でテレワークの推進を積極的に行ってこられたと思いますが、これまで具体的にどのようなことに取り組んできましたか?

Answer

総務省:馬宮 和人氏

総務省では、2007年から2010年の4年間、「テレワーク共同利用型システムの実証実験」と称して、様々な活動に取り組んできました。具体的には、テレワークを実際に体験してもらうテレワーク試行・体験プロジェクトや先進的なテレワークシステム実験などです。テレワーク試行・体験プロジェクトでは、USB認証キーをパソコンに接続するだけでシンクライアントシステムとインターネットVPNを実現する環境を提供し、100を超える団体に参加してもらい、テレワークを実施しました。また実証試験では、青森県庁をフィールドにBCPを先取りした業務継続テレワークをはじめ、管理栄養士などが行うメタボ指導をインターネット経由で行う特定保健指導分野テレワーク、更には地域住民がテレワーカーとなり観光案内業務を行う地域観光振興テレワークなどが実施されました。
 ただ、これまでの取り組みは、新しい先進的なICT技術が、どのような働き方を可能とするのか、どのような業務に適用できるのかということが意識されており、具体的な効果測定までは行い切れていなかったのが実態です。しかし今後は、テレワークによる定量的効果の抽出・分析をはじめ、我が国の危機管理・経済活動の継続の観点から、非常災害時におけるBCP対策や節電対策を中心として、テレワーク導入に関するニーズや課題を、幅広い業種・業界から地道に聞き集め、早急に普及拡大のための方策を検討していく必要があると考えています。大震災を契機として、これまでの認識が一変したのです。

Question

これまでの実証試験の中で、節電に関連した効果測定を行った実績はありますか?

Answer

実は、2010年度に行った「次世代のテレワーク環境に関する調査研究」の中で、富山県にある中小企業をフィールドにして実際に検証したものがあります。当初は温室効果ガス、いわゆるCO2排出量削減の観点で実験が行われ、当該企業のオフィスとテレワーカーの自宅の電力消費を、それぞれ実際に計測等して、テレワーク実施前後でのCO2排出量のトータルでの削減効果を算出しました。この算出結果、測定データを基にして、テレワーク実施前後で、消費電力がどの程度削減できるのかを試算することになったのです。
 結果としては、テレワークを実施することにより、1人当たり3.8kwh/日から3.27kwh/日へ、約14%の電力消費量の削減が見込まれることが分かりました。ただし、この試算は、様々な前提条件をベースにしており、例えば、オフィススペースの工夫により照明を1/2消灯したり、勤務時間の削減でICT機器及び空調の使用期間を13時間から8時間に短縮したりすることなどです。重要なポイントは、テレワークは、1人だけでなく、課全体やフロア単位、ビル単位で行わないと十分な節電効果は見込めないということです。実数字を交えて試算したのは今回が初めてですが、今後は更にブラッシュアップしていく予定です。

図1 テレワーク導入による電力消費量の削減効果
図1 テレワーク導入による電力消費量の削減効果 資料提供:総務省
資料提供:総務省

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2015年テレワーカー700万人実現への取り組み

Question

では、総務省としてはテレワークのプロジェクトを今後どのように進めていく計画でしょうか?

Answer

2015年までに在宅型テレワーカーを700万人へと増やすために、目標実現に向けた「テレワーク普及推進プロジェクト」を2011年度に実施する予定です。具体的には、実際のテレワーク導入企業や自治体をはじめ、未導入企業・自治体、テレワークシステム提供企業などを調査対象として、詳しくヒアリングを行っていきます。例えば、テレワークを導入している企業や自治体には、BCPの活用状況や実際に得られた効果データ、導入にあたっての成功の秘訣、技術面や制度面の課題などをヒアリングする予定です。予算的には7500万円で、全体で200事例ぐらいを抽出して情報収集・分析することを考えています。特に、これまではテレワークの効果について踏み込んでいなかった部分もありましたが、2011年度はヒアリングを地道かつ積極的に行うことで効果を実際に把握していく予定です。BCPに対する効果はもちろん、オフィススペースの削減効果や離職率の低下など、実際の効果を可能な限り世の中に還元していきたいと考えています。

Question

2006年から中央省庁では初めてテレワークに取り組んでいる総務省ですが、実際はどんな方をターゲットに、どんな仕組みでテレワークを行っているのでしょうか?

Answer

2006年の開始当初は、ワークライフバランスの観点から育児・介護に携わる職員が対象でしたが、2007年度からはこの限定を外して、総務省の職員およそ2000名全員に対象として拡大しました。2010年12月の登録者数は約50名程度となっております。
 総務省でのテレワークは希望性となっており、勤務時間は通常規定されている勤務時間と同様、給与や休暇、評価制度などは特にテレワーカー向けに変更したことはありません。勤務開始時や休憩前後、勤務終了時に上司へ電話またはメールにて連絡を行うことで、勤務時間を管理することになります。なお、テレワーク自体は週1日〜数日の部分実施となっていますが、業務としては、資料等の作成、メールでの照会業務の対応などが多いです。一方で、国会等の関係で、急な問い合わせを受けたり突然呼ばれたりするなど、突発的な対応も多いため、なかなか長期間在宅勤務を行うのが難しいという面もあります。

Question

では、総務省におけるテレワークシステムの環境はどんな状況でしょうか?

Answer

総務省:馬宮 和人氏

以前から出張者のために、外部出張先から省内LAN(文書管理フォルダ等)にリモートアクセスする環境があったのですが、この環境を職員の在宅勤務用にも門戸を広げた形です。
 また、総務省のテレワークは、これまで専用のシンクライアント端末を利用していましたが、利用者の向上を図ることから、出張者が外部から省内LANにリモートアクセスするための 環境を、職員の在宅勤務用にも利用できるように整備したことで、2011年4月から職場のPCを持ち帰って作業できるようになりました。
 この環境では、省内LAN接続時のアカウントと外部からのリモートアクセス用のアカウントを分けることで、セキュリティは万全の状態を保っています。


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テレワーク導入における注意点

Question

これまでの調査や実際にテレワークを実施しているご経験から、テレワーク導入に向けて注意するポイントなどについて教えて下さい。

Answer

以前から総務省で調査しているテレワーク導入の目的を見ると、「勤務者の移動時間の短縮」「定型的業務の効率性(生産性)の向上」「非常時の事業継続に備えて」などが上位に挙げられていますが、この中で注目したいのが生産性の向上です。実際にテレワークを行った企業では生産性の向上を指摘する声が非常に多く、その理由を尋ねたところ、仕事のスケジューリングが効率よく行えるようになったことが挙げられます。これは、テレワークを行っているのは週1〜2回程度で、企画書作り、議事録の作成やデータ入力作業など、1人で集中して行いたい業務をテレワーク用の仕事として貯めておくようになり、そうすることで仕事のメリハリがつくようになるということのようです。また、テレワークを行う場合は、上司にその日の業務内容、提出するアウトプットを事前に申請するケースが一般的で、成果物を申請することで短期的な目標がはっきりし、テレワーク実施日には、必ず業務を遂行するようになるといいます。普段は漫然と仕事に臨んでしまうことも少なくないかもしれませんが、テレワークに向けて仕事の段取りをつけることで、生産性向上に寄与しているという声が多く寄せられました。

図2 企業のテレワーク導入目的
図2 企業のテレワーク導入目的 資料提供:総務省
資料提供:総務省

Question

テレワークを導入しない、できない企業に対する総務省としての取り組みはいかがでしょうか?

Answer

これもこれまで調査をしてきましたが、例えば「テレワークに適した仕事がない」という声が多く寄せられています。もちろん、週5日テレワークを行うのは非常に大変かもしれませんが、前述した通り週1日程度であれば何らかの適した業務が必ずあると考えています。これは、テレワークに適した業務の例示をはじめ、週1日のテレワークと考えた時の効果的な業務スケジュール案などを提示していく必要があると考えています。
 また、「情報漏洩が心配」という声には、テレワーク導入企業において、実際に、インシデントがあったか、なかったか等の情報を明らかにしていくことや、機密情報に対するアクセス制限などの具体的な運用方法、仕組みを紹介していくことで、情報漏洩に対する不安を払しょくしていければと思います。「導入メリットが分からない」といった声には、まさに2011年度に行うヒアリング調査の中で、テレワークを実施することで回避できた経済的ロス、BCPの効果や節電におけるメリットなどをしっかりと明らかにしていくつもりです。

図3 企業のテレワーク導入課題
図3 企業のテレワーク導入課題 資料提供:総務省
資料提供:総務省

Question

特にテレワークの場合、勤務評価などの面でつまずく企業も多いと思われますが、いかがでしょうか?

Answer

総務省:馬宮 和人氏

確かに、テレワーカーの勤務評価が難しいという声もあります。しかし、これまでヒアリングした企業では、週1〜2日のテレワークが一般的であり、人事評価も勤務規定も一切変更しておりません。処遇も通常の社員と同じ形で行っています。
 労災の話も結構話題になることが多いのですが、これらの企業では、何かあった時には個別に労働基準監督署で判断を仰ぐこととして運用しているのが通例です。なお、ほとんどのテレワーク実施企業では、在宅勤務のための実施要領を作成していて、例えば「自宅には執務スペースを設ける」「自分の所在をはっきり記録する」など、注意事項や留意点をマニュアル化しており、こうしたテレワークの運用に係るひな形は、総務省として示していく予定です。


●ありがとうございました。

取材協力

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