MA4テクノロジ賞「Newsgraphy」レポート!

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ニュースの注目度を2次元地図で表現!マッシュアップで可能になった新しい情報ビジュアライゼーション
優秀賞(テクノロジ賞)に選ばれた「Newsgraphy」とは
話題のニュースが一目で分かるマッシュアップサービス

 画面に表示されるのは色分けされたニュースの地図。少し“いびつな楕円形”をしたのが言わば「ニュースの国」の領土の全体だ。その領土の中は「国内」や「スポーツ」、「エンターテイメント」などの分野に区分けされ、拡大していくと「国内」の中に「麻生太郎内閣」、「次期衆院議員選挙」などの区域が現れる。さらに拡大すれば「首相、秋葉原でサブカル絶賛」、「はしご酒も目立つ麻生首相」などのニュース見出しが見えてくる。
 それぞれの分類ごとの「領地」の大きさは、ヤフーが提供するニュース情報サービスのページビューの多寡によって決められる。それを分野ごとに連続して隣り合う形に整えて表示するのがこのサービスの中核だ。ニュースの国の群雄割拠の状態とその勢力が、日付ごとに示されるアニメーション機能では、日付の文字をマウスオーバするごとにニュースの「領地」が再編成され、ニュースへの関心度の変化が如実に見て取れる。技術力の凄さがすぐに実感できる秀作だ。

サービスの紹介図
浜本階生氏インタビュー
新聞記事のグラフがヒントになり、「ボロノイ図」をニュースに応用
浜本階生氏  情報を可視化する手法がこの作品の中核になっているのは一目でおわかりのことでしょう。地図のような表現で情報を見せるやり方のヒントは、今年5月、Webで見つけたニューヨーク・タイムズの紙面から得たものです。それは米国人の支出内訳のグラフでした。そのグラフでは支出の大きさを分類ごとに面積で表し、例えば米国人は家賃に一番お金を使っていることがわかったり、食費の内訳の中ではファーストフードの比率が高いなどということがわかったりします。その面白さと先進的な見せ方に感銘を受け、これを応用したいと思いました。
 そのグラフは「ボロノイ図」と呼ばれるもので、たくさんの情報を、その内容がどれだけ近いかによって平面上に配置し、分割していくものです。マーケティング分野では商圏分析などに使われているようですね。
 幾何学的な計算処理が必要になりますが、それを実行するためにボロノイ図に関する論文を読みました(Voronoi Treemaps, Michael Balzer, Oliver Deussen 2005)。Newsgraphyは、その論文の内容を参考にして実装したものです。
 ボロノイ図を描くのがNewsgraphyのエンジン部分になりますが、これはつまり2次元幾何問題を解く仕組みになります。Javaにはデフォルトの平面幾何ライブラリが用意されていますが、汎用性が高い分だけ処理が遅いきらいがありました。そこでボロノイ図の計算に最適化したライブラリをゼロからスクラッチで作りました。これにはトータルで20時間ほどかかりましたね。
ヤフーのニューストピックスとページビューが地図のモト
 もとになる情報は、ヤフーのニューストピックスAPIから取得するニュースの見出しとページビュー数です。またヤフーの形態素解析APIでは、人名、地名、組織の名詞を抜き出し、属性をつけてくれますから、それに基づいてニュースを色分けしたり、ボロノイ図描画に利用したりしています。ボロノイ図の計算には1回5分くらいかかるので、アクセスの都度描画するのではなく、1日1回程度計算し、更新したものを提供しています。
 だいたい1日に見出しは100個程度取得できるので、9月にスタートしてからこれまでに6000個弱のニュース見出しが蓄積されています。この程度なら問題はないのですが、いずれ蓄積データが大きくなっていきますから、例えば現在を基準にして3ヵ月前までなら見られる、というようなイメージで続けたいと思っています。
 また、ニュースのボロノイ図は日付ごとに見ることができますが、最後に追加したアニメーション機能では、日付ごとに地図内容がくるくると変わる仕組みを実装しています。これを利用すると、ニュースとそれに対する関心度がどのように変わってきたかが、楽しく理解できます。
 また、マッシュアップ・サービスとしてもう1つ利用しているのがGoogle Maps APIです。実は先方のコンテンツを利用するのではなく、画面のコントロールの部分だけを利用させてもらっています。地図上に出てくる拡大・縮小や移動のコントロールのところにそれを使いました。Google Mapのコアである地図を利用せずに仕組みの一部を拝借した形なので、特殊なマッシュアップの方法になるのかもしれません。以前、私が作ったマッシュアップ・サービスでもGoogle Maps APIを利用していたため、画像のオーバーレイの仕方などはわかっていました。ウラ技的なAPIの使い方ではありますが、省労力でよいサービスを構築できるところがマッシュアップの良さです。ちなみに、以前の作品では「いかに少ないコーディングでインパクトのあるサービスを作るか」をテーマに開発しました。これはマッシュアップ・サービスの開発に共通するテーマかもしれません。
Webの可能性の大きさに惹かれ、個人的にマッシュアップ・サービスを開発
価格.com WEBサービスコンテスト最優秀賞受賞サービス:EatSpot  もともと私がプログラムに興味を持ち始めたのは中学時代のことです。高校生の頃はシェアウェアを作って配布していました。しかし現在ではシェアウェアは完全に下火になってきていますね。私自身も高校卒業の頃には、むしろWebの可能性の大きさに惹かれ、そちらに関心が移行していました。以前はC言語やDelphiを使ったツールを開発していましたが、それからはJavaを使い始めました。
 大学生時代もソフトウェア開発ができる会社でアルバイトをし、現在はその会社に勤めてWeb系のシステム開発を仕事にしています。とはいえ、個人の興味で行っている開発は、会社での仕事とリンクしているわけではありません。仕事のかたわら、個人的にオープンソースのコミュニティにコミットしている一方、様々な開発コンテストに応募しています。過去のMashup Awardsにも参加しましたし、他のWeb APIを使った開発コンテストにも参加しています。初めて作ったマッシュアップ・サービスは、カカクコムのコンテストに応募したEatSpot(レストラン検索)です。これは最優秀賞を受賞しました。また株式会社はてなの「はてなダイアリー」のユーザランキングを表示するサービス(TopHatenar)なども提供中ですし、他にもいくつかのサービス開発でコンテスト受賞経験があります。以前に開発した、はてなのサービスを利用する「はてなダイアリー地図」(HatenarMaps)は、今回のNewsgraphyに技術的に直結しています。
表現手段によって、同じ素材でももっと楽しくできるはず
 個人的な興味で開発をしているといっても、Webでのサービスは自分のために作るものではありません。サービスの役割は、人とのつながりを簡単にすることにあると思っています。私は自分が作るサービスの見せ方そのものに楽しさを感じて欲しいと思っています。
 Newsgraphyにおいても、もちろんボロノイ図そのものの楽しさは感じてもらえると思いますが、実際には面積などの計算処理で描画したそのままではあまりわかりやすくはなりません。技術的な洗練と見た目のカッコよさとは別物です。見た目の調整には苦労しました。例えば、線の太さで領域の境界がわかるようにしましたが、太い線、細い線を単純に使い分けただけでは領域の大きさとのバランスで綺麗には見えなくなったり、わかりにくくなったりします。ちょうどバランスのよい太さを設定するのに苦心しました。また色合いも重要です。あまり原色を使わないようにし、彩度を抑えた渋めの色ばかりを使うようにしましたが、これも大変だったところです。
 そうした工夫により高評価が得られたと思います。今後はアニメーション機能を充実させて、ますます楽しく見せられるようにしたいですね。また、現在はアニメーション機能の画面から領域をブレークダウンしていくことができないのですが、ゆくゆくはできるようにしたいと思っています。なお、いくら領域を拡大しても、ニュースの場合は見出しまでの参照に留まります。本当はニュース記事本文まで盛り込みたいのですが、著作権などの関連で難しいでしょうね。
 ボロノイ図を描くという機能は、別にニュースだからできたわけではありません。様々なデータを適用して描画してみたいですね。またNewsgraphyの仕組みだけを利用して、ユーザが自分の手持ちデータを自由に適用してボロノイ図化するサービスにする方向もありますね。それをユーザグループ間で共有したり、一般に公開したりするといった機能もつければ面白いかもしれません。
デスクトップアプリケーションなどに比べ、Webの世界は非常にオープンです。Web上のリソースを自由に取得して加工できるマッシュアップのムーブメントは、人とのつながりを拡大するものだと思います。Newsgraphyの「領地」が多くの人のページビューで決まるように、人が介在するデータが豊富に手に入るところに面白さの根源があります。今後もその面白さを追求していきたいと思います。
Newsgraphy
API提供企業を直撃!
実はヤフー賞候補だったNewsgraphy
左からヤフー株式会社の
竹内淑子氏、今野博晴氏、鎌田篤慎氏 「実はNewsgraphyもMA4のヤフー賞候補でした」と語るのはヤフー株式会社サービス統括部製品企画Yahoo!デベロッパネットワーク・鎌田篤慎氏。しかし同賞を受賞したのは「Cycle-Ring:みんなで作る自転車記録」(matoyan氏作)だ。評価の分かれ目は「リテラシーに関わりなく誰でも使えるかどうか」。「Cycle-Ringは標高情報を組み合わせるなど当社の地図APIを上手に利用していた上に、誰でも使える高機能なSNSサイト。Newsgraphyは当社APIを高度に利用されており捨てがたかったものの、日頃使える人は比較的少ないのではないかという判断をしました」。技術力の高さが一見してわかるNewsgraphyは、良くも悪くも“玄人”好みのサービスなのだ。
マッシュアップサービスの背後で働くテキスト解析API
 Newsgraphyのニュースコンテンツと地図領域のサイズはヤフーのニューストピックAPIからのもの。加えて背後で日本語形態素解析APIが利用されている。形態素解析とは、文章を品詞に切り分けて分析を行う高度なテキスト処理のことだ。Newsgraphyでは名詞の抽出に利用されている。ヤフーの検索技術の一部として重要な形態素解析機能を無償で提供しているのには、「日本語処理に強い当社の強みを一般に浸透させたい」(サービス統括部企画2部技術企画・竹内淑子氏)というブランディング戦略がある。
「テキスト解析APIはマッシュアップサイトでよく利用していただいています」と竹内氏。形態素同士の関連や表記の「ゆらぎ」など、取り扱いが難しい領域の処理は公開対象外・1日に5万件まで・最大サイズ100KBというリクエスト制限もあるが、文章の要約サービスや言葉遊びのサービスなど多くのマッシュアップサイトが同APIを利用している。コンテンツの提供だけでなくサービス構築の基礎的技術が提供される例は少なく、形態素解析APIを含む同社のテキスト解析APIは特異かつ利用価値の高いものとしてデベロッパに好評のようだ。
API公開はビジネスモデルの明確化が肝心
Newsgraphy  同社の提供APIは12種ほどある。ちなみに利用率は、地図、オークション、検索のAPIがベスト3。少し差が開いて次にニューストピック、テキスト解析APIが続く。現在利用率が伸びているのがショッピングAPIだ。アフィリエイトとのセットで利用でき、また他の同社APIがREST形式でのリクエストだけに対応しているのに対し、PHPserializeとJSONPにも対応して使いやすくなっているところが人気の理由だ。
 こうしたWeb API公開は同社のビジネスにどのように役だっているのだろうか。
「APIそれぞれにビジネスモデルがあります」と鎌田氏。
オークションやショッピング系のAPIは、当然売上に直結するメリットがある。検索APIやテキスト解析などは技術力の高さを示してブランディングを強化するのが目的だ。ニュースなどのトピックス系APIは同社サイトへのアクセスアップにつながる。
 しかし鎌田氏は「APIを何でも公開すればよいというものではありません」という。「公開して何が生まれるのかを見極めることが大事です」(鎌田氏)。API公開にはリスクもともなう。個人情報漏洩防止対策やセキュリティ対策をとる必要があり、不適切なサイトでの利用を制限するためにはネットの監視も必要だ。企業ブランドへのネガティブな影響が万が一にも生じない対策がいる。そうしたリスクやコストに見合うだけの効果が得られるかどうかの検討が、API公開の前提になる。なにしろ一度公開したAPIを運用停止してしまうと、エンドユーザやAPI利用デベロッパに大きな影響を与えてしまう。それはひいては企業ブランドに悪影響を生じかねない。API公開を検討している企業は、まずビジネスモデルをよく考えるべきだろう。
 
社会の「エコシステム」としてのマッシュアップ効果

 自社のサービスに外部のAPIを利用することと自社のサービスやコンテンツのAPIを公開することの両方に大きなメリットがあることは確実だ。APIを利用する開発者は自分の市場価値を上げることに結びつくし、場合によっては有償サービスを提供して収益を上げることもできるだろう。API利用が無償のものは営利目的での利用が制限されている場合が多いが、実際の企業利用では有償で営利的なAPI利用も可能なケースがあるからだ。またAPI提供側では、自社サービスの価値向上と、ビジネス利益の向上といった効果が見込めよう。
   マッシュアップの社会的意義について鎌田氏は、「言わばデベロッパと企業とが共生し、ともに発展していけるのがマッシュアップです。それは“エコシステム”になりうると思っています」という。みんなが協調して社会や業界を維持・発展させる仕組みがエコシステム。ヤフーの公開APIは生態系的な関係性を少なくとも一部では既に築き上げている。「当社は企業戦略の1つにオープン化を掲げています。今後も社内技術を広く使ってもらえるような取り組みをしていきます。お客様の声も直に聞いて、今後のサービスに生かしていきたいと思っています」(鎌田氏)。マッシュアップを土壌にしたエコシステムがさらに拡大していくことを期待したい。

Newsgraphy(ニュースグラフィ) 作品レポート
サービス名 Newsgraphy(ニュースグラフィ)
エントリー名 浜本階生
URL http://newsgraphy.com/
サービスの概要 ニュースへの関心度を可視化するボロノイ図を提供。Web APIのニューストピックスサービスから見出しとページビュー数を取得、ページビューが多い記事には大きな面積を、少ないものには小さな面積を与えて、関連ごとに並べ替えることで全体の中でのそれぞれの分類の勢力図が描かれる。また拡大すれば個々のニュース記事への関心度もわかり、日付ごとに関心の変遷を確認することも可能。アニメーションによる連続表示も面白い。
使用API Google Maps API (グーグル)
Yahoo!ニューストピックスAPI(ヤフー)
Yahoo!日本語形態素解析API(ヤフー)
他の受賞作品
vol.1 最優秀賞受賞 Kentaro作 「ChaMap(チャマップ)」
Mashupアワードで見事に最優秀賞を受賞したワンクリック目から楽しいMashupサービスをレポートしています
vol.2 優秀賞(ビジネス賞) 太田憲治作 「モバロケ」
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