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 運用コストを減らすワザ50(応用) 掲載日:2004/11/19
 IT投資マネジメント

 戦略的なIT投資案件は、ほぼすべてがビジネスプロセスの変更や新設を折り込んで考えなければならない。ここではビジネスプロセスに変革を加えるための、ビジネス上の「チェンジマネジメント」までを含めて新システム導入を行い早期に投資効果を目に見える形にした、全日本空輸(全日空。以下ANAと呼ぶ)の新需要予測システムの事例を紹介する。 IT投資マネジメントイメージ


荒牧秀知氏  全日本空輸株式会社
 営業推進本部営業システム部主席部員 荒牧秀知氏
企業概要:日本を代表する航空会社の1つ。従業員数1万2155名、資本金約916億円、売上高約5627億円(2004年9月30日現在)。国内に支店や事業所を15箇所、海外事業所を22都市にもつ。


IT投資マネジメントを導入した経緯

収入の最大化は座席を最大限市場に開放すること
 「生産効率に硬直性のあるこの業界で、最大の収益をどうやってあげるかが問題でした」と荒牧氏は語る。もともと航空業界は「在庫」ができず、「増産」が容易でないところに特徴がある。空港の発着枠などさまざまな条件で縛られる航空業界では、予備の航空機がたとえあったとしても需要に合わせて増発や欠航を自由に行なうわけにはいかず、むろん1機100億円以上もする航空機を簡単に追加することもできない。しかも折り返し運航を行なう都合からスケジュールは堅持する必要がある。
 「硬直性」といわれるのはこのことで、生産調整や在庫調整でやりくりがある程度できる小売や製造業界との決定的な違いがある。似た特性をもつ業界にはホテルやレンタカー、パイプラインの太さで効率が決まるエネルギー産業などがあろう。

割引チケットだけでは収益が伸びない
 「在庫」のきかない航空座席は、可能な限りコンスタントに全座席を売りつくすのが理想だが、といってディスカウントチケットの多売によって普通運賃を支払うお客さまがそれによって排除されてしまっては収益が上がらないばかりか、お客さまの多様なニーズに応えることができず、次の利用が見合わされることにもつながる。
 「座席を最大限市場に開放することを通して収入の最大化を図る」ことがこの問題の解決と見なされ、対策として「早割」や「ビジネスクラス割引」、期間限定のバーゲン型運賃などに代表されるさまざまな割引チケットが生まれてきた。しかし、こうした割引チケットをいつ、どのように座席に配分するのかは従来「経験と勘と度胸」によって決められており、必ずしも所要の収益をもたらしてこなかった。

国際線事業の収益向上をめざし「再生プロジェクト」が発進
 2000年、同社は国際線事業スタートから15年の節目を迎えたが、その時点で収支均衡には至っていなかった。そこで同年4月、同社では「国際線事業再生プロジェクト」をスタートさせ、収益の改善を目指した取り組みが全社的な規模で始まることになった。
 同プロジェクトの中核となったのが「レベニューマネジメントの強化」である。レベニューマネジメントとは、どの時間帯にどの航空機をどういう頻度で運航するかという航空業界用語でいう「ネットワーク戦略」を前提として、それによって決まるキャパシティの中でどのような価格(プライシング)のチケットをどう座席配分するか(イールドマネジメント)の最適な組合せを見い出し、現場のセールス活動につなげていくことである。
 これによって収入の最大化をめざすわけだが、需要は固定的ではあり得ない。極端な例をあげればSARSやテロ事件などにより昨日まではまったく予想できなかった理由で需要が激減することもあり、また他社の動向によっても日々さまざまな需要変動が起こるのが航空業界だ。そのためには常に最新の情報を入手し、レベニューマネジメントに反映させる仕組みがなければならない。
 このように困難な要素の多い需要予測のために導入に踏み切ったのがレベニューマネジメントシステムである。

レベニューマネジメントシステムPROSを導入決定
 新システムにはアメリカのPROS社の製品であるPROS(Passenger Revenue Optimization System)が利用された。これはどの日にどれくらい搭乗があったのか、座席が埋まったか、という過去の情報をもとに今後の需要を予測することを可能にする、国際的にはおよそ6割のシェアをもつという航空座席需要予測システムである。ANAが検討した製品はこればかりではなく、他に5社の同種製品が検討対象に上げられたが、PROSが優れていたのはその実績(ユーザー数)による信頼感と完成度、さらに操作性であった。しかし何よりPROS社のコンサルが、売らんかなの姿勢ではなくビジネスプロセスの変革ポイントを指摘した上での効果予測を示してくれたことが決め手になった。PROS社はこのシステムによる増収見込みを数字で上げていた。システム投資とともに、ビジネスプロセスを見直すことで見込める増収効果は3〜8%とされた。国際便事業で約2000億円の収入がある同社では、仮に3%としても年間約60億円のプラスになるというわけだ。システムの導入にはおよそ13億円の投資が必要だが、このとおりなら十分な効果が出るはずだ。

 むろん、この数字をANAがそのまま鵜呑みにしたわけではない。さまざまな検討要素を折り込んで製品の評価を行なった同社は、PROS社見積もりの3%の半分以下、およそ1%の増収(=約20億円)が初年度で実現すればよしとして、社内の合意をとりつけることになった

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