IFRS対応は不可避?中堅・中小企業向けERP

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IFRS対応は不可避?中堅・中小企業向けERP

2010/11/29


 大企業で普及が進んだERP(Enterprise Resource Planning:統合業務パッケージソフトウェア)だが、現在では中堅・中小企業向けの製品やソリューションが続々と投入され、様々な規模の企業で十分に納得できるコスト効果が見込めるようになってきた。しかもクラウドによるサービスも選択肢に入るようになり、パッケージ導入からシステム構築までのコスト面及び期間が導入障壁となっていた企業でも、ERP導入の敷居は格段に下がってきた。また、上場企業のみならずグループ企業各社もIFRS(International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)対応を早急に図るべき時機にさしかかっており、ERP再検討の好機が来ている。今回は、クラウドによるサービスを含め、主に中堅・中小企業向けERPを改めて「解体」し、最新の製品動向を紹介していく。導入にあたっての製品選択のポイントについては「IT製品選び方ガイド」に紹介しているので、あわせてお読みいただきたい。

ERP

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ERPを解体しよう!

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ERPとは

■ERPの歴史

 ERPは日本語では「統合業務パッケージ」と称されることがほとんどだが、元々は「企業資源計画」を意味し、企業経営資源の統合的な管理を行う経営概念を指していた。歴史を辿れば米国の、1960年代の製造業での部品表と総所要量計算を行うシステムにまで遡ることができる。やがてそれは生産計画や在庫情報管理まで含めた生産管理システム(MRP)に発展、その後、人員配置や給与、販売、物流、調達、財務会計などにまで範囲を広げて統合管理可能なシステムが出来上がっていった。統合管理の対象が広がるにつれ、それは「人、モノ、金、情報」という経営資源を最適に配置する力を身に付けていった。 
 その後、こうしたシステムはERPと呼ばれるようになった。同時にERPの概念は製造業のためだけのものではなくなり、他の様々な業種に適用されるようになった。1980年代には汎用機上に構築されていたが、90年代にはオープンシステムで稼働するクライアントサーバ方式のパッケージへと移行し、これが現在のERPパッケージへとつながっている。
 それからおよそ20年を経た現在、日本ではむしろ会計を中心にしたERPパッケージが浸透し、Webシステムを利用するパッケージや、クラウドを利用したサービスも加わった。一部の企業ではメインフレームやオフコンなどのレガシーシステムによる独自のERPシステムが稼働している一方、この10年ほどの間にパッケージの普及が進み、売上高1000億円以上の企業では7割に近い数の企業が既にERPを採用している。中堅・中小規模での導入率はおよそ4割程度と見ていいようだ。

■ERPの構成と役割

 ERPが対象にする業務はパッケージやサービスによって異なるが、業務の結果のすべては会計に反映されることから、会計機能を中心に据え、その他の業務機能を連携させる形の製品/サービスが多い。一例として図1にパッケージの機能構成イメージを示す。

図1 ERPパッケージの機能構成イメージ
図1 ERPパッケージの機能構成イメージ
資料提供:オービック

 例えば販売情報システムの売上・売掛管理情報や仕入・買掛管理情報は会計情報システムに連携し、会計情報システム内の手形管理や債務支払管理、債権回収管理機能などと連動して基幹会計情報システムに即座に反映される。ERPパッケージが持つ統合データベースはリアルタイムに、または適切なタイミングで追加・更新される。最新の状態の経営情報が統合データベース上に常にあるため、連携するどの業務システムでも矛盾なく最新の情報を利用することができる。

 続いて、ERPによるメリットを見ていこう。大きく分けると、以下の3つになる。

●業務効率の向上、BPRの実現

大きなメリットとして、業務プロセスを整理して業務プロセスそのものを改善することと、業務と業務の間で生じがちな重複した情報登録といった無駄を省き、最も効率的な業務フローを再定義することが可能になることが挙げられる。ERPパッケージやサービスの業務システムには、多くの企業での運用経験をベースにした業務ノウハウやプロセス、フローが元々備わっている。それらは製品やサービスのコア部分に埋め込まれていることもあれば、「テンプレート」「アドオン」などの形で業種や業態に特化したオプション機能によって実現できるようになっていることもある。そうした機能はいわばベストプラクティスであり、それに沿ってシステム構築を行うことでBPR(Business Process Reengineering:業務改革)が行えて、業務効率を大きく改善できる。
なお、すべての業務がERPでカバーできるとはかぎらない。一部の業務は従来どおりのシステムで遂行しながら、そのデータをERPに連携させて統合するのが一般的だ。このための情報連携の仕組みもERPパッケージやサービスには備わっている。リアルタイム連携やバッチ連携などの方法がとれる。製品によってはESBを備えてSOAインフラ上で各種システムを連携可能にしているものもある。

●経営の「見える化」の実現

また、統合データベース上に常に新鮮な経営情報が存在することにより、そこからいつでも最新の経営情報が簡単に取り出せることも注目すべきメリットだ。これには製品やサービスのBI機能が利用できる場合もあれば、他のBIツールや表計算ツールを連携させる場合もある。
業務を横断して様々な経営指標や関連する情報を簡単に得ることは「見える化」と呼ばれ、経営の意思決定の迅速化を図るためには欠かせない。そのため製品やサービスには経営の現状を如実に表す各種の帳票、レポートが用意されている。また画面にリアルタイムにダッシュボードを表示するなど、BI機能をセールスポイントにする製品やサービスも多い。下記図2はSaaSで提供されるERPのダッシュボード画面の例だ。

●間違いのない財務諸表の適時の作成やガバナンス強化

更に財務報告基準に正しく準拠した財務諸表を迅速に作成できることや、内部統制に関連するコンプライアンスが、必ずしも専門家の介在なしに実現できる点もメリットとして挙げられる。詳しくは後述するが、今後は日本でも会計基準がIFRSにシフトしていく。これに対応するためにもERPパッケージやサービスの導入は有用だ。またコンプライアンスに関連する情報開示を正確に適時に行うための情報管理も徹底できる。
これから株式上場を目指す企業においては、特に危機管理や事業継続、内部統制の強化、情報公開などについての課題を抱える場合が多いと思われる。そのような企業においてERPはコーポレートガバナンスを効かせるために活用できる。 
なお、企業規模を問わずビジネスはグローバル化しており、グループ企業が各国に散在するケースは多い。その場合のグループガバナンスを図るためにも、ERPによる情報連携は役に立つ。既にERPを導入している企業グループの場合では各国で異なるERPを採用している場合が少なくない。グループ経営の更なる効率化を図るにはグループ内で統一した会計基準に則った処理が不可欠だ。そのためには各社のERPの見直しが必要になるだろう。IFRSへの対応はそのためのよい機会かもしれない。

 こうしたメリットがもたらすものは端的に言えば、売上と利益、そしてキャッシュフローの向上だ。経営資源を有効活用して業務効率を上げていくことにより、在庫の削減や間接コストの削減を行って財務体質を改善することもできる。更に一元化されたリアルタイムな情報活用により、経営のスピード化も実現可能だ。もちろんそれは競争力を強化し、顧客の満足度向上にも寄与する。
 またIT部門にとっては、既存の複雑化した業務システムをシンプルにして、運用管理コストと負荷を軽減できるところも大きな注目ポイントだ。様々な業務システムを必要に応じて連携させてきた企業では、システム全体がスパゲティ状態になりがちだ。更にグループ企業や各地の拠点のシステムも複雑化している場合、その統合は容易でない。ERP製品やサービス導入ですべて解決とはいかないだろうが、簡素化への一歩が踏み出せることは間違いない。
 もちろん導入にあたってはデメリットも考えなければならない。ERPパッケージやサービスの課題に関しては「IT製品選び方ガイド」で紹介しているので、是非ご参照いただきたい。

図2 リアルタイムダッシュボード画面例
図2 リアルタイムダッシュボード画面例
資料提供:ネットスイート

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